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平成16年度は、当課の研究課題のうち、平成17年度に予算要求を予定している2課題についての事前評価を実施した。
【平成17年度実施予定課題(事前評価)】
●交通機関におけるテロ対策強化のための次世代検査技術の研究開発
- 概要
近年、世界各地でテロが発生しており、我が国を標的としたテロ発生の危険性が一層高まっている。交通機関のテロ対策としては、特に旅客や旅客を装った者による危険物の持ち込み防止が重要であるが、現在用いられているX線検査装置や金属探知機では、誤報率の高さや爆発物、セラミックナイフ等の危険物を特定できないという問題がある。
今後も想定される交通機関を標的としたテロ行為を未然に防ぐためにも、危険物の持ち込みを防止する検査技術の研究開発を行う。
- 研究期間(予定)
平成17年度〜19年度(3ヶ年)
- 実施体制(予定)
(総括責任課)
国土交通省総合政策局技術安全課
(研究実施機関)
独立行政法人 海上技術安全研究所
(産学官の連携)
民間企業
(その他の協力体制)
海事科学や放射線工学の専門家以外に、交通セキュリティー及び検査の専門家にも参画を得て強力に推進する予定
- 研究目標
- ラジオ波の導入による手荷物検査技術の開発及びミリ波の導入による旅客検査技術の開発
- 開発した検査技術の実用化に向けた提言
- 研究計画
- 手荷物検査機器及び旅客検査機器の性能比較 (平成17年度)
手荷物検査機器及び旅客検査機器の検知項目、処理能力、検査誤報率、製品化・開発状況、人体や環境に及ぼす影響等を勘案し、次世代検査機器の製造に向けて、各電磁波の特性を検討し、機器の概念設計/基本設計を行い、実用可能性を検討する。
- 手荷物検査機器及び旅客検査機器の開発 (平成18年度)
基本設計に基づき詳細設計を実施し、試作機を製作し、基本的な機能試験を行い処理能力や検査誤報率等の基本性能を確認する。
- 手荷物検査機器及び旅客検査機器の実証実験 (平成19年度)
手荷物検査機器については、実環境に近い条件の質量と寸法を有する多くの手荷物のうち幾つかに故意に爆発物等を隠匿し、処理能力や検査誤報率を検証し、実運用に際してのコンベア速度・タグ管理等のインライン化の方法、保守の方法等の提言をまとめる。
旅客検査機器については、各種の厚さや素材からなる被服と金属やセラミック製危険物の組合せ試験を行い、探知可能寸法、形状を明確化し、被服下の隠匿物探知に実運用上効果的な探知機器の配置を評価し、処理能力の高い配置等を提言する。
- 技術研究開発における課題
- ラジオ波による手荷物検査技術の開発
- 最適なラジオ波の解明
- 周辺の電波ノイズの干渉等について検討
- 加温効果等検知対象物への影響
- ミリ波による旅客検査技術の開発
- 太陽光、照明等のノイズによる解析度低下の改善
- イメージング技術の開発
- 人体への影響
- プライバシーの問題
- 評価結果
「本研究で技術開発を行う検査手法については、原理検証よりも機器の小型化・軽量化および実装技術の面での独創性や革新性が問われることになる。実現すれば、安全面や国益上の意義は非常に高く、テロへの恐怖や空港での長時間検査の両面から社会的なニーズも高い。現在の社会情勢を鑑みると至急取り組むべき重要な研究開発課題であるが、予算に対して内容が多岐に亘るため、検査技術の使用方法を限定した上で、基礎データの収集等に重点をおいて進めるべきである。
これまで国内ではあまり取り組まれていない分野であるため、新しい技術者の育成と実装技術を中心とした新しい知見の創出への貢献が期待できる。完成すれば大きなインパクトがあり、困難では有るが期待している。最終的には技術の標準化を進めて欲しい。」
という結論に達し、本研究開発を実施することは妥当であると認められた。
<平成16年8月3日、平成16年度研究開発課題評価「交通機関におけるテロ対策強化のための次世代検査技術の研究開発」事前評価委員会>
【平成17年度実施予定課題(事前評価)】
●ナノテクノロジーを活用した運輸分野における環境負荷低減に関する研究
- 概要
地球温暖化、大気汚染、廃棄物の増加など環境問題は依然として深刻である。例えば、地球温暖化に関しては、運輸分野からの二酸化炭素排出量は依然として増加傾向にあり、また、船、鉄道の廃材処理に関しても、特にFRP船について、適正な廃船処理がなされず不法投棄されている等といった問題が顕在化している。
これらの課題を解決すべく、@船、鉄道からの二酸化炭素、窒素化合物排出量を削減するため、船体、車両の軽量化を推進する。また、A船、鉄道の廃材処理問題に対応するため、自然分解性を有する新たな船体、車両の開発を行う。
- 研究期間
平成17年度〜20年度(4ヵ年)
- 実施体制
(総括責任課)
国土交通省総合政策局技術安全課
(研究実施機関)
独立行政法人 海上技術安全研究所
独立行政法人 交通安全環境研究所
(産学官の連携)
大学
- 研究目標
- アルミニウム合金の高耐食粒界形成方法の開発
粒界構造と耐食性との関係を調査するとともに、高耐食性を実現する粒界を形成させる手法を開発する。
- 耐食性を高めるナノ加工技術の研究開発
上記で開発した手法を加工技術にブレークダウンし、実用に近い寸法・形状の形材を作製する。
- 新たな船体・車両構造の技術基準上の評価
開発したアルミニウム合金が技術基準を満たすかどうか評価を行う。
- 天然ナノ繊維粒子及びプラスチックの研究開発
樹脂への分散性を高めたナノ繊維粒子を調製するとともにナノフィラーとの親和性の良い樹脂を生分解性の原料より合成する。
- ナノ複合化技術の研究開発
天然ナノ繊維粒子を環境調和型樹脂に超微細分散したナノ複合化材料を合成する。
- 新たな船体・車両構造の技術基準上の評価
開発したナノ複合材料が技術基準を満たすかどうか評価を行う。
- 技術研究開発における課題
- アルミニウム合金の開発
- 高耐食性粒界形成方法の研究開発
- 結晶方位と粒界構造の分析技術の開発
- 粒界の結晶方位差と腐食の関係の解明
- ナノ加工技術の開発
- 塑性加工(押出加工)条件と組織の関係の解明
- ナノ粒界構造の制御方法の開発
- 耐食性に優れた粒界構造を有する材料の作製(押出)
- 新たな船体・車両構造の軽量化の評価
- プラスチックの開発
- 天然ナノ繊維粒子の研究開発
- ナノフィラーの精製
- ナノフィラーの表面修飾法の開発
- 環境調和型プラスチックの研究開発
- ナノ複合化技術の開発
- ナノフィラーの分散技術
- 界面状態の評価と複合構造の構築
- 新たな船体・車両構造の適性評価
- 評価結果
本研究は、交通機関における環境負荷低減、安全性の向上等といった明確な用途が想定されており、社会的・経済的意義は高い。また、現在世界中で研究開発が進められているナノテクノロジー分野にも大きく寄与することから本研究は、科学技術立国を目指すわが国にとって大きな意義を持つ。さらに、結晶粒界を原子レベルで制御する手法、天然由来ナノフィラーと生分解性高分子の組み合わせに着目した点が独創的である。
研究計画等については、短期間での実用化を目指した材料開発には、多くの課題の克服が必要であると思われるが、予備的な実績が得られている部分も少なからずあり、目的達成も可能であると考えられる。また、産学官の有機的な連携、基礎から応用までの一貫した体制が取られていることから、効率的な研究推進が期待できる。
交通機関の軽量化による省エネルギー化、材料の再利用や最終廃棄に要するコストを安全に削減することを可能とすることから、地球環境保全に大いに貢献するものと考えられる。
<平成16年8月3日:平成16年度研究開発課題評価「ナノテクノロジーを活用した運輸分野における環境負荷低減に関する研究」事前評価委員会>
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