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平成2年建設部門地域間産業連関表について(要旨)−地域経済に果たす役割−

平成8年10月29日
建設経済局調査情報課


はじめに

 建設省では、建設投資の経済効果の分析等のため、経済構造の全体像を産業別の物やサービスを生産・流通の面からとらえた各種の「産業連関表」を作成・公表している。

 今回作成した「建設部門地域間産業連関表」は、特に建設部門を中心に、地域間の産業取引関係に焦点をあてたものである。

 これは5年毎に作成されており、今回で3回目となる。

 地域間産業連関表は、財・サービス等の商品の原材料が何なのか、どの地域から仕入れたのかがわかり、一方、その商品をどの産業に、どの地域に販売したのかがわかる等、極めて豊かな情報を有している。

 これは地域経済の活性化等、地域の振興に関与する人々をはじめ、地域経済の現況の把握、地域の経済計画・見通し、及び産業開発やリゾート開発、各種イベント等のプロジェクト評価を行う人々にとっては必要不可欠な分析用具となっている。

 1.平成2年建設部門地域間産業連関表からみた地域経済の構造

 2.「阪神・淡路大震災復興に関する建設活動の経済効果」

 3.「公共事業及び電子・通信機器生産による経済効果」

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1.平成2年建設部門地域間産業連関表からみた地域経済の構造

1.高い政府建設投資の生産誘発効果 

 ある地域に投資・消費等の需要が生じた場合、全国に対して生産が誘発されるが、その中には自地域における生産誘発も含まれている。(前者を対全国生産誘発係数、後者を自地域生産誘発係数という)

 図−1、2は、最終需要項目別に両者の係数を示したものである。

  1.  図−1の対全国生産誘発係数をみると、総じて生産誘発の高い需要項目は、総固定資本形成(民間)(=企業設備投資+民間住宅)及び総固定資本形成(政府)(=公共投資)であり、家計及び政府の消費支出支出は低い。
     また、輸出以外は、地域別に効果のバラツキが小さい。
  2.  図−2の自地域生産誘発係数をみると、総じて生産誘発の高い需要項目は、総固定資本形成(政府)であり、中でも「政府建設投資」が最も高い。
     政府建設投資による自地域生産誘発係数は、効果の地域別バラツキが少なく、この傾向は前回調査(昭和60年)よりも強まった。
     総固定資本形成(民間)による自地域生産誘発係数は、効果のバラツキが大きく、関東を除く全ての地域で低い。
2.建設投資による対全国生産誘発効果は総じて関東以西において高い 

 ある地域に消費・投資等の需要が生じた場合、全国に対して生産が誘発されるが、その中には自地域における生産誘発も含まれている。(前者を対全国生産誘発係数、後者を自地域生産誘発係数という)

 図−3は政府建設投資による対全国及び自地域生産誘発効果を地域別に示したものである。

 政府建設投資1兆円による対全国生産誘発効果は、沖縄、四国及び近畿で高く、東北、中国及び関東等で低い。つまり、同じ1兆円の政府建設投資を関東と四国で行うと、その生産誘発効果は、関東よりも四国で行った方が約500億円高いことになる。

 一方、そのうちの自地域に留まる自地域生産誘発効果をみると、四国及び中国等が低く、対全国生産誘発効果の低い関東が、逆に最も高い。四国と関東のその差は約 2,200億円である。

3.建設投資による就業誘発者数は、地方圏で高く、大都市圏で低い 

 図−4は「道路関係公共事業」の建設投資、1億円を地域別に行った場合の対全国及び自地域就業誘発効果(就業誘発者数)を示したものである。

 これによると、対全国就業誘発者数において、地方圏(九州、四国及び東北)は16人を超えるが、大都市圏(関東及び近畿)は約13人となっている。

 九州と関東の差は4人、つまり1兆円の道路関係公共事業を行うと、九州の方が関東よりも4万人分、就業機会が多く創出されることになる。


2.『阪神・淡路大震災復興に関する建設活動の経済効果』

1.大震災復興に関する建設活動の概要 

 阪神・淡路大震災発生後(1995年1月17日発生)、種々の関係機関により、被害額、復興額等の発表が行われた。

 しかし、それらは必ずしも充分とは言えず、又このような大都市における大震災の復興額推計には、極めて分析困難な多くの要因が含まれている。

 ここで利用する復興推計額は、建設省近畿地方建設局が一つの試算として推計したものである。

 これは、主として住宅関連については各自治体の消防防災課調べによる住宅被害状況を、非住宅建築関連については神戸商工会議所調査を、土木関連については発注主体の予算額等を基にして推計されたものである。

 ここに紹介するのは、これら復興建設費が各地域に及ぼす経済効果を、この度完成した「平成2年建設部門地域間産業連関表」を用いて試算した分析結果である。

2.生産誘発額は、復興建設費の約2倍の15兆9,000億円 

 震災復興に係わる復興建設費は、総額で約 8.1兆程度(名目約 8.5兆円程度)と試算されている。

 これによる生産誘発額は、全国で15兆9,400億円程度であり、復興建設費の約1.97倍の生産誘発効果があるものと見込まれる。

 この生産誘発額は、ほぼ兵庫県の年間県民所得(平成2年、15兆4,800億円)に相当する。

 また、この効果を地域別にみると、近畿に約80%の12兆8,200億円程度、関東に約8%の1兆2,000億円程度、中部に約4%の7,100億円程度の生産がそれぞれ誘発されるものと見込まれる。

3.就業誘発効果は、全国就業者の約1.5%に相当する約103万人分 

 震災復興に係わる復興建設費は、総額で約8.1兆円程度(名目約8.5兆円程度)と試算されているが、これによる就業誘発効果は、全国で約103万人程度と見込まれる。

 これは、我国の総就業者(約6,580万人、平成2年)の約1.5%に相当する。

 また、これを地域別にみると、近畿に約80%の84.6万人程度、関東に約8%の7.0万人程度、中部に約4%の4.1万人程度の就業機会がそれぞれ誘発されるものと見込まれる。


3.『公共事業及び電子・通信機器生産による経済効果』

1.公共事業は、自地域生産誘発が高く、多種多様な産業へ誘発 

 道路・河川等の公共事業及び電子・通信機器の生産は、建設業、又は電子・通信機器産業における生産活動を必要とするばかりでなく、原材料需要を通じて、他の産業の生産活動を誘発する。

 それら誘発産業の生産物が自地域で賄いきれない場合は、多地域の産業に依存することになる。その関係を示したものが図−7、図−8である。

 例えば、道路関係公共事業は、殆どの地域において誘発額の8割前後は自地域の産業で賄われるが、電子・通信機器は、関東及び近畿を除き自地域産業で賄われる割合は6割前後となっている。

 また、公共事業は、鉄鋼金属、窯業、化学製品、機械等の製造業から、商業、運輸、電気ガス等のサービス業まで多種多様な産業に生産を誘発するが、 電子・通信機器は、主として当該機器生産のため部品産業に誘発し、他産業への誘発が少ない。(参照図)

2.公共事業及び電子・通信機器生産による就業誘発効果
  • 公共事業による就業誘発効果は、北海道及び中国を除く全ての地域で電子・通信機器のそれよりも高い。
  • 公共事業は地方圏への効果が高く、また、電子・通信機器ほど地域別に効果のバラツキが大きくない。
  • 公共事業による就業誘発効果は、電子・通信機器と比較し各地域とも自地域における効果が高い。 
    1.  例えば道路関係公共事業による就業誘発効果は、電子・通信機器生産のそれよりも高く、殆どの地域において13人(1億円あたりの就業誘発者数、以下同)を超えている。
       これに対し、電子・通信機器の場合は、殆どの地域で13人以下であり、特に関東は10人となっている。
    2.  公共事業による就業誘発効果は、地方圏において高く、関東、近畿及び中部を除く全ての地域で15人を超える効果を有している。
       一方、電子・通信機器による効果は、地域別に効果のバラツキが大きく北海道は16人を超えるが、関東は10人となっている。
    3.  公共事業による就業誘発効果は、各地域とも自地域における効果が高く、殆どの地域で11〜14人の就業機会を誘発する。
       一方、電子・通信機器の場合は、殆どの地域において関東に誘発する割合が大きく、自地域への誘発は9人以下となっている。

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