III 鉄道整備の円滑化に向けて III 鉄道整備の円滑化に向けて
1 鉄道整備をめぐる状況

 鉄道は、定時運行、大量高速輸送等の面で、他の陸上輸送サービスよりも基本的に優れ、エネルギー効率、環境負荷等の面においてもその優位性を発揮することが多い。また、通勤・通学等の日常生活のために広く利用され、さらに、地域の発展といった外部経済効果も大きい等の特性を持つ輸送機関であり、我が国の経済社会、国民生活の基盤として重要な役割を果たしている社会資本である。
 このような特性を有する鉄道は、近年における高齢化社会の到来や環境問題に対する国民意識の高まり等の社会変化の中において、公共交通の柱としてより大きな期待を集めている。
 しかしながら、近年の旅客鉄道事業を取り巻く環境をみると、需要等の大幅な伸びは期待できず、また、鉄道建設費の高騰、用地取得の困難性、建設期間の長期化等が顕在化しており、鉄道事業者の鉄道整備に対する投資のインセンティブは低くなってきている。
 さらに、旅客鉄道事業は元来、地域独占性が強く、競争原理が働きにくい特性を有している地域・分野もあり、市場原理に基づく利便性の向上等の事業の活性化を確保し難い面もある。

2 鉄道整備の円滑化方策の検討の必要性

 このような鉄道事業の特性や取り巻く環境をみてみると、今回の規制緩和方策に期待されている旅客鉄道事業の活性化等による利用者利便の向上等の効果が、必ずしも十分に発揮されにくい状況にある。
 このため、旅客鉄道事業に関しては、このような事情にも十分配慮し、事業制度の見直しによる鉄道事業の活性化に続く課題として、新たな社会ニーズに対応しつつ社会的に必要とされる適切な鉄道整備のあり方及びその方策を抜本的に検討することが重要と考える。
 したがって、この検討に当たっては、鉄道事業者や行政の情報公開の促進や利用者の声の適切な把握により、新たな社会ニーズに対応できるように中長期的視点に立ち、既存の制度にとらわれず、幅広い視点から、鉄道整備の円滑化方策を検討する必要がある。そのためには、今後審議会の場等において引き続き議論を進め、そこでの意見を踏まえた上で、その具体化を図っていく必要がある。
 本審議会においても、鉄道整備の円滑化方策についての論点を整理し、別添のとおりとりまとめた。これが、さらに議論の深度化を図る上での基盤とされることを期待する。


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