(1)鳥瞰図都市計画環境計画の範囲
- 500世帯ぐらいが1つの単位だろう。そうすると全国で10万カ所できる。数十カ所でもいいから、試みをやるところが出てくれば、非常に変わってくる。
- お年寄りや障害を持った人たちへサービスを提供していく場合、どのぐらいの地域が最適かを経験則で言うと、大体1万五、六千だ。広い範囲でのサービス提供というのは非常に困難になる。スウェーデン、デンマークで言うと、大体1万以内ぐらいの小さな単位で地域のサービスをある程度やり繰りして、安心、安全の生活をしている。
- サービスの内容あるいは、自分たちで守っていこうとする内容によって50戸、場合によっては1万と、違ってくるだろう。
(2)鳥瞰図都市計画環境計画の担い手
- 住民にやりたい人がいたら、その人に地方公共団体が手をかすという形がいい。調査費を出すとか、コンサルと一緒に出来るようにしてやる。
- 地方公共団体の職員は、そういうサービスの担い手としては一番いい。身分は保証されているし、いろいろな行政の中の経験もある。コンサル機能も非常にある。
(3)日本型モデルの必要性
- 専門家ほど欧米モデルというのが頭にあり、どうしてもドイツのようにかちっとしたものにしようとする。日本においては、欧米モデルが破綻しているのか、あるいはどういう生かし方をしたらいいのか考え、日本型にどう意訳するのかが重要だ。
- 警察の力や国の権力が背後にあって、計画が決まったら目標像を描いてそこへ持っていくんだということが果たして日本人的センスで合うのか疑問だ。ゴールのイメージを描いて、みんなでそこに向かうのは、無理なものを追求しようとする事だ。
- 枠組み、つまり重要な景観の骨格だけはパブリックがしっかり決め、その中を埋める活動はある程度自由にやらせるしかない。ある程度のガイドラインぐらいを作り緩やかなコントロールをするのが現実的である。
- いろいろな法律や条例をつくるときに、みなそれなりの理想像を描いて、理念を持って作るが、統一されていない。それを統一することを考えないといけない時期に来ている。
(4)ボランティア活動、NPO活動の社会へのビルトイン
- ボランティア活動、NPO活動が容易にやれるようなシステムがあるといい。それを逆に、今の社会にきちんと位置づけ、ビルトインしておくといい。
- 多数の問題意識を持った市民がすっと入ってこられる、また、金に換算できる仕掛けが常態化するとよい。あるいは、政策決定にNPO法人のメンバーが、参加しやすいようにしておく。
(5)都市の中に何を作るか
- 今後のインフラの整備の考え方は、機能を足していくということだと思う。今の道路にどういう機能を足していくかという足し算をしていく。もう、新たな道路はつくらなくていい。
- 高齢者が一番外に出たくない理由はトイレだ。だからトイレが必要だ。生活道路でいえば、いつでも休める、お年寄りでも障害を持った人でも休めて、トイレができるようなところが欲しい。また川と福祉の観点からは、川にトイレという機能をどうつけていくか重要だ。
- 高齢者がコミュニティの中で生活する場合、トイレの位置を知っていたとしても、距離が問題になる場合がある。トイレは非常に緊急性がある。さらに老化すると疲れやすくなりベンチが必要になる。
(6)コミュニティの中での活動
- コミュニティクラブが必要だという理由は、人生というのは引退のときがあるからだ。引退後は、自分のコミュニティの中で、比較的静かに生活するという考え方を前提にしている。
- 静かな生活に入ったときに、コミュニティの中で、自分は何ができるだろうか、あるいは、サービスとして何が欲しいだろうかと立ち返ると、その地域の人との出会いの場、話し合いの場のような場があったほうがいい。あるいは、そういう助けを求める人の情報がきちんと集まって、情報交換もできるような場があることがその地域の中で安定的に暮らすに必要だ。
- 現在ある町内会は、ほとんど老人会になっている。そこでされるのは、行政の末端サービス的な事で、問題提起することはないし、また何かを変えようという動きもない。
(7)暮らしの道ゾーンを推進していく方法
- 主体をだれがやるかは、商店街の場合には非常に簡単で、若い人を中心にやっていく。あるいは、青年会議所を中心にやっていくのがよい。
- 住宅地は難しい。町内会は高齢化しているし、自分の町をよくしようじゃないかと思い始めるのは、大体サラリーマン生活終わるころだ。そういう人たちが余生をかけてやる仕事にするのか、より若い地方公共団体の人がそこに入っていくのかだろう。
- 町並み保存運動では妻籠の例では、町役場の人が1人、熱心な人がいたというだけで、あそこまで行った。やりたいという人がいたら、そこに地方公共団体が応援してあげるあるいは、コンサルタントをつけてあげる、そういう体制しかないのではないか。地方公共団体の人に、自分が住んでいる町だからよくしようじゃないかという人がいれば一番確実だ。
- 国、都道府県、市町村のレベルでいえば、基本的にやり過ぎている。だから余計なことはしない、足は引っ張らないことが必要だ。
- 役所の人の2枚目の名刺をつくる。手を挙げた人には2枚目の名刺をつくってあげる。そして、インターシップとしてNPOに出向させるというような枠を作る。
- 23区のレベルでは公務員は、主体的に、自主的にもう2枚目の名刺を持っている。住民と対話していますから、そういう人たちがキーマンになって、上手にお膳立てをしながらやっている。2枚目の名刺も非常に大事な公務員の仕事ですと認めて、評価することが必要だ。
- 今は、いろいろな団体の会合に行くと、公務員は2枚名刺くれる。ここ数年で堂々とくれるようになった。そのような公務員像というのは、見えないインフラの一つかもしれない。