
国土交通白書 2024
第1節 地球温暖化対策の推進
(1)海洋再生可能エネルギー利用の推進
洋上風力発電の導入に関し、港湾区域内において港湾管理者が事業者を選定済みの全国6港のうち、石狩湾新港内において、令和6年1月に、我が国2か所目となる大型商用洋上風力発電の運転が開始された。また、一般海域においても、「海洋再生可能エネルギー発電設備の整備に係る海域の利用の促進に関する法律」に基づく公募により、経済産業省及び国土交通省が5年12月及び6年3月に新たに計4区域において事業者を選定し、事業者選定済みの海域は計9区域となった。6年3月には「青森県沖日本海(南側)」、「山形県遊佐町沖」の計2区域において事業者公募を開始するなど、洋上風力発電の導入が加速化している。
さらに洋上風力発電設備の設置及び維持管理に利用される港湾(基地港湾)について、これまで国土交通大臣が5港を指定し、必要な整備を実施している。このうち、秋田港では整備が完了し、令和3年4月に港湾法に基づく発電事業者への埠頭の長期貸付けを開始した。
また、今後普及拡大が期待される浮体式洋上風力発電について、令和5年5月には発電設備の建設に対応した施設の規模等の検討を目的とした「洋上風力発電の導入に向けた港湾のあり方に関する検討会」、同年6月にはサプライチェーンの構築といった産業のあり方等の検討を目的とした「浮体式産業戦略検討会」を設置し、検討を進めている。さらに、浮体式洋上風力発電施設の安全性と経済合理性を両立させるべく、その構造や設備の要件を定めた技術基準等の見直しや拡充を図るための検討を行っている。6年3月には排他的経済水域への拡大のための制度的措置として「海洋再生可能エネルギー発電設備の整備に係る海域の利用の促進に関する法律の一部を改正する法律案」を閣議決定し、第213回国会に提出した。
(2)未利用水力エネルギーの活用
気候変動への適応・カーボンニュートラルへの対応のため、ダムによる治水機能の強化と水力発電の促進を両立する「ハイブリッドダム」の取組みを推進している。この取組みの一環として、国が管理する治水等多目的ダム等において最新の気象予測技術を活用した洪水後期放流の活用、非出水期水位の弾力的運用等のダム運用の高度化を72ダムで試行的に行うとともにダム管理用水力発電設備の積極的な導入等による未利用エネルギーの徹底的な活用を図ることとしている。
また、河川等における取組みとして、登録制による従属発電の導入、現場窓口によるプロジェクト形成支援、砂防堰堤における小水力発電の導入事例の共有、技術的支援及び発電設備の導入支援等を実施し、小水力発電の導入促進を図っている。
(3)下水道バイオマス等の利用の推進
国土交通省では、下水汚泥のエネルギー利用、下水熱の利用等を推進している。平成27年5月には、「下水道法」が改正され、民間事業者による下水道暗渠への熱交換器設置が可能になったほか、下水道管理者が下水汚泥をエネルギー又は肥料として再生利用することが努力義務化された。バイオガス利用等による下水汚泥のエネルギー利用、再生可能エネルギー熱である下水熱の利用について、PPP/PFI等により推進している。
(4)太陽光発電等の導入推進
公的賃貸住宅、官庁施設や、道路、空港、港湾、鉄道・軌道施設、公園、ダム、下水道等のインフラ空間等を活用した太陽光発電等について、施設等の本来の機能を損なわないよう、また、周辺環境への負荷軽減にも配慮しつつ、可能な限りの導入拡大を推進している。
(5) 水素社会実現に向けた国土交通省における水素政策
①燃料電池自動車の普及促進
燃料電池自動車の世界最速普及を達成すべく、また、比較的安定した水素需要が見込まれる燃料電池バスやトラック等を普及させることが水素供給インフラの整備においても特に重要であるとの認識の下、民間事業者等による燃料電池自動車の導入事業について支援している。
②水素燃料電池船の実用化に向けた取組み
「水素燃料電池船の安全ガイドライン」について、最新の知見や動向を踏まえて、水素燃料電池船の安全性を確保しつつ、開発・実用化をより推進する観点から令和3年8月に改訂版を公表した。
③水素燃料船の開発
令和3年より、グリーンイノベーション基金を活用した「次世代船舶の開発」プロジェクトにおいて、水素燃料エンジン、燃料タンク・燃料供給システムの開発を支援しており、9年までの実証運航開始を目指している。このような船舶のゼロエミッション化に向けた取組みを通して、我が国の海事産業の競争力を高めていく。
④液化水素の海上輸送システムの確立
液化水素運搬船の大型化等に向け、令和5年6月に日豪海事当局間で協議を行い、新たな貨物タンク断熱システムを含む液化水素の運送要件について合意した。
さらに、合意した運送要件を国際基準に反映するようIMOにおいて我が国主導で基準の策定作業を進めている。
⑤水素燃料電池鉄道車両の開発
水素燃料電池鉄道車両等の水素を活用した鉄道車両の実用化に当たっては、技術課題の解決及び社会実装に向けた量産化・コスト低減が必要不可欠であり、今後の水素の供給量や更なる技術開発の動向、水素供給拠点等のインフラの整備状況を見極めつつ、制度面での措置を含めた官民一体の取組みを進めることが重要である。
このため、国と鉄道事業者等から構成される「水素燃料電池鉄道車両等の導入・普及に関する連絡会」を設置し、水素の利活用に関する検討状況等を共有するなど、必要な情報を収集・整理し、我が国の鉄道における水素燃料電池鉄道車両等の導入・普及の推進を図った。