
国土交通白書 2024
第1節 インフラシステム海外展開の促進
国土交通省は、具体的には以下の(1)~(4)を利用して、企業が海外インフラ展開に参入しやすい環境を形成するために、様々な形で支援を行っている。
(1) トップセールスによる案件形成への働きかけ
政務レベルによるトップセールスは、インフラ案件獲得等に重要な役割を有しており、コロナ禍においてはオンライン会議等による相手国への働きかけを実施してきた。
一方で、対面での取組みによって我が国の「質の高いインフラシステム」に対する理解を醸成する重要性も再認識された。往来を再開する動きが本格化していることを踏まえ、国土交通省として政務レベルのトップセールス等による政府間対話を復活させ、我が国企業の参入・受注に向けた活動を支援している。
(2)官民ファンドによる事業支援
海外における交通・都市開発分野の事業は、初期投資が大きく資金回収までに長い期間を要することに加えて、政治リスク、需要リスク等の様々なリスクが存在するため、民間だけでは参入が困難なケースもみられる。
(株)海外交通・都市開発事業支援機構(JOIN)は、このようなリスクを分担し、出資や人材派遣等を通じて事業参画を行う、ハンズオン機能を有する官民ファンドとして平成26年に設立され、これまでに44事業への支援決定を行っている(令和6年3月末時点)。
令和5年度においては、デジタルや脱炭素等のポストコロナの投資ニーズを踏まえつつ、リベリアにおける大型コンテナ船保有用船事業やアラブ首長国連邦における廃棄物処理施設を通じた都市機能増進事業等の支援・認可を行った。
(3) 官民合同の協議会等による情報提供やビジネスマッチングの機会提供
我が国のスタートアップ企業、地方・中小企業が高い技術力やノウハウを有していながら、海外進出を具体化するに及んでいないケースも考えられることから、インフラシステム海外展開の担い手の裾野を広げることを目指し、支援を進めてきた。
中堅・中小建設企業を対象とした海外展開に係る情報提供や技術PR等のプロモーション、ビジネスマッチング等の機会提供といった取組みを推進していく。具体的には、JOINがスタートアップ企業、中堅・中小企業や地方企業からの相談を受ける窓口を設置するとともに、JOINの支援施策を知る機会が限られる地方企業を対象とした説明会を各地方ブロックごとに開催している。
(4)国際標準化の推進と戦略的活用
海外展開を有利に進める上で、我が国の技術・ノウハウの国際標準化は極めて重要であり、国際機関で決定される国際基準を戦略的に活用し、我が国企業が受注しやすい環境を整備する必要がある。それぞれの分野の実情を踏まえて戦略的な取組みを行う必要があるため、①国際標準化機関(ISO、IEC等)における国際標準の獲得、国連機関等での基準化、②国際標準となった後、相手国での採用を働きかけ他国との差別化を確保、③国際標準未取得の場合、日本規格のデファクトスタンダード化、を柱に取組みを進めている。