1)働き方の変化
- 労働の形、職業、働き方を見直すことが、新しいインフラの枠組みを考えるヒントになる。
- 90年代初頭、アメリカでは、雇用なき成長と言われたが、人材派遣業での就業の拡大や、スモールビジネスの急速な増大という動きがあった。
- 生活と職業と地域を両立させる一つの仕組みとして、スモールビジネスはこれからの大きな潮流になるのではないか。
2)米国に見る人的資本の開花と新規開業
- 90年代前半アメリカでは年間82万件ぐらいのスモールビジネスが創設された。その担い手は、3つの層に分類できる。かつての大企業管理職で解雇されたグループ。リタイアした中高年の男女。MBAを出た若きエリートたち。自分自身の人生のプログラムを自らの手で設計するという意欲に根ざした層であった。
- スモールビジネスの担い手たちは、地域の大学でもう一度新しい専門分野を勉強し、新しい資格を取得し、州政府の各分野の支援のファンドの仕組みを活用し、同じ志のネットワークを作り、地域における必要なニーズを調査したうえで事業化している。
3)地域のニーズと新規開業の活力
- 大学がインフラの装置として、職業をつくり出し、その地域に必要な知的資源、方法論をつくり出し、人材を育てるという核になる機関になっている。
- 大学と職業のあっせん機関、支援サービス機関、女性のネットワーク機関、図書館などが一体化した空間的な利用の仕方を行っている。
- それぞれの分野のプログラムが次々に新しくなり、相互乗り入れ自由でネットワークが形成される。たくさんのスモールビジネスが生まれ、雇用が生まれ、その地域に必要な教育ビジネス、介護ビジネス、福祉サービス、ITビジネスがたくさん生まれてきている。
4)地域の知的資本を創出する仕組みづくり
- 生活と職業の両立に関しては、地域を新しい仕組みに作り上げることが重要だが、そこには[1]構造上のバリア、[2]運用制度上のバリア、[3]地域における風土・文化上のバリアがある。この3つのバリアを変えていくような新しい仕組みが非常に重要である。
- 教育・行政施設・公的施設の再編集をするソフトの政策の必要性(以下は、一例)
[1]教育機関・大学の活用――新たな知をつくる地域の拠点として、大学を地域戦略の生涯学習型システムに変容させる。産学協同のビジネスシーズの育成拠点にする。
[2]既存の多様なハード施設の機能活用の再編成――成長持続可能な社会とは、旧商品、新サービスの時代。公民館、小・中学校、図書館、市役所、体育館、郵便局、駅等の機能別再点検と地域におけるワンストップサービス拠点化。
[3]創造特区のようなあらたなルール適用のビジネス育成の空間拠点の設置を図る。
[4]水の質と循環、緑の再生と維持、町並みの保持と観光招致、CO2削減などの目標達成等を自治体レベルでの自主的目標と自治体ごとの税負担の軽減インセンティブシステム、自治体ごとに都市の独自な自然資源の再生法を奨励。
- JRにみる駅活用の地域コミュニケーション事例
- 地域コミュニティのふれあい交流の促進の拠点となる空間を駅の中に作った例
- 伊達駅:市と協力して駅をロビー風に改装して地域におけるコミュニティホールとし、多目的ホールとして活用している。
- 井川さくら駅:交流センターを作った。
- 街と駅の協働による再生活動の例
- 七日町駅:市の求心力が衰退し、大正ロマンのコンセプトによる街づくりを実施。駅も連携し、大正ロマン建築様式に改修。
- 上野駅:上野駅を地元商店街、藝大等と協働しながら、大規模なリニュアルを実施。新たなライフスタイルに向けた店舗の開設、藝大生の作品展示ギャラリーの設置、地元商店のPRショップの招致など、地元との長期間にわたる協議の中からの駅と街の再生活動を実施。
- 恵比寿駅:新たなライフスタイルの生活拠点を創出するコンセプトで恵比寿駅のリニュアルを実施。恵比寿駅から渋谷駅、代官山まで、新しい商店街も含めた人々の回遊の活発化を創出。
- 品川駅:高度化する品川地区のオフィス集積、生活空間に合わせ駅ビルの大規模再開発を実施。
- 地域の歴史や民話を伝承する活動を支援する空間として駅を活用例
・郡山駅:「語り部と方言の会」(NPO)に待合室を活動のコーナーとして提供。
- 地域の多様な表現活動の場や生涯学習の拠点としての駅の活用例
- 東海駅:駅の中に美術館、ギャラリーを設置、表現空間の提供。
- 両国:駅の高架化を開発しスタジオを創設。
- 山方宿の駅の中に図書室を設置。
[5]女性の就業と育児の両立に資する生活サービス事業として駅型保育園の推進の例
- 国分寺駅、小机駅等:駅に保育園を作っている。現在10園を開設。