資料1.(不動産の証券化についての事務次官の諮問文)

 このところ「不動産の証券化」について各方面で急速に期待が高まっており、そのための研究、あるいは政策の具体化が進んでいる。これらの施策は、それなりの成果を挙げつつあるように思うが、その議論の中心がいかなる商品を作るべきかにあるように思われる。しかしながら、これが本来の姿で進むためには、商品のみならず、資金供給サイドの状況も併せて検討する必要があるように思われる。具体的にいえば、わが国の約1,300兆円という個人貯蓄を中心とした膨大な貯蓄を、どういう形で運用することが好ましいのか、そのための貯蓄形態は預貯金、債権、株式など、どういう形に変わっていくのか、それを仲介すべき銀行、証券会社といった金融機関は、どういう役割を果たすべきなのか、なども併せて考えるべきであろう。そして、それらに対して答えを出すためには、世界の金融制度、金融機関の役割、マーケットの変わり方を押さえる必要がある。また、わが国の現在の金融、経済情勢、変貌しつつある金融の諸制度をも視野に入れる必要があろう。
 さらに、「証券化」といった場合、不動産が単に証券に化体されただけでは、金融商品としてはあまり意味がなく、むしろその流動化、すなわち流通市場が存在するところまで考えるべきであろう。
 そう考えると、現在の主流となっている「不動産の証券化」は、とにかく現在ある不動産の現金化に止まっているように思われ、必ずしも十全とは思われない。
 こういう視点に立てば、「不動産の証券化」とは、単に土地や建物そのものを証券化するというに止まらず、幅広く不動産関連のABSをも視野に入れるべきは当然であろう。
 そこで、こういう内容を幅広い観点から議論して頂くことを念頭に、委員の先生方にお願いしたところである。国土庁の研究会という点であることから、その具体的な提案をどこまでお願いすべきかという制約はあるかも知れないが、幅広い観点から闊達な議論をして頂き、その成果を取りまとめた報告書を作成して頂きたい。


久保田 勇夫



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