平成12年12月8日発表

運輸経済月例報告 平成12年9月のトピックス



〜機関分担率の推移に見る我が国の国内交通体系の特徴〜

我が国の国内交通の機関分担率は自動車が高い比率を占める。欧米との比較では旅客では鉄道、貨物では内航海運が高い水準。
しかし、今後の推計では、このまま推移する見込み。自動車交通の負の側面への対応のため、公共交通利用促進の積極的な取組みが必要。

(1)自家用輸送が中心だが、鉄道の役割も大きい我が国の旅客輸送
 旅客における我が国の輸送機関分担率の推移を見ると(図1)、昭和25年の時点では鉄道が旅客輸送を独占していたが、その後利便性の高い自家用乗用車の割合が道路整備の進展等により上昇し、昭和53年に首位となった。
 また、バスは昭和40年頃から割合が低下する一方、我が国経済の発展等に伴い、航空は徐々にではあるが割合が増加している。
我が国の国内旅客輸送の機関分担率の推移

 欧米諸国と比較すると、我が国は、自動車の保有台数は欧州諸国並みであるが(図2)、自家用乗用車の機関分担率は3割程度低く(図3)、利用の割合が小さいことが大きな特徴となっている。これは、都市鉄道等の役割が大きいことによるものであり、現在では相対的に環境負荷の小さい交通体系となっているといえる。しかしながら、運輸政策審議会第20号答申によれば、今後も自動車への依存が続くと予測されており、環境問題、交通渋滞等の自動車交通の負の側面に対応するため、公共交通利用促進等の積極的な取組みが必要である。

各国の人口千人あたり自動車保有台数の推移

主要国の自家用自動車輸送分担率(旅客)の推移

(2)自動車と内航海運が支える我が国の貨物輸送
 貨物における我が国の機関分担率の推移を見ると図4のようになる。
 昭和20年代は首位であった鉄道に替わり、昭和34年以降26年間にわたり内航海運が首位を保った。これは臨海工業地帯を中心とする我が国の産業立地、原料を輸入して製品を輸出する貿易構造等によるものと考えられる。
 また、製造業における基礎素材型から加工組立型への産業構造の変化に伴う産業立地の変化、ジャストインタイム方式に代表される物流の多頻度少量化の進展、宅配便の急速な普及等を背景に貨物輸送における自動車の役割が向上し、オイルショック時に若干割合が低下したものの、昭和60年からは内航海運を抜いて首位となっている。
 各国の機関分担率を示した図5と比較すると、内航海運の割合が高く、旅客同様、相対的に環境負荷の小さい点が我が国の交通体系の特徴となっている。

我が国の国内貨物輸送の機関分担率の推移

 欧米諸国の昭和35年(1960年)からの推移を見ると、図5のようになる。各国の特徴としては、以下があげられる。
・アメリカ− 鉄道が一貫して首位にあり、パイプラインも大きな役割を果たしている。近年自動車の割合も増加傾向にある。
・イギリス− 島国であることから内航海運の占める割合が比較的高く、我が国に似た構造となっているが、自動車の機関分担率が極めて高い。
・ドイツ− 昭和40年までに首位が鉄道から自動車になっている。河川交通の発達により内航水路が比較的大きな割合を持つ。
・フランス− 昭和45年までに首位が鉄道から自動車になっている。

欧米諸国における貨物輸送の機関分担率の推移


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