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国土交通白書 2024

第1節 インフラシステム海外展開の促進

■4 各国・地域における取組み

①東アジア・大洋州

 中国については、令和5年7月に斉藤国土交通大臣が呉江浩駐日中国大使の着任に伴う表敬訪問を受け、日中両国における観光交流の促進等について意見交換を行った。

 韓国については、令和5年4月に斉藤国土交通大臣が訪日した朴普均文化体育観光部長官と日韓観光交流の促進について意見交換を行った。

 大洋州については、令和5年10月に斉藤国土交通大臣が訪日したパラオ共和国人的資源・文化・観光・開発省のメトゥール大臣と会談し、パラオ共和国における公共交通の導入に向けた取組みや観光の振興についての意見交換を行い、両国間の協力を更に深めていくことを確認した。

②ASEAN地域

(ア)インドネシア

 令和5年7月、ジャカルタ下水道整備事業(第1区)における管渠を整備するパッケージ2及びパッケージ3に関し、本邦企業がインドネシア政府と契約を締結し、工事を受注した。令和5年11月、斉藤国土交通大臣は訪日したバスキ公共事業・国民住宅大臣と会談を行い、二国間で連携している水資源・水防災等について意見交換を行った。また、会談に合わせ2013年に公共事業・国民住宅省と締結した社会資本整備に関する協力覚書を更新した。同月、國場国土交通副大臣は、英国・ロンドンで開催された国際海事機関(IMO)総会に際し、ブディ運輸大臣と会談を行い、二国間で進めている交通分野の協力案件について意見交換を行った。

 令和6年1月、インドネシア・バンドンにおいて「第11回日インドネシア交通次官級会合」を開催し、交通分野の協力インフラ案件について、課題に対する解決策や今後の協力の方向性等の意見交換を行い、今後も各分野において両国間で緊密な協力・連携を図っていくことを確認した。また、同会合において、2010年にインドネシア運輸省との間で締結した交通分野における協力覚書を更新した。

 令和6年3月、東京において「第10回日インドネシア建設次官級会合」を開催し、両国における「質の高いインフラ投資」、「水資源、水災害管理および気候変動対策」、「地域道路政策と地域道路管理」について、両国の取組みの現状、課題及び今後の計画等について意見交換を行った。また、個別ワーキングを合わせて開催し、両国間の緊密な協力・連携を図っていくことを確認した。

(イ)カンボジア

 令和4年11月の日・カンボジア首脳会談において合意された通り、5年に両国関係は包括的戦略的パートナーシップに格上げされた。こうした中、5年12月、石橋国土交通大臣政務官が訪柬し、官民双方の連携により、都市開発・不動産開発分野における協力の推進を目的とする「日カンボジア都市開発・不動産開発プラットフォーム」の第4回会合を開催した。その際、サイ・サムオル副首相兼国土整備・都市計画・建設大臣と会談し、土地管理や住宅・建築分野の協力について意見交換を行うとともに、1990年代後半より我が国政府が継続的に開発を支援しているシハヌークビル港の新ターミナルの起工式に出席し、ペン・ポーニア公共事業・運輸大臣と会談し、シハヌークビル港の整備・運営をはじめとしたカンボジアにおける今後の社会インフラ等に関する協力について意見交換を行った。また、6年2月には斉藤国土交通大臣が、訪日したサイ・サムオル副首相兼国土整備・都市計画・建設大臣と会談を行い、国土地理空間情報の整備や住宅政策等に関する連携について意見交換を実施するとともに、住宅・都市計画・測量等の分野を協力範囲とする両省間の協力覚書の更新を行った。

(ウ)シンガポール

 令和5年8月、斉藤国土交通大臣は、訪日したフー持続可能性・環境大臣と、気候変動の影響によって頻発する水災害への対応等について会談し、「気候科学・気候適応に関する協力覚書」を締結した。また、同年12月には、シンガポール運輸省との間で「グリーン・デジタル海運回廊に関する協力覚書」を締結した。

(エ)タイ

 令和5年6月に、バンコク都市鉄道レッドラインの整備での両国の協力を記念して、タイ国鉄から斉藤国土交通大臣に車両模型が贈られた。また、12月には、斉藤国土交通大臣は訪日したタイ王国スリヤ運輸大臣と会談し、鉄道、都市、航空、道路、港湾といった分野での協力について意見交換を行い、両国間の協力を更に深めていくことを確認した。

(オ)フィリピン

 令和5 年11月、「道路トンネルの建設・O&Mに関するビジネスワークショップ」を開催し道路トンネル技術を共有するとともに、高速道路会社を含む両国民間企業のビジネスマッチングの促進を図った。同月、フィリピン観光省との間で「観光分野における協力覚書」を締結した。また、12月には、日ASEAN友好協力50周年特別首脳会議の機会を捉え、2017年に署名した「海上保安庁とフィリピン沿岸警備隊との間の協力覚書」について、多国間合同訓練の実施や海洋状況把握に関しての情報交換に関する内容を盛り込んだ新覚書の交換を行った。

 令和6年3月、「インフラメンテナンス国民会議 海外市場展開フォーラム」の活動の一環として、インフラメンテナンスの海外市場展開セミナーをフィリピン国政府、民間企業と対面及びオンライン併用のハイブリッド形式で開催し、フィリピン国政府のニーズに合わせた日本企業保有技術の提案や同年1月に開催した日本及びフィリピン民間企業間のビジネスマッチング結果等を紹介し、日本企業のフィリピンにおけるインフラメンテナンス事業への参画・協同に向けたネットワーク構築を支援した。

(カ)ベトナム

 令和5年4月にラム公安大臣による豊田国土交通副大臣表敬、8月にチャウ・ホーチミン市人民副委員長による古川国土交通大臣政務官表敬が実施された。10月には、国土交通省とベトナム農業農村開発省間の水防災等の協力覚書に基づく防災協働対話を官民協働で開催し、同分野における二国間関係を強化した。11月にトゥオン国家主席が訪日して日越首脳会談が行われ、包括的戦略的パートナーシップへの格上げに関する共同声明が発出され、日本のODAの再活性化と日本のODA事業の実施に際しての課題解決を加速すること、またインフラ分野での協力を強化することを確認した。12月のチン首相との首脳会談では、両国の協力を進めていくべき主要な経済プロジェクトをまとめたファクトシートが発表された。合わせて訪日したタン交通運輸大臣と斉藤国土交通大臣は会談し、鉄道や道路を中心とした交通インフラ分野の協力案件に関し、両国の取組みや課題について意見交換を行った。さらに、同月に、ベトナム・ハノイにおいて第6回日ベトナム交通次官級会合を開催し、交通分野の両国の協力案件における現在の状況・課題・今後の方向性について認識を共有した。また、上原国土交通審議官は、クォン・ホーチミン市人民副委員長を表敬し、主にホーチミンにおけるインフラ事業の現在の状況・課題について意見交換を行った。6年3月に国土交通省とベトナム交通運輸省との間で「道路分野に関する協力覚書」を締結し、協力関係をより一層強化していくことを確認した。

(キ)マレーシア

 令和4年10月から5年3月までの間、マレーシアにおける3L水位計の展開を図ることを期待し、日本企業の参画の下、3L水位計の導入に向けた観測性能・維持管理性能等の検証を行う試験観測を現地にて実施した。

(ク)ミャンマー

 ミャンマー国内で日本企業により実施されていた建設等のプロジェクトについて、現下の情勢を踏まえ、引き続き今後の事態の推移を注視し対応を検討していく。

③南アジア

(ア)インド

 令和5年9月にG20ニューデリー・サミットに付随して行われた日印首脳会談において、両首脳は、日印の旗艦プロジェクトであるムンバイ・アーメダバード間高速鉄道事業の4,000億円の第5期円借款の供与が進められていることを歓迎した。

 同年12月に「第14回都市開発に関する日印交流会議」を開催し、下水道、スマートシティ、アフォーダブル住宅、公共交通指向型開発(TOD)分野について、意見交換を行うとともに、日本企業が各社の技術をアピールした。令和6年1月に「第9回日印道路交流会議」を開催し、高規格道路の維持管理、鋼橋の建設、カーボンニュートラル推進施策等について意見交換を実施した。

 また、令和5年12月に国土交通省水管理・国土保全局とインド水活力省水資源・河川開発・ガンガー再生局との水資源分野における協力に関する覚書に基づき、地下水管理等について意見交換を実施した。ほか、COP28でインドが提唱した「国際河川都市連合」への協力を表明した。

(イ)バングラデシュ

 PPP庁との覚書に基づき日本バングラデシュ・ジョイントPPPプラットフォームを構築し、政府間協力の下でバングラデシュ側の関係省庁と我が国関心企業による各種プロジェクトの案件形成を支援している。

 令和6年3月に「第6回日本バングラデシュ・ジョイントPPPプラットフォーム会合」をダッカにて開催し、既存プロジェクトに関する進捗や課題等について議論するとともに、バングラデシュ側から新規プロジェクトの提案を受けた。

④北米・欧州

(ア)米国

 令和5年6月、G7三重・伊勢志摩交通大臣会合に際し、斉藤国土交通大臣がブティジェッジ運輸長官と会談し、船舶や航空の脱炭素化等について意見交換を行った。

 令和6年2月、ミシガン州デトロイトで第6回日米インフラフォーラムを開催し、国土交通省、米国運輸省及びミシガン州より日米間のインフラ分野における協力関係の発展への期待が示された。また、日米企業による取組みの紹介やブース展示を通じて、日米企業の連携強化を支援した。

(イ)カナダ

 令和5年6月、G7三重・伊勢志摩交通大臣会合に際し、斉藤国土交通大臣がアルガブラ運輸大臣と会談し、グリーン海運回廊や航空の脱炭素化等について意見交換を行った。また令和6年1月に、第33回日本・カナダ次官級経済協議が開催され、サプライチェーンの強靱化等について意見交換を行った。

(ウ)欧州

 令和5年6月、G7三重・伊勢志摩交通大臣会合に際し、斉藤国土交通大臣がEUのヴァレアン運輸担当欧州委員と会談し、航空分野での協力やウクライナ支援等について意見交換を行ったほか、英国のハーパー運輸大臣と会談し、鉄道分野での協力や船舶の脱炭素化等について意見交換を行った。

 ウクライナ復興に関しては、令和6年2月に、ウクライナ地方・国土・インフラ発展省との間で、インフラ復旧と復興の促進に向けた協力覚書を締結した。この覚書には、協力内容として道路輸送、ダム等の分野における案件形成等が含まれている。

⑤中南米

 令和2年9月に、国土交通省海事局は、Web形式の局長級会合を通じ、パナマ運河庁に対し、水不足に起因する運河の水位低下による船舶通航量の調整を目的とした上水サーチャージ導入経緯の説明を求めるとともに、今後我が国がどのような協力ができるか検討する旨伝えた。このような背景から3年度より、「パナマ運河の水不足問題の解消に向けた調査」を開始し、5年度においては、パナマ運河庁で作成されている水不足対策案の妥当性評価及び代替案の作成等を実施した。

 令和5年5月に、JICAによる「持続的な経済開発・地域統合のための中米地域物流ロジスティックス開発マスタープラン策定支援プロジェクト」における招聘事業の一環で、中米諸国の訪日団(中米経済統合一般条約常設事務局(SIECA)事務局長、エルサルバドル共和国公共事業・運輸大臣ほか中米各国運輸交通担当副大臣等から構成される一行)による西田国土交通大臣政務官への表敬が行われるとともに、物流、道路分野に関する施策等の講義提供・意見交換を行った。

⑥アフリカ

 第6回アフリカ開発会議(TICADⅥ)にあわせて平成28年8月に開催した「日・アフリカ官民インフラ会議」を契機として設立した「アフリカ・インフラ協議会(JAIDA)」と連携し、アフリカにおける「質の高いインフラ投資」を推進するため、我が国の「質の高いインフラ」を支える技術や経験等について積極的に情報発信するとともに、相手国との官民双方の関係構築を促進している。

 令和4年度までにアフリカ14か国において「官民インフラ会議」(閣僚級)を開催してきたのに加え、これまでに官民インフラ会議を開催した国との関係を継続・発展させることを目的とした、「質の高いインフラ対話」を開催しているほか、実務者レベルでテーマを絞って議論することを目的とした「分科会」、これまで官民インフラ会議を開催していない国との新たな関係構築に向けたセミナー等を開催している。

 令和5年12月にはウガンダで「日・ウガンダインフラワークショップ」を開催し、ウガンダ側から同国のインフラ概況の説明や我が国への期待が述べられ、我が国からは「質の高いインフラ」のコンセプトを紹介した。また、6年1月にはケニアで國場国土交通副大臣出席の下、「第2回日・ケニア官民インフラ会議」を開催したほか、ケニア・タンザニアの政府要人へのトップセールスを実施し「質の高いインフラ」の理解促進を図るとともに、両国との関係の維持・拡大に貢献した。