
国土交通白書 2024
第2節 国際交渉・連携等の推進
(1)国土政策分野
アジア各国等において、政府関係者、国際機関等様々なステークホルダーをネットワーク化し、会議、ウェブサイト等により国土・地域政策に係る課題や知見を共有する仕組みである「国土・地域計画策定・推進支援プラットフォーム(SPP)」の第6回会合を、令和5年11月にインドネシアにおいて、インドネシア政府、国連人間居住計画(UN-Habitat)福岡本部と共催し、国土交通省からは令和5年7月に閣議決定した第三次国土形成計画について基調講演を行った。
また、10月には、都市・地域政策に係る日欧交流会議において政策対話を実施したほか、12月には、カンボジア国土整備・都市計画・建設省の要請により、第4回日カンボジア都市開発・不動産開発プラットフォーム会合において、我が国の国土計画や大都市圏政策等を紹介した。
(2)都市分野
我が国企業の海外展開促進を図るため、令和5年度は以下の取組みを行った。
ベトナム及びインドにおける都市開発案件の形成に向けたビジネスマッチングイベントを各国現地で開催し、日本企業と現地企業との交流、商談を行った。
タイでは、同国運輸省の要請を受け、クルンテープ・アピワット中央駅周辺(バンスー地区)における都市開発推進について、現地JICA専門家を通じて技術協力を行うとともに、国土交通省、独立行政法人都市再生機構、タイ王国運輸省、タイ国有鉄道の4者で、令和2年度に交換した覚書に基づいて継続して事業協力を行っている。
また、独立行政法人都市再生機構は調査やセミナー等を実施しており、オーストラリアにおいては、同国ニューサウスウェールズ州と平成30年に交換した覚書に基づき、令和8年開港予定の西シドニー国際空港周辺地域における開発計画について、日本企業と現地企業とのネットワーキングイベントを現地で開催した。
また、韓国・EU・フランスそれぞれとの間で二国間会議を行い、都市政策に関する意見交換を行ったほか、視察により日本の都市開発の事例を紹介した。
さらに、国際的な不動産見本市である「MIPIM」(フランス・カンヌ開催)において、日本の都市開発・不動産市場のPRを行い、シティセールス等を図っている。
なお、J-CODE(一般社団法人海外エコシティプロジェクト協議会)による案件形成推進等の取組みを支援している。
(3)水分野
水問題は地球規模の問題であるという共通認識の下、国際会議等において問題解決に向けた議論が行われている。令和5年3月には、第6回国連水と災害に関する特別会合、及び46年ぶりに水に特化して開催された国連会議となる国連水会議2023が国連本部で開催され、約200の国・地域・機関から首脳級20人・閣僚級120人を含む6,700人以上が参加した。国連水会議2023の全体討議では、上川総理特使が日本政府の代表として、気候変動による将来の変化を意識した「バックキャスティング」、グリーン/グレーインフラのバランス等の重要性を指摘し、日本のコミットメントとして「熊本水イニシアティブ」により技術面、財政面の両方で世界の水問題に貢献していくこと、及び日本の知見・経験を共有することを通じて、健全な水循環の維持・回復に貢献することを表明した。また、同会議における5つのテーマ別討議の3「気候、強靱性、環境に関する水」の共同議長を、上川総理特使とエジプトのスウィリアム水資源・灌漑大臣が務めた。上川総理特使は共同議長として、日本の水防災の経験を活かしつつ、多様な水災害の解決に向けた行動プロセスである「アクション・ワークフロー」を提案し、40を超える国と国際機関等から様々な課題、対策、提案が表明され、実際の行動や課題解決につながる形で共同議長提言を取りまとめた。
それに加え、水資源分野では、独立行政法人水資源機構を事務局とし関係業界団体や関係省庁からなる「水資源分野における我が国事業者の海外展開活性化に向けた協議会」を活用して相手国のニーズや課題を把握し、治水機能やCO2削減に資する発電を含む利水機能の向上を図るダム再生事業の案件形成に向けた調査を行うなど、水資源分野の案件形成に向けた取組みを実施した。また、アジア河川流域機関ネットワーク(NARBO)と連携し、統合水資源管理(IWRM)の普及、促進に貢献している。このほか、アジアにおける汚水管理の意識向上等を目的として平成30年に設立したアジア汚水管理パートナーシップ(AWaP)について、第3回総会を令和5年8月に札幌市で開催(カンボジア、インドネシア、フィリピン、ベトナム、日本が参加)し、現行活動計画の下、参加国がこれまで実施してきた活動を振り返るとともに、参加国における汚水管理に関する共通課題の共有や解決に向けた次期活動計画を取りまとめた。
(4)防災分野
世界の水関連災害による被害の軽減に向けて、災害予防が持続可能な開発の鍵であるという共通認識を形成するため、我が国の経験・技術を発信するとともに、水災害予防の強化に関する国際連帯の形成に努めている。また、相手国の防災課題と日本の防災技術をマッチングさせるワークショップ「防災協働対話」をインドネシアやベトナム、ミャンマー、トルコで実施している。現在、既存ダムを有効活用するダム再生や危機管理型水位計等の本邦技術を活用した案件形成を進めているところである。また、国立研究開発法人土木研究所水災害・リスクマネジメント国際センター(ICHARM)では、統合洪水解析システム(IFAS)や降雨流出氾濫(RRI)モデル等の開発、リスクマネジメントの研究、博士課程及び修士課程を含む人材育成プログラムの実施、UNESCOやアジア開発銀行、及び世界銀行のプロジェクトへの参画及び国際洪水イニシアチブ(IFI)事務局としての活動等を通じ、水災害に脆弱な国・地域を対象にした技術協力・国際支援を実施している。また、砂防分野においては、イタリア、韓国、スイス及びオーストリアと砂防技術に係る二国間会議を開催しているほか、JICA専門家の派遣等や研修の受入を通じて土砂災害対策や警戒避難、土地利用規制等の技術協力を行っている。
(5)道路分野
世界道路協会(PIARC)の各技術委員会等に継続的に参画し、国際貢献に積極的に取り組んでおり、令和6年からは4年間の戦略計画がスタートし、加盟国による調査研究が進められている。5年10月には第27回世界道路会議がチェコ共和国・プラハ市において開催され、世界120か国から約6,000名の道路行政担当者が参加した。会議では「Together on the road again」をテーマとして、自動運転、カーボンニュートラル、交通安全等、各国の最新動向が報告され、意見交換が行われた。40か国の大臣等も参加し、数多くの討議セッションが開催された。日本からは交通安全のセッションにおいて発表を行った。
また、令和5年11月に日ASEAN交通大臣会合にて、ASEAN地域における舗装維持管理の質の向上を目指す「舗装維持管理技術共同研究プロジェクト」の実施が承認され、6年2月にASEAN各国の専門家を招集し専門家会合を開催し、共同研究プロジェクトの具体的な進め方について議論を行った。
【関連リンク】
国際機関への参画 (1)世界道路協会(PIARC)
URL:https://www.mlit.go.jp/road/sisaku/kokusai/sankaku/index02.html
(6)住宅・建築分野
国際建築規制協力委員会(IRCC)、日米加建築専門家会合(BEC)等への参加等、建築基準等に係る国際動向について関係国間での情報交換を行った。また、カンボジアからの要請を受け、建築物の構造安全や火災安全に関する建築技術基準の策定支援に取り組んでいる。
(7)鉄道分野
令和5年度も、インド高速鉄道に関する合同委員会や日英鉄道協力会議の開催、JICA専門家の派遣を通じた技術協力等、二国間での連携に向けた取組みを実施している。
(8)自動車分野
平成27年の第13回日ASEAN交通大臣会合にて承認された、「自動車基準・認証制度をはじめとした包括的な交通安全・環境施策に関する日ASEAN新協力プログラム」に基づく取組みとして、アジア地域官民共同フォーラムを開催するなどにより、アジア地域における基準調和・相互認証活動、交通安全・環境保全施策等について情報交換を行っている。
(9)海事分野
海事分野では、IMOにおける世界的な議題への対応の他、局長級会談等を通じた二国間協力、CSG会議(海運先進国当局間会議)や日ASEAN交通連携を通じた多国間協力の取組み等を実施している。
令和5年6月のCSG会議において、我が国から、パナマ運河及びスエズ運河の通航料改訂について改めて問題提起を行い、海運先進国間の連携を呼びかけた。
我が国は、ASEAN等新興国・途上国に対する海上保安能力向上や公共交通インフラの整備として巡視船や旅客船等の供与を行っており、令和6年3月末現在、インドネシア、ベトナム向け巡視船等、5か国に対し計11隻の船舶の供与に向けたODA事業が進行中である。この他、5年7月に我が国の協力によってマラッカ・シンガポール海峡の電子海図が更新・刊行された。
また、日ASEAN交通連携協力プロジェクトの一環として、ASEAN域内の内航船等において低環境負荷船を普及促進させるため、「ASEAN低環境負荷船普及戦略」に基づき、令和5年5月及び10月の海上交通WGにおいて、ASEAN各国の具体的取組み等を共有し、6年3月には、インドネシア及びタイにおいて、ASEAN各国を対象とした低環境負荷船の技術に関するセミナーを開催した。
さらに、東南アジアでの浮体式洋上風力発電のニーズが高まっている中、我が国の優れた海事技術である洋上浮体技術の海外展開に取り組んでいる。
(10)港湾分野
我が国の質の高い港湾技術の発信、世界の様々な港湾技術に関する最新の知見の取得、技術基準等の海外展開・国際標準化の推進のため、国際航路協会(PIANC)や国際港湾協会(IAPH)等と協調し、港湾関連の技術基準・ガイドラインを作成している。また、PIANC、IAPHには、日本から副会長を輩出し、2023年9月には、PIANCアジアセミナーの開催を支援するなど、我が国技術の海外展開を促進するための議論に参画している。
(11)航空分野
令和5年7月には日・チェコ航空協定について、6年1月には日・ルクセンブルク航空協定について、それぞれ実質合意に至るなど、航空分野における条約の締結に向けた進展がみられた。加えて、5年10月にはパプアニューギニア、11月にはアラブ首長国連邦、12月にはサウジアラビア、トルクメニスタン、6年1月にはエチオピアの各航空当局と協議を実施し、日本路線における輸送力の拡大につなげた。
また、令和5年5月には韓国、6月にはオーストラリア、7月にはシンガポール、6年2月にはフランスの各航空当局との間で政策対話を実施したほか、5年10月にバングラデシュで開催された第58回アジア太平洋航空局長会議において、航空安全、航空保安、航空管制等に関するアジア太平洋地域各国の取組みについて意見交換を行うなど、多国間・二国間における航空当局間の連携強化に取り組んでいる。
(12)物流分野
日中韓物流大臣会合における合意に基づき、北東アジア物流情報サービスネットワーク(NEAL-NET)の加盟国・加盟港湾の拡大等、日中韓の物流分野における協力の推進について中韓と議論を進めた。令和6年2月には、中国にて第9回日中韓物流大臣会合が開催され、物流による環境への影響を踏まえ、持続可能な物流の構築に向けた三国間の連携強化を確認した。
また、ASEANとの関係では、令和6年2月にフィリピン、同年3月にベトナムとの間で物流政策対話を開催し、両国政府の物流関連政策や物流課題等について情報交換を行った。
(13)地理空間情報分野
ASEAN地域等に対し、電子基準点網の設置・運用支援等を行っている。具体的にはベトナムを対象に、電子基準点の利活用に関する調査検討業務を実施し、ベトナムの状況調査、政府関係者の理解促進に取り組んだ。
(14)気象・地震津波分野
気象庁は、世界気象機関(WMO)の枠組みの下、気象観測データや予測結果等の国際的な交換や技術協力により各国の気象災害の防止・軽減に貢献しており、令和5年10月にアジア各国の国家気象水文機関の専門家を東京に招いて、気象レーダーの整備・運用等に関するワークショップを開催した。
また、国際連合教育科学文化機関(UNESCO)政府間海洋学委員会(IOC)の枠組みの下、北西太平洋における津波情報を各国に提供し、関係各国の津波防災に貢献している。
さらに、国際協力機構(JICA)等と協力して、開発途上国に対し気象、海洋、地震、火山等の様々な分野で研修等を通した人材育成支援・技術協力を行っている。
(15)海上保安分野
海上保安庁は、世界海上保安機関長官級会合、北太平洋海上保安フォーラム、アジア海上保安機関長官級会合といった多国間会合や、二国間での長官級会合、連携訓練等を通じて、捜索救助、海上セキュリティ対策等の各分野で海上保安機関間の連携・協力を積極的に推進している。
また、シーレーン沿岸国等における海上保安能力向上支援のため、独立行政法人国際協力機構(JICA)や公益財団法人日本財団及び笹川平和財団の枠組みにより、海上保安庁MCT(Mobile Cooperation Team)や専門的な知識を有する海上保安官を各国に派遣しているほか、各国の海上保安機関等の職員を日本に招へいし、能力向上支援に当たっている。
また、海上保安政策に関する教育を行う海上保安政策プログラム(修士課程)を開講し、アジア諸国等の海上保安機関職員を受け入れるなどして各国の連携協力、認識共有を図っている。
