「社会実験手法の積極的な活用」の事例

事例3:市民主体の交通計画づくり、社会実験の実施(神奈川県鎌倉市)

 市民、商業者、行政等からなる鎌倉地域交通計画研究会を発足し、地区交通計画の提言をまとめるとともに、パーク&ライド、公共交通乗り継ぎシステムといった社会実験を実施している。

1. 取組みの概要
(1)鎌倉地域交通計画研究会の発足
  • 市民、商業者、事業者、警察、道路管理者、学識経験者等からなる「鎌倉地域交通計画研究会」を発足。(平成7年7月)
  • 約10ヶ月、延べ16回に及ぶ討議を経て、自動車交通の抑制と徒歩と公共交通の活用を基調とした「鎌倉地域の地区交通計画に関する提言」がまとめられた。(平成8年5月)
  • 今後の取り組みについては、提言の考え方に沿って、市民と行政のパートナーシップにより、社会実験を重ね、施策の効果や課題を確認しながら進めていくこととされた。
(2)社会実験の実施
  • 提言にある「地域の交通環境を改善するための20の施策」の具体化に向け、研究会と鎌倉市が社会実験を行った。
    <七里ガ浜パーク&レールライド>
  • 観光客が地域の外縁部で車から公共交通に転換する可能性の検証・基礎データの収集、鎌倉の取り組みを多くの人に伝えるとともに、社会的機運を高めるきっかけとすることを目的として実験を行った。(平成8年11月)
  • 休日に慢性的な渋滞を起こしている国道134号沿いの駐車場に車を止め、近接駅から江ノ島電鉄に乗り換えてもらう形で実施。実験には、延べ160人の市民ボランティアが協力。
  • 2日間で737台、1811人の利用があり、利用者へのアンケートにより、本格的実施に向けた貴重なデータが得られるとともに、テレビ等で取り上げられたことから、取り組みが広く認識されることとなった。

    <公共交通乗り継ぎシステム>
  • 「出発地からの公共交通への手段転換の可能性を探ること」を目的として、観光客を対象に、地域内の鉄道とバスが自由に利用できる乗り継ぎきっぷ(環境手形)の実験を行った。(平成10年5〜6月)
  • 16日間で3795人の利用者があり、アンケート結果から、来訪者が環境手形の実現へ期待を持っていることが確認された。


2. コミュニケーション型行政の観点からの良い点
  • 新たな施策の導入に向けて、市民と行政が協力して社会実験を実施している。
  • 現地で施策を実施することにより、実際の体験に基づいて、施策の修正等の意見を集めることができる。
  • 社会実験の実施により、関係者の意識の向上と幅広い層の合意形成が図ることができる。


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