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オピニオン
2004年6月2日
 
第1回「次世代の国土や都市の装置を考える懇談会」議事要旨
 

1. 隈委員のプレゼン


(1) 装置に対する考え方
  • 従来のハード的な技術と形がないIT的な技術及び人間の文化的活動とハードウエア等、違う領域のもの同士をつなぐきっかけや役割を担うものも、装置としてありえると考える。
  • その考えのもと、例えば、産業振興のトリガーとなる装置づくりなどを、実際に建築を通じて行っている。
(2) IT技術との複合装置
 a) 北上川の土手の中に埋めた建物
  • 土手に埋もれた構造で、その上は自転車や人が歩ける道路となっており、従来の土木と建築の境界線を廃した施設。
  • 建物は、水門施設の他、北上運河交流館として利用されている。運河の資料は、いわゆる展示物でなくゲーム等のインターフェイスとなっており、子供たちがゲーム感覚で運河について学べるようになっている。IT的な技術との複合は十分可能である。
(3) 町の産業や産物を世界に知らしめた装置

 a) 和紙で作った建物

  • 世界でもカリスマで通る地元の和紙職人と共にほとんどの開口を和紙でつくった。
  • 海外からの見学者が多数来訪し、町の産業を世界に知らしめるトリガーの役割を果した。
 b) 芦野石の美術館
  • 栃木県の那須の芦野地区において、建築用の石材としてはあまりポピュラーでない地元産の芦野石を使い、地元の石屋と協力して4年かけて「石の美術館」を建てた。
  • この建物が、イタリアの「国際石の建築賞」を日本で始めて受賞し、この石の存在を世界に知ってもらうことが出来た。
 c) 栃木県馬頭町の八溝杉で作った広重美術館
  • 外材におされ気味だった地元の八溝杉を使い美術館を建設した。
  • この建物も、フィンランドの「国際木の建築賞」を受賞し、八溝杉を世界に知らしめると共に産業振興のトリガーの役割を果す装置となった。
(4) 技術振興と国際交流のきっかけとなる装置

 a) 中国のバンブーハウス

  • 中国の職人と一緒に、竹をコンクリートの型枠として利用した建物を作った。
  • 北京オリンピックのCMの冒頭に、この建物から万里の長城を眺めた絵が使われており、中国では「バンブーハウス」として広く知られるようになった。
  • 日本の竹の処理技術を導入したことにより、新しい技術振興と国際交流に繋がった。
 b) 山口県豊浦町の日干しレンガ
  • この町で忘れ去られていた日干し煉瓦の技術を使い、地元の職人と一緒に、重要文化財の阿弥陀仏を治める小さな美術館を作った。
  • この町の伝統的な技術を復興させるきっかけとなった。
(5) 文化の復興

 a) 東京都内の木の建築

  • 表参道のルイ・ヴィトン・ジャパン本社の外壁全面に木材を使用した。
  • 日本では、まだ木が非常に安いため、建築費は通常のオフィスビルとほとんど変わらない。
  • 都市の中で戦後破壊されてしまった木の文化を復興させる装置になると思う。



2. 藤原委員のプレゼン


(1) 水に関する装置のあり方
  • 次世代のインフラを考えるにあたり、技術論に入る前に一度立ち止まり、制度について論じる必要性を感じている。
 a) 統一水法の整備
  • 日本の水に関する基本法は、河川法であり、河川は流域の水の主軸ではあるが、河川だけで流域の水全体を見ることは無理である。
  • 流域の水循環に基づく治水、利水、環境を横断的に総合管理する水法が必要である。
  • 海外の主要国では、我が国でいう「河川法」は、「水法」という形で整備されているが、水利用の面から生まれたものであり、きちんと流域の水循環を捉えたものではない。
  • 最近の水法は、個別的な利用指向型から包括的な資源指向型に方向転換しているが、これからは環境指向的な立法に統合される必要がある。(ダンテ・A・カポネラ博士)
  • 今後は、環境も含めた総合水法の制定に向かうのが合理的である。
 b) イタリアの水法
  • 1933年に「統一水法典」が制定され、公水の概念の明文化と公水に関する既存の水行政関連法の一元化が行われた。
  • 1989年に「183号」を制定され、流域単位に流域庁を設置し、そこに州間の調整を行わせている。
  • 1994年に「ガリ法」が制定され、末端の利水に関わる水循環全体の管理権限の州への委譲及び県単位にATOを設置し、水道等の民営化の推進が行われた。
  • 1999年の「152号」は、EUに加盟するにあたり、制定された法律。
  • 「152号」は大循環、「ガリ法」は小循環、「183号」は中循環に対して用意した法制度だと思う。
 c) 公水の成文化
  • 水行政の総合化には、まず公水の概念を明文化する必要がある。
  • ヨーロッパでは、19世紀末以降、近代化の過程で水需要が増大するに伴い、あらゆる水を公物とする考え方が生まれた。
  • 我が国では、公水の概念は未だ国民的合意を得ていない。
 d) 水循環の実態解明
  • 我が国を含めて多くの場合、水循環の実態について、森林や耕地の保水機能、地下水の流動機構等、自然的なフィールドだけでなく、既得水利権の水利用実態や使用水・処理水の還元排水の実態が把握されていない。それらの解析法・調査法を立ち上げてほしい。
  • インフラ整備等で賛成・反対、双方感情的に走るのは、水循環の実態が明確でなく、国民的コンセンサスが得られていないためと考える。
  • 我が国では、公水の概念は未だ国民的合意を得ていない。


3. フリートーキング


(1) 従来のインフラ整備に対する意見
 a) 国民のニーズとインフラ整備
  • 人間は、人間のリズムとか自分が住んでいる環境のリズムとかに合わせ、仕事の時間とか働き方というのを構築してきたが、現在、暮らし方が根本的に変わっていくターニングポイントに来ている。
  • 発展途上国の場合、インフラの整備は、経済成長の絶対条件となるが、先進国における公共投資や社会資本は、経済活動の成果や余力のようなものであり、生活の質を圧倒的に良くするものと認識されている。
  • インフラ整備には少なくとも15年から20年程度の先行投資期間があり、ニーズ型のインフラ整備を実践することは難しい。このため、弾力性のあるものを導入していくことになると思う。
  • 国民は、ストックの質、景観、環境等の統計的に処理できないインフラを求めているが、統計的に処理できないものは、非常に議論を呼ぶところでもある。
 b) 見沼の調整池機能
  • 見沼は、もともと調整池機能や湧水機能を持っていたので、都市の安全装置の一つといえる。
  • 調整池は、一つの機能しか持たないが、田んぼはオアシス機能等の付加的な機能も持ちえる。
(2) これからの装置(インフラ)のあり方
 a) インフラのあり方を議論する時の考え方
  • 次世代のインフラのあり方は、建前だけに囚われないものでありたい。
  • インフラのあり方について考える時は、専門分野に拘らず、トータルな人間の立場で議論するべきである。
 b) 装置(インフラ)に対する考え方
  • この懇談会でいう装置とは、違う分野や違う領域をつなげる、新しいものを見せていくという意味ではなく、公共の基礎となり、多くの人が使用可能な公共的に整備されていた方がよさそうなものを指していると思う。
  • インフラというものは融通無碍で、その場所により、規模や機能は全く自由でいいと思う。
  • 離散的なものでネットワークを組み、ある機能を果すような装置の概念もありえると思う。
  • 結果として出来上がったインフラ以上に、それを作る途中のプロセス自身が非常に意味を持っている。この発想は、今までのインフラ整備の中になかった。
  • 成長のインパクトを与えるような、我々の生活の質をより豊かにするようなものが、今後の装置のあり方だと考える。
 c) ハード優先からの脱却
  • 今までの行政は、機能よりハードが優先されてきた。これからは、まず、その地域にどのような機能が必要かを先に考えることが、フレキシブルなインフラ整備をしていくうえで重要である。
  • これからのインフラ整備は、人間を中心としたもう少し統合的なもの、ソフト面から発想された形態の物であるべき。
 d) 自然との融合
  • 人々が集まるオアシスのようなものが、これから考えるインフラ整備の新しいテーマの一つになりえる。
  • 現在、健康や環境ブームが一人歩きしている感はあるが、都市の装置が自然を巻き込むことの必要性は感じている。
  • 国土の中にいわゆるインフラが全くない空間や地域があってもいいと思う。いろいろな選択ができる多様性が必要である。
以上
 

「次世代の国土や都市の装置を考える懇談会」について




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