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オピニオン
2004年9月13日
 
第3回「次世代の国土や都市の装置を考える懇談会」議事要旨
 

1. 浅見委員氏プレゼンテーション

(1)鳥瞰図都市計画環境計画の必要性
  • 生活環境、都市環境、景観等が将来どうなっていくのか、街区単位でイメージができない状況にある。
  • 公共投資は、合成の誤謬になるのではないかとの危惧がある。
  • 住環境、都市環境、景観に関する地方公共団体の計画は、ほとんど言葉の遊びと数字の羅列で、次の世代がイメージできる計画にはなっていない。

 

(2)鳥瞰図都市計画環境計画とは

  • 住宅、住宅以外の建築物、街路、学校などのセンター施設の再編や配置、デザインを含めた計画を扱う。
  • イメージする単位というのは、せいぜい小学校あるいは小学校の単位を2つに分けたぐらい。だから全国で四、五万カ所がその候補地になる。
  • 立案したものを50年、100年かけて実現することが必要だ。

(3)社会資本整備の考えかたと鳥瞰図都市環境計画の位置づけ

  • 公共投資、社会資本整備を経済活動の成果として享受し、それで国民の生活の質をよくするとの視点から考えていくべき。
  • そのとき、コミュニティを人間としての活動の原点として再考すべきではないか。
  • それは、経済全体がサービス化しているが、サービスを提供する場や受け取る場はどこかというと、住宅、住環境、都市環境だからである。

(4)社会資本整備の必要性

  • 国民の生活の質に関連したところに公共投資を向けていく必要がある。
  • 日本はまだ先進国になり20年。社会ストック整備に200年かかると考えれば、まだその10分の1にしか達していない。また地理的状況を考えれば、社会資本ストック量はGDPの2倍は必要だ。
  • インフラは経済水準を維持または成長させるために必要だ。
  • 創造性とか企業家精神を高揚させるような空間があるかというと、アメリカには、シリコンバレーとか、日本のテクノポリスのモデルになったResearch Triangle Parkなどの例がある。
  • ある地域の活性化は、作られたストックインフラの活用から始まる。そして、新しいインフラを作っていくところから始まっていくのではないか。

(5)道路の重要性

  • 空間構成の基礎的インフラが道路である。日本人は広場をあまり作らないので、通りを中心に展開していくという意味においても、道路は重要である。
  • 我々が道路の先に見るものが貧しさなのか豊かさなのかというところが一番のポイントだ。奥行きを持たない町というのが日本の場合には多過ぎる。

(6)景観の重要性

  • 景観は統計に現われない、また現すことが困難な社会ストックだ。国土については、まず国立公園からきれいにする必要がある。
  • 景観の面から、都市について、残すもの、捨てるもの、どういうストックをつくってきたかということについて、もう一度整理すべきではないだろうか。

(7)コミュニティの重要性

  • 子供の成長環境というものに対して責任のある場がコミュニティだ。
  • 老後の環境にとってもコミュニティは必要だ。
  • コミュニティインフラとして、ある種のサービスと奉仕を提供する場としてのコミュニティクラブというものが必要だ。
  • 住みやすさをいかに向上させるかという視点が日本の場合には薄弱である。

(8)鳥瞰図都市環境計画のイメージ

  • 現在の都市計画でも、土地の利用計画をつくり詳細な建物の施設計画をつくるが、鳥瞰図都市環境計画では、その後の具体的な建物の配置も含めて、こんなイメージでデザインを規制しますというところまで含める。
  • 例えば自分の家を30年後に建てかえるのであれば、あなたの家はこういう形にしてくださいよと言えば、あまり反対する人はいないと思う。都市はライフサイクルがあるから、そういうときに新しい街をつくっていくという視点で計画を作る必要がある。
以上
 



2.石川委員プレゼンテーション


(1)エレベーター設置運動

  • 障害者とともに立川駅にエレベーター設置を要求する会を3人で立ち上げた。私と、友達と、障害者の3人だった。運動を起こしたとき相手は国鉄だった。
  • 国鉄の要綱には、障害を持った人は2日前に言わないと電車に載せないとあった。そういう状況の中では、電車の中で車いすの人を見ることはあまりない。
  • エレベーターをつけるのに16年もの歳月がかかったのは、国鉄には、勝手にこういったものを作っちゃいけないという法律があったからである。
  • さらに、運用の問題で相当時間がかった。障害者だけしか乗らせないという運用はだめで、誰もが乗れるようにすべきだと運動した。
  • エレベーターをつける運動というのは、歴史に残る運動だと言われている。これ以降、各駅にエレベーターをつけたり、ハートビル法ができたり、いろいろな法律ができた。

(2)ケア・センターやわらぎの設立

  • エレベーター設置運動をしていく中で、障害を持った人たちに共感してボランティアを始め、ケア・センターやわらぎを立ち上げた。今年は17年目に入る。
  • ケア・センターやわらぎと社会福祉法人認知の会の2つの理事長をやっているが、全部でヘルパーが350名、職員が200名、24時間365日のサービス提供というのは日本で最初。ISO9001を4つの部門で取ったのも日本で最初。

(3)地域介護サービスシステムの仕組み(NPO法人ケア・センターやわらぎの例)

  • ボランティア活動をシステムにするために2つのことを行った。一つはコーディネーターの育成・養成、もう一つは様式の整理である。
  • 受付から、インテーク、アセスメント、ケアプランの作成、サービス提供、モニタリング、サービスの調整、終了、この7段階のプログラムを、約10年前、介護保険の前に作った。各段階において、コーディネーターのやるべき仕事と書くべきフォーマットを全部用意した。
  • 支援スキルコードとADLを作った。支援スキルコードというのは働き手人を10段階ですべて評価する。ADLというのは日常生活動作で、利用者が何ができて、何ができないかを示す。ここでマッチングの仕組みができる。
  • 個人情報提供に関する承諾書。これはAという利用者がいた場合、この承諾書をもらわないと、カンファレンスを出さない。
  • ケースマップは、このクライアントに対して週何回入ったか、月何回入ったかということが一目でわかるもの。
  • 独自で開発したケース管理業務支援情報システム「いちごシステム」が1999年に情報化月間推進会議議長賞を受賞した。

(4)少子高齢化社会をどう乗り越えるか

  • 1960年代のスウェーデン、デンマークと、1990年代のわが国というのは、少子高齢化、女性の社会進出、核家族化の3点でよく似た構造になっている。
  • スウェーデン、デンマークは少子高齢化社会をどう乗り越えてきたかというと2つある。
  • 一つは、自分たちの地域の中で、自分たちがどういう状況になっても暮らせるハードとしてのインフラをつくってきた。例えば1階が幼稚園だったり2階、3階が日本で言う特別養護老人ホームで、それ以上はアパート、マンションというようなものを整備してきた。もう一つは、子供を産み、育てるソフトをつくってきた。
  • 産み、育てるソフト、環境をつくらなければ、どんなにハードの整備をしても意味がない。もう彼の国では実践している。そして今では出生率は上がっている。

(5)移動の仕方と今後の発展

  • 日本の移動の仕方というのは、おんぶと乳母車だ。日本はおんぶの社会構造で生活をしてきた。エレベーターで上下を移動することはあまり認識していなかったし、高低、垂直移動についてはほとんど意識がなかった。
  • 今の若い人たちは、おんぶしないで、乳母車で行く。その乳母車で移動できるような、具体的な構造をつくっていったらいい。さらに幅をちょっと広くすると車いすとなる。乳母車社会の構造をつくると、車いすでどこでも行けるという話になっていく。
以上
 


3. フリートーキング


(1)鳥瞰図都市計画環境計画の範囲

  • 500世帯ぐらいが1つの単位だろう。そうすると全国で10万カ所できる。数十カ所でもいいから、試みをやるところが出てくれば、非常に変わってくる。
  • お年寄りや障害を持った人たちへサービスを提供していく場合、どのぐらいの地域が最適かを経験則で言うと、大体1万五、六千だ。広い範囲でのサービス提供というのは非常に困難になる。スウェーデン、デンマークで言うと、大体1万以内ぐらいの小さな単位で地域のサービスをある程度やり繰りして、安心、安全の生活をしている。
  • サービスの内容あるいは、自分たちで守っていこうとする内容によって50戸、場合によっては1万と、違ってくるだろう。

(2)鳥瞰図都市計画環境計画の担い手

  • 住民にやりたい人がいたら、その人に地方公共団体が手をかすという形がいい。調査費を出すとか、コンサルと一緒に出来るようにしてやる。
  • 地方公共団体の職員は、そういうサービスの担い手としては一番いい。身分は保証されているし、いろいろな行政の中の経験もある。コンサル機能も非常にある。

(3)日本型モデルの必要性

  • 専門家ほど欧米モデルというのが頭にあり、どうしてもドイツのようにかちっとしたものにしようとする。日本においては、欧米モデルが破綻しているのか、あるいはどういう生かし方をしたらいいのか考え、日本型にどう意訳するのかが重要だ。
  • 警察の力や国の権力が背後にあって、計画が決まったら目標像を描いてそこへ持っていくんだということが果たして日本人的センスで合うのか疑問だ。ゴールのイメージを描いて、みんなでそこに向かうのは、無理なものを追求しようとする事だ。
  • 枠組み、つまり重要な景観の骨格だけはパブリックがしっかり決め、その中を埋める活動はある程度自由にやらせるしかない。ある程度のガイドラインぐらいを作り緩やかなコントロールをするのが現実的である。
  • いろいろな法律や条例をつくるときに、みなそれなりの理想像を描いて、理念を持って作るが、統一されていない。それを統一することを考えないといけない時期に来ている。

(4)ボランティア活動、NPO活動の社会へのビルトイン

  • ボランティア活動、NPO活動が容易にやれるようなシステムがあるといい。それを逆に、今の社会にきちんと位置づけ、ビルトインしておくといい。
  • 多数の問題意識を持った市民がすっと入ってこられる、また、金に換算できる仕掛けが常態化するとよい。あるいは、政策決定にNPO法人のメンバーが、参加しやすいようにしておく。

(5)都市の中に何を作るか

  • 今後のインフラの整備の考え方は、機能を足していくということだと思う。今の道路にどういう機能を足していくかという足し算をしていく。もう、新たな道路はつくらなくていい。
  • 高齢者が一番外に出たくない理由はトイレだ。だからトイレが必要だ。生活道路でいえば、いつでも休める、お年寄りでも障害を持った人でも休めて、トイレができるようなところが欲しい。また川と福祉の観点からは、川にトイレという機能をどうつけていくか重要だ。
  • 高齢者がコミュニティの中で生活する場合、トイレの位置を知っていたとしても、距離が問題になる場合がある。トイレは非常に緊急性がある。さらに老化すると疲れやすくなりベンチが必要になる。

(6)コミュニティの中での活動

  • コミュニティクラブが必要だという理由は、人生というのは引退のときがあるからだ。引退後は、自分のコミュニティの中で、比較的静かに生活するという考え方を前提にしている。
  • 静かな生活に入ったときに、コミュニティの中で、自分は何ができるだろうか、あるいは、サービスとして何が欲しいだろうかと立ち返ると、その地域の人との出会いの場、話し合いの場のような場があったほうがいい。あるいは、そういう助けを求める人の情報がきちんと集まって、情報交換もできるような場があることがその地域の中で安定的に暮らすに必要だ。
  • 現在ある町内会は、ほとんど老人会になっている。そこでされるのは、行政の末端サービス的な事で、問題提起することはないし、また何かを変えようという動きもない。

(7)暮らしの道ゾーンを推進していく方法

  • 主体をだれがやるかは、商店街の場合には非常に簡単で、若い人を中心にやっていく。あるいは、青年会議所を中心にやっていくのがよい。
  • 住宅地は難しい。町内会は高齢化しているし、自分の町をよくしようじゃないかと思い始めるのは、大体サラリーマン生活終わるころだ。そういう人たちが余生をかけてやる仕事にするのか、より若い地方公共団体の人がそこに入っていくのかだろう。
  • 町並み保存運動では妻籠の例では、町役場の人が1人、熱心な人がいたというだけで、あそこまで行った。やりたいという人がいたら、そこに地方公共団体が応援してあげるあるいは、コンサルタントをつけてあげる、そういう体制しかないのではないか。地方公共団体の人に、自分が住んでいる町だからよくしようじゃないかという人がいれば一番確実だ。
  • 国、都道府県、市町村のレベルでいえば、基本的にやり過ぎている。だから余計なことはしない、足は引っ張らないことが必要だ。
  • 役所の人の2枚目の名刺をつくる。手を挙げた人には2枚目の名刺をつくってあげる。そして、インターシップとしてNPOに出向させるというような枠を作る。
  • 23区のレベルでは公務員は、主体的に、自主的にもう2枚目の名刺を持っている。住民と対話していますから、そういう人たちがキーマンになって、上手にお膳立てをしながらやっている。2枚目の名刺も非常に大事な公務員の仕事ですと認めて、評価することが必要だ。
  • 今は、いろいろな団体の会合に行くと、公務員は2枚名刺くれる。ここ数年で堂々とくれるようになった。そのような公務員像というのは、見えないインフラの一つかもしれない。
以上
 
「次世代の国土や都市の装置を考える懇談会」について




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