市場原理と自己責任原則の下に競争を促進するためには、参入について、これまでの需給調整規制を前提とした免許制を改め、一定の資格要件を満たせば参入が認められる許可制とすることが適当である。
この場合、事業者の資格要件は、安全確保を図る上での船舶その他の輸送施設に関するもの、安全確保のための事業者の事業遂行能力に関するものなど最小限に限定することが適当である。
また、市場原理を適正に機能させるためには、原則として退出も自由とすることが適当であり、届出制へと変更することが適当である。
事業者の創意工夫が活かされ、また、事業者間の競争が促進されるためには、事業者による自主的かつ弾力的な運賃設定が可能となる制度とすることが必要である。このような観点からは、運賃制度についてはできるかぎり行政の関与をなくし、自由なものとすることが適当である。しかしながら、運賃制度を全く自由とした場合には、特定の旅客に対して不当に差別的な運賃が設定されたり、独占的な航路において運賃が著しく高騰する可能性があるとともに、一方では他の事業者を排除するための市場収奪的な運賃設定が行われ、結果として利用者が不利益を被る可能性も懸念される。
このため、需給調整規制廃止後の運賃制度については、事業者が運賃の適用にあたって事前に届出を行い、届け出た運賃について利用者の利益が著しく阻害されると認められる場合に限って、行政が是正のために必要な指示ができることとすることが適当である。
運輸分野においては安全の確保が最も重要な課題であり、現在、事業運営について課されている以下の海上運送法に基づく安全確保のための方策については、基本的に需給調整規制を廃止した後も講じていくことが適当である。
[安全規制等の具体的内容]
・ | 輸送施設の安全性や船舶交通上の安全性等の審査 | ||
・ | 運航管理規程の策定・届出義務や運航管理者の選任義務 | ||
・ | 安全確保命令、保険契約締結命令 | ||
・ | 安全の確保上必要な場合の立ち入り検査等 |
市場原理の下で利用者が自己責任に基づく自由な選択を行うことを可能とするためには、運賃や運航スケジュール等のサービス内容や安全性等に関する情報が、比較可能でわかりやすい形で、利用者にあまねく提供されることが必要であり、国内旅客船事業者は、このような情報を利用者に対して積極的に提供するよう努めるべきである。また、行政は、事業者による正確・公正な情報の提供を促すとともに、安全に関する情報等専門的知識が必要とされる情報や事業者が自ら積極的に提供することを期待し難い自己に不利な情報等については、客観的立場から、利用者にわかりやすく提供することが適当である。
また、情報の提供にあたっては、利用者からの情報へのアクセスが容易となるよう配慮すべきである。
なお、情報の提供にあわせて、利用者の意見・苦情等が事業者にフィードバックされ、事業の改善等に反映される仕組みを検討することが重要である。