運輸経済月例報告 平成12年1月のトピックス



主要なアジア路線(国際航空)の状況
  
・経済危機により訪日客が減少した国も、11年度に入って訪日増加傾向
・タイ、韓国等へ渡航する日本人客は10年度増加したが、最近は減少
・日本の航空企業のアジア路線における積取比率は、増加傾向
 


 1997年(平成9年)7月のタイ・バーツの切り下げに端を発するアジア通貨・金融危機は、多くのアジア諸国に広がり、翌年にかけて景気が大きく後退した(図表1参照)。その後、IMF主導による財政・金融の再建政策の実施等を経て、外貨準備高が増加、経常収支も改善して、各国の通貨は落ち着きをみせ、1999年(平成11年)に入って韓国、タイを始めとして鉱工業生産が回復するなど、景気回復の動きが続いている。今回は、こうしたアジア諸国(地域)の経済状況の変化が国際航空市場に与える影響をみるため、平成8年度以降の東京とアジア各国(地域)の首都等を結ぶ航空路線の利用客数(日本人客、外国人客、トランジット(乗換え)客の別)、及び航空企業別積取比率の推移について法務省資料(E/D統計)に基づき、まとめた。
 全体的には、9年のアジア通貨危機を契機に、9年、10年とアジア各国からの利用客は減少したが、危機を免れた香港、台湾からの利用客は増加した。一方、日本人客は、9年の香港返還以降、香港線の利用客は減少し、逆に通貨危機の各国へは、割安感もあって増加傾向にあった。11年に入り、香港からの利用客は減少しているものの、景気が回復しはじめたその他のアジア各国(地域)からの利用客は増加傾向にある。以下、路線毎の特色について述べる。
 (注)積取比率・・・対象企業が運送した旅客の全体の利用客数に占める割合

【東京−バンコク線】
 年間利用客数は、1,360千人(10年度)であり、日本人客の割合が高いが、近年トランジット客(バンコク−東京−米国の経由客が多い)が増加しており、11年度(11月分まで。以下同じ)には4分の1以上のシェアを占めるに至った。  9年7月の通貨危機以降、外国人客は減少したが、11年度には経済の回復を反映して急速に回復している。日本人客については(10年度)、バーツ安、「アメイジング・タイランド」キャンペーン(観光キャンペーン)、ビーチリゾート人気(インドネシアの政情不安による代替効果も存在する)等により増加した。
 10年度積取比率は、日本企業が37.7%、タイ企業が25.6%、第3国企業が36.7%で、日本企業は前年度より4.4ポイント向上した。
 (注)日本企業 :日本航空、全日本空輸 相手国企業:タイ国際航空 第3国企業:ノースウエスト航空、ユナイテッド航空、エアインディア、ビーマンバングラデシュ航空、エジプト航空、パキスタン国際航空

【東京−ソウル線】
 年間利用客数は2,368千人(10年度)とこの5路線で最も多い。うち日本人客が約5割、外国人客が3割強を占めている。
 9年末の経済危機により外国人客は大幅に減少したが、同様に11年度には急速に回復している。一方、日本人客は、9年度、10年度と国内の経済不況下にあってウォン安等により大幅に増加した。また、最近トランジット客が激増しているが、これは航空企業の努力等もあり、ソウル−東京−米国等の路線利用客の増加によるものと思われる。路線全体でも増加傾向を維持している。
 10年度積取比率は、日本企業が23.0%、韓国企業が52.6%、第3国企業が24.4%で、5路線の内で相手国企業が占める割合が最も高いが、日本企業も2.7ポイント向上した。
 また、韓国各地(ソウルの他、釜山、済州、大邱)と日本各地(東京の他、大阪、名古屋、札幌、青森、仙台、福島、新潟、富山、小松、岡山、広島、高松、松山、福岡、大分、鹿児島、那覇)を結ぶ全27路線では、10年度利用客数6,502千人であり、東京−ソウル線の約2.7倍となっているが、その日本人客、外国人客、トランジット客各々の近年の動向についてみても、東京−ソウル線と同じ傾向がみられる。
 (注)日本企業 :日本航空、全日本空輸、日本エアシステム 相手国企業:大韓航空、アシアナ航空 第3国企業:ノースウエスト航空、ユナイテッド航空

【東京−ジャカルタ線】
 10年度には年間利用客数が約4割の大幅な減少で104千人となったが、11年度に入っても、シェアの7割を占める日本人客が減少し続けている影響で、全体利用客数でも依然減少傾向である。
 9年半ばに通貨危機が発生し、10年に入りスハルト政権崩壊につながった政情不安が経済混乱を深刻化させ、日本人客、外国人客ともに大幅減となったが、外国人客については11年度には回復傾向がみられる。
 10年度積取比率は、日本企業が17.5ポイント向上して85.4%、インドネシア企業が14.6%となり、日本企業の比率が高いが、これは元来日本人客が多いこと(10年度シェア4分の3)に加え、両企業の路線設定の違い(日本企業は直行)によるものと考えられる。
(注)日本企業 :日本航空(東京-ジャカルタ-デンパサール)、全日本空輸(東京-ジャカルタ-デンパサール:平成10年9月より運航休止中) 相手国企業:ガルーダ・インドネシア航空(東京-デンパサール-ジャカルタ)

【東京−香港線】
 年間利用客数は1,772千人(10年度)であり、うち日本人客が5割弱、外国人客が3割強を占めている。
 9年7月の香港の中国返還を前にした8年度の利用客数が2,387千人であり、うち7割近くを日本人客が占めていたが、返還後の香港人気の沈静化により、9年度は大幅減となった。一方外国人客は、アジア通貨危機に際して香港ドルは切り下げを免れ、円との関係でも価値を高めた9年度及び10年度においては大きく増加している。これには他に、東京−香港線が日本人客の減少により座席数に余裕を生じたことによって香港での航空運賃が低減したこと、香港における日本ブーム等の要因が考えられる。
11年度は逆に、日本人客が増加に転じた反面、外国人客は依然回復していない香港経済を反映し、またレートも円高傾向となったことから減少している。
 10年度積取比率は、日本企業が42.4%、香港企業が30.8%、第3国企業が26.8%であり、日本企業は4.0ポイント低下した。
 (注)日本企業 :日本航空、全日本空輸、日本エアシステム、日本アジア航空 相手国企業:キャセイパシフィック航空 第3国企業:ノースウエスト航空、ユナイテッド航空

【東京−台北線】
 10年度年間利用客数は1,733千人であり、うち日本人客と外国人客がそれぞれ5割弱を占めている。外国人客については5路線の中で唯一対象期間中の増加を維持している。これは個人消費が堅調な台湾経済に加えて、誘客宣伝活動の活発化、「日本ブーム」等によると考えられる。11年度には外国人客がシェアで日本人客を逆転した。また、トランジットも増加傾向である。
 10年度積取比率は、日本企業が31.6%、台湾企業が40.5%、第3国企業が27.9%で、日本企業は1.4ポイント増加した。
 (注)日本企業 :日本アジア航空 相手国企業:中華航空 第3国企業:キャセイパシフィック航空、ノースウエスト航空、シンガポール航空

<参考>[日本−中国間路線の本邦企業の運行状況]

 以上のほか、近年の日中間の経済関係の深まりを反映し、平成9年度(夏期)の時点では、我が国の東京・大阪・福岡から北京・上海・大連・広州を結ぶ8路線、週45便(3社計)が就航されていた。10年度(夏期)には、天津・青島・潘陽・廈門が中国側就航地として加わり、合計で14路線、最大週80便(3社計)となり、ネットワークの拡充、及びアクセス利便の向上が図られた。さらに、11年度(夏期)においては、昆明、西安との路線も就航されており、合計19路線、最大週77便(3社計)となっている。


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