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オピニオン
2004年7月21日
 
第2回「次世代の国土や都市の装置を考える懇談会」議事要旨
 

1. 浅見委員氏プレゼンテーション

(1)社会インフラとしての空間情報
  • 空間情報、都市情報等がかなり整備されてきた。これらは計画や政策立案をするときの基礎的な情報であり、ある種のインフラと考えてよい。空間情報はビジネスの上でもかなり重要なインフラであり、こういった情報を使っていろんなビジネスが展開し得る状況にある。
  • ただ日本では土地とか権利の境界は極めて重要だが、地籍等の測量が正確に行われておらず必ずしも精度は高くない。
  • 国や自治体が持つディジタル情報は民間で使おうとしても使えない。ビジネスでも使えるようにしたらいいのではないか。ディジタル情報は社会のインフラと考えればいいのではないか。

(2)社会的装置としての調停機構

  • 近隣のトラブルでは声の大きい人が勝つような不公平がまかり通っているのが実情だが、そういったことに対する公正な調停機構が必要である。これはある種の社会的な装置として重要である。

(3)都市計画における科学性

  • ミクロな環境について、貨幣価値で評価するということは従来できなかったが、細かい空間データができてきたため最近できるようになってきた。
  • 土地の細分化が周辺にどういう影響を与えているか調べてみると、結局、街区全体としてはマイナスになっていた。こういうメカニズムを理解していれば、もしかしたら土地の細分化をしなかったかもしれない。
  • 社会に対する影響とを正確に評価できると、何がよくて何がよくないかの判断ができる。その判断をしつつ個々の開発をすることで、街区全体として資産価値が保全できる。

(4)最低限の制限ではない制限の運用

  • 建築基準法は最低限の制限をするものだが、市街地に対して特別な貢献をした場合には弾力的な運用というのがあり得るのではないか。そういう社会的なシステムというのが重要ではないか。

(5)合意形成のための手段

  • 都市計画の図面は非常にわかりにくい。これを翻訳するようなシステムや仕組みが重要だ。
  • 今後は電子的な媒体を使って民主的な手続をするようになっていくと思うがその場合、情報技術と社会技術、両方の開発が必要だ。
  • ツールとして以下のものが可能性がある。

[1]意思決定ツールしての、シミュレーション、シミュレーター

[2]ITS等を利用したモニタリングシステム

[3]都市の分析(土地利用予測)ツール

[4]住民の学習ツール

(6)半公共空間に関して

  • 住宅地のコモン、共同の通路などの半公共的な空間は重要な一つの装置になり得るので、インフラに取り込むことが必要ではないか。
  • 半公共だから半分は私的なので、費用負担をどうするかというシステムとともに開発する必要がある。

(7)将来の社会の変化の可能性

  • 将来、社会がどのように変化するかを考えつつ装置を考える必要がある。

[1]家はカプセルユニットのような形になり、いろんなものを装着して能力を変えていくようになるかもしれない。それを支えるようなスケルトンや輸送システムが次世代の装置となるかもしれない。

[2]住所不定が一つの類型になるかもしれない。

[3]職場はボーダーレス化し、職場というものの意味や都心の意味が変わるかもしれない。

[4]交通とエネルギー問題等からは、マストランスポーテーション、マストランジットが重要で、投資にあたっては現在非常に大きな岐路に立たされている。

[5]物流は、ジャスト・オン・タイムでなく、今後は一様なサービスではない、差別化が必要になってくる。その場合の装置のあり方は画一的なものではない。

[6]地域、コミュニティは、クラブ化し、ある種の同好の士が集まってコミュニティを形成し地域を形成することになるかもしれない。




2.江上委員プレゼンテーション


これからの国土、都市の装置のあり方に向けての一視点

  • 都市に関する基本認識と課題
  • 人間存在の捉え方

―――人間は、自然の存在の一部あり、人間は、類的存在。

  • 戦後の都市の発展・形成における蓄積と歪み

―――経済生活・インフラ整備、モノの豊かさ重視による社会発展シナリオによる成長策の結果、都市は、ハードとモノを蓄積した過密都市に変貌。

[3]ゲマインシャフトの喪失とゲゼルシャフトの支配

―――家族・子供・老人・地域等紐帯による共同体の衰退、地域の伝統コミュニティの衰退。

経済価値による都市の空間的、機能的再編成と体系化

[4]既得権益の硬直化と創造性の衰退

―――若者の無業者増大、ベンチャー・企業の新規開業の停滞、

[5]自然の減少による生活環境の劣化

―――環境問題、子供の遊び場の喪失。

  • 成長持続可能な循環型都市への一視点

―― 人間の持てる資質、能力、意欲をリソースとし、開花させることにより持続可能な都市づくりのシステムを構築する。就業のあり方からの視点。


1)働き方の変化

  • 労働の形、職業、働き方を見直すことが、新しいインフラの枠組みを考えるヒントになる。
  • 90年代初頭、アメリカでは、雇用なき成長と言われたが、人材派遣業での就業の拡大や、スモールビジネスの急速な増大という動きがあった。
  • 生活と職業と地域を両立させる一つの仕組みとして、スモールビジネスはこれからの大きな潮流になるのではないか。

2)米国に見る人的資本の開花と新規開業

  • 90年代前半アメリカでは年間82万件ぐらいのスモールビジネスが創設された。その担い手は、3つの層に分類できる。かつての大企業管理職で解雇されたグループ。リタイアした中高年の男女。MBAを出た若きエリートたち。自分自身の人生のプログラムを自らの手で設計するという意欲に根ざした層であった。
  • スモールビジネスの担い手たちは、地域の大学でもう一度新しい専門分野を勉強し、新しい資格を取得し、州政府の各分野の支援のファンドの仕組みを活用し、同じ志のネットワークを作り、地域における必要なニーズを調査したうえで事業化している。

3)地域のニーズと新規開業の活力

  • 大学がインフラの装置として、職業をつくり出し、その地域に必要な知的資源、方法論をつくり出し、人材を育てるという核になる機関になっている。
  • 大学と職業のあっせん機関、支援サービス機関、女性のネットワーク機関、図書館などが一体化した空間的な利用の仕方を行っている。
  • それぞれの分野のプログラムが次々に新しくなり、相互乗り入れ自由でネットワークが形成される。たくさんのスモールビジネスが生まれ、雇用が生まれ、その地域に必要な教育ビジネス、介護ビジネス、福祉サービス、ITビジネスがたくさん生まれてきている。

4)地域の知的資本を創出する仕組みづくり

  • 生活と職業の両立に関しては、地域を新しい仕組みに作り上げることが重要だが、そこには[1]構造上のバリア、[2]運用制度上のバリア、[3]地域における風土・文化上のバリアがある。この3つのバリアを変えていくような新しい仕組みが非常に重要である。
  • 教育・行政施設・公的施設の再編集をするソフトの政策の必要性(以下は、一例)

[1]教育機関・大学の活用――新たな知をつくる地域の拠点として、大学を地域戦略の生涯学習型システムに変容させる。産学協同のビジネスシーズの育成拠点にする。

[2]既存の多様なハード施設の機能活用の再編成――成長持続可能な社会とは、旧商品、新サービスの時代。公民館、小・中学校、図書館、市役所、体育館、郵便局、駅等の機能別再点検と地域におけるワンストップサービス拠点化。

[3]創造特区のようなあらたなルール適用のビジネス育成の空間拠点の設置を図る。

[4]水の質と循環、緑の再生と維持、町並みの保持と観光招致、CO2削減などの目標達成等を自治体レベルでの自主的目標と自治体ごとの税負担の軽減インセンティブシステム、自治体ごとに都市の独自な自然資源の再生法を奨励。

  • JRにみる駅活用の地域コミュニケーション事例
  • 地域コミュニティのふれあい交流の促進の拠点となる空間を駅の中に作った例
  • 伊達駅:市と協力して駅をロビー風に改装して地域におけるコミュニティホールとし、多目的ホールとして活用している。
  • 井川さくら駅:交流センターを作った。
  • 街と駅の協働による再生活動の例
    • 七日町駅:市の求心力が衰退し、大正ロマンのコンセプトによる街づくりを実施。駅も連携し、大正ロマン建築様式に改修。
    • 上野駅:上野駅を地元商店街、藝大等と協働しながら、大規模なリニュアルを実施。新たなライフスタイルに向けた店舗の開設、藝大生の作品展示ギャラリーの設置、地元商店のPRショップの招致など、地元との長期間にわたる協議の中からの駅と街の再生活動を実施。
    • 恵比寿駅:新たなライフスタイルの生活拠点を創出するコンセプトで恵比寿駅のリニュアルを実施。恵比寿駅から渋谷駅、代官山まで、新しい商店街も含めた人々の回遊の活発化を創出。
    • 品川駅:高度化する品川地区のオフィス集積、生活空間に合わせ駅ビルの大規模再開発を実施。
  • 地域の歴史や民話を伝承する活動を支援する空間として駅を活用例

・郡山駅:「語り部と方言の会」(NPO)に待合室を活動のコーナーとして提供。

  • 地域の多様な表現活動の場や生涯学習の拠点としての駅の活用例
    • 東海駅:駅の中に美術館、ギャラリーを設置、表現空間の提供。
    • 両国:駅の高架化を開発しスタジオを創設。
    • 山方宿の駅の中に図書室を設置。

[5]女性の就業と育児の両立に資する生活サービス事業として駅型保育園の推進の例

    • 国分寺駅、小机駅等:駅に保育園を作っている。現在10園を開設。


3. フリートーキング


(1)「最低限の制限でない制限」の必要性

  • 市街地のレベルアップを考えると、最低限の規制だけでなくより上の規制をしていくことが必要だ。例えばある面で貢献があればある面を緩和するといった交渉事的な形となり、それは協定と都市計画との中間的な形態になる。
  • ただし、実際の社会的な貢献や、それに対する弾力化についての対応関係や、合理性を追求する必要がある。

(2)インフラとしての調整組織の必要性

  • マンションの建設に関して調整がブラックマーケット化するのは、地域のコミュニティにとって悲劇的なことだ。調整を行う客観性を持った第三者システムができないと、マンションは日本の都市にとっての汚点として存在し続けることになる。
  • マンション紛争で運動をしようにも時間がないと反対運動すらでない。住民サイドは非常に非力であるのが現実だ。
  • 権利の評価の問題や清算金の調整は、当事者同士だけではできず、公正な評価機関、調整機関でないとできない。公共は完全に調停の部分からは距離を置いているから、半公共的なものが調停の場にないと都市のクオリティは守れない。
  • 評価機関や調整機関は公共でなければできないわけではない。
  • 情報をデータや数値としてオープンにすることは、コンセンサスを得やすい。また、地形を情報の中に入れると、適切な可住地ではないことを暗黙に数値で知らせることになる。これは行政ではできない分野だ。

(3)調整組織の機能

  • 容積率の緩和や規制緩和などについて、自分たちの今住んでいるネイバーフッドをどうしていくかという意識とかけ離れたところで意思決定が行われているところに問題がある。
  • 都市計画については、ネイバーフッドプランニング的なところで、手続も踏まえて規制を強化することがむしろインフラとして必要である。
  • 開発、犯罪、事故などについて、すぐにその人にも通報してもらえる「知らされる権利」は重要なインフラである。
  • 都市計画の提案制度はある種の完成度が要求されるのでバリアが高いが、そこの部分を解消するには、行政だけではなくて、民間ビジネスも含めないと難しい。
  • 調整という機能をほんとうに社会のインフラとして位置づけるには、どこかで腹をくくって担わないといけない。ただ公的なところである必要は全くなく、NPOでよい。
  • 住民サイドも、調整という機能が必要だということを理解し、それも社会のインフラだと位置づけないと、特に都市は相当崩壊していくのではないか。まだどのような調整機能をインフラとして位置づけるかは、国もコミットメントしていく必要はある。

(4)住環境マネジメントの必要性

  • この地域を将来的にどういう形にしていくかについて、小学校単位ぐらいのネイバーフッドプランニングを作らないと問題が常に起きてくる。
  • 当事者意識のない住民が増えてしまうと、細かいマネジメントをしなくなってしまう。住民の意識を変えるか、あるいは、マネジメントに対してある種の負担をしていくような仕組みをつくって、コミュニティビジネスをはぐくんでいかないとだめだ。
  • 地域の中で自治組織を強化しようという声はなかなか上がらない、町会会費を払う人はどんどん少なくなっている。
  • 匿名性が高く、流動性が高い住宅のあり方が増えていくと犯罪発生率は高まるし環境整備も低下していく。プラスにインセンティブが働くようなマネジメントの仕組みなり制度促進が必要だ。
  • 地域管理組合のようなものを組織していければいい。

(5)日本におけるコミュニティの課題

  • 子供をいい環境の中で育てていこうというのが、コミュニティの中心テーマだ。また、老人をコミュニティの中でどうやって支えられるか議論が深化しないといけない。
  • アメリカにおけるネイバーフッドユニットは、もともと近隣住区の考え方で第一義的な目的は資産保全だ。日本の場合は、明確に区切られた地域というのはなかったので、逆に別な意味での危機感の共有だとか、あるいは資産価値保全をばねにしたコミュニティというのは育たなかった。
  • 日本も何かしら危機感を共有しなくてはコミュニティ論というのは育たない。それは資産保全や住環境の荒れという問題ではないか。

(6)半公共空間の可能性

  • 今は公共が狭小な敷地を引き取らないから、半公共空間をその後の管理のシステムも含めてインフラだという発想をすると、狭小街路の問題が解決できそうだ。
  • ミニ開発で維持が非常に悪くなると、途端に資産価値が下がる。そうすると、ある種の危機意識の共有ができるので、自分たちで管理していくような仕組みがうまくいけばいい。
  • 現在公共空間と思われているものを半公共空間にするという逆の考え方だが、自分の敷地の前の公道を少し能動的に管理をする仕組みがあってもよい。
  • 首都圏二、三十キロにある見沼田んぼの荒れ地再生も、遊水機能による治水効果もあるし、ヒートアイランド抑制にもなる。その位置づけとして半公共空間だと宣言してもいい。「半」というのは魅力的なキーワードだ。

(7)地域における大学の役割

  • 大学は地域におけるオープンな、成果を生み出すアクティブな機関になっていくだろう。これからの知識化社会では新しいビジネスは、それぞれ専門性が高く、地域における再教育あるいは再学習の拠点としていろいろな仕組みが必要になってくる。
  • 大学が一つの核になるためには、カリキュラム構成もその地域に必要なものを積極的に作る、その地域における実務経験のある人を講師にする、長期にわたるインターンシップを行うなど弾力的な方法論が重要である。
  • 職業選択のされかたを見ると、それぞれの地域で職場選択の生活圏が確立されてきた。地域の中で職業と生活の場を一体化して作っていくと、そのことによって、地域を守っていくという連帯意識や構造、メカニズムが生まれてくる。
  • 日本の場合には職業は生活の中で非常に大きなウエートを占めているので、職業を地域の中につくり出す仕組みが非常に重要だ。

(8)文化的なバリアとは

  • ニュービジネスを作ろうとすると、従来型の取引慣行がバリアとなる。また、地域によっては伝統的な価値観を押しつけたり、職業と家庭生活を両立するライフスタイルの人をあまり受け入れないこともある。

(9)企業の活動と公共性について

  • 我国では、駅の中で子供を育てることをほんとうに了解しているといえるのか。
  • JRは民間企業だから活動は自由だ。だが公共サイドがそれに頼っていいのか疑問。本当に必要なものであれば、公共か民間かどちらがやるべきなのかということについての議論がまず必要だ。
  • JRは、会社としては民間企業だが、公益性とか公共性が相当強く、インフラの議論ではそこが重要である。例えば、国鉄時代に埼玉県内に埼京線を作り周辺に相当緑地帯をとらせたが、JRになったらこれを破棄してしまった。またJRになって秋葉原から神田あたりに東北新幹線を通すために高架の上をさらに高架化する計画がある。

(10)プラニングの重要性 

  • 皇居の真横の堀端の合同庁舎の計画は、景観上非常に重要な場所にもかかわらず、容積を倍にし、さら電波塔を乗せる計画となっている。行政は、縦割りで、それぞれの部分で最適解を出そうとするシステムだから、予算が限られている中で庁舎を建てるなら、このやり方しかない。
  • 都市計画の制度は、何とか上手に利用する方へ行き、良い環境を作る方には行かない。いかに容積をアップするかがプランナーの仕事で、最適解を何とかその狭い制約条件の中でやるかがデザイナーの仕事になっている。
  • 事の本質はプランニングがまずいからだ。それは、すべての分野の仕事を統括的に見るとか、全体調整をやるという部門がないためだ。
  • 段階的にいろんな機関で機関決定するというやり方をすると、一方で大きな社会貢献をしながら、一方で公益性の名のもとに大変な環境負荷を与えてしまうこともある。
  • 埼玉県の見沼田んぼの例では、公共がみずから用途地域をつくって、保全と開発のある種の秩序をつくったはずなのに、秩序破壊をみずからやってきた。それは土地が異常に高かったという問題が根本にある。
  • 公共事業と土地利用を考えると、地価の問題とか、地価のコントロールの仕方とかが根本にある。さらに私有地の問題、収用などみんな絡んでくる。
  • JRやある程度の企業は全部パブリックである。パブリックな存在として行動することが規範になく、敷地の中だけ自由に使うという発想では、都市は成り立たない。
以上
 
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