運輸経済月例報告 今月のトピックス 運輸経済月例報告 平成9年10月のトピックス



  最近の運輸の動向について  

 国内貨物輸送は、景気と同様に足踏み
 国内旅客輸送は、航空が好調、バス(東京)も復調
 出国日本人数の伸びにかげり  

 最近の我が国経済の状況は、輸出の増加、設備投資の回復はあるものの、個人消費、住宅建設、生産等の動きが弱くなっていることから、足踏み状態にある。

 運輸もこの影響を受け、貨物・旅客とも厳しい状況を示してきている。

(国内貨物輸送)
 国内貨物輸送は、4月の消費税率引き上げを契機とした消費の冷え込みが続いていること、民間住宅建設の減少及び公共事業の縮小等の影響により、総じて低調な推移となっている。
 JR貨物は、コンテナ化の進展によりコンテナ輸送は好調に推移しているが、セメント等建設関連貨物の荷動きの低調、物流合理化による油輸送の減少等により、車扱輸送の減少が大きく、低迷が続いている。

 トラックは、特積トラックでは、宅配貨物等が好調を維持しているものの、消費の低迷に伴い、衣料、家電製品等の荷動きが低調なため、これまで続いてきた増加傾向にかげりが見られる。一般トラックでは、建設材等が低調なため、第2四半期(4〜6月)以降減少に転じている。

 内航海運は、貨物船では、これまで景気の回復基調を受けた工業生産の好調により、増加を続けてきたが、第3四半期(7〜9月)には減少に転じた。油送船では、油流通の合理化の進展もあり、低調に推移している。

 航空は、太宗貨物である生鮮品の需要があまり落ち込んでいないこと等により、唯一好調を維持している。

(国内旅客輸送)
 国内旅客輸送は、これまで高い水準を保ってきた民間消費支出の伸びが第2四半期以降鈍化したこともあり、低調な動きとなった。
 JRは、定期、定期外とも、消費税率引き上げによる運賃改定に伴う先買いの反動により、第2四半期に大きく落ち込んだ。第3四半期についても、新幹線は持ち直したものの、回復が遅れている。

 JRを除く民鉄は、雇用調整や通学年齢層人口の減少等により、定期の減少が続いているが、定期からの転移等により増加していた定期外も第2四半期以降減少に転じており、厳しい状況となっている。

 バス(東京)は、長期に渡って減少が続いていたが、第3四半期で増加に転じた。これは、臨海新都心等で新規需要が生じたことが大きく寄与している。

 タクシー(東京)は、景気の足踏み状態による需要減を受け、低調が続いており、実車率も極めて低い水準で推移している。

 航空は、他の輸送機関が低調な中で高い伸びを維持している。これは、羽田空港の発着枠増加による増便に代表される供給の増大と、規制緩和による各種の運賃割引が需要を拡大していることによると思われる。

(国際貨物輸送)
 国際貨物輸送は、対ドル為替レートが円安傾向を強めている中で、第3四半期まで輸出は好調に、輸入も堅調に推移した。特に、航空の輸出は、20〜30%の大きな伸びを続けている。
 しかしながら、最近、貿易相手としてウェイトの高いアジア地域の経済が混迷化しており、今後、国際貨物輸送にも影響が顕れてくるものと思われる。

(国際旅客輸送)
 国際旅客輸送について、出国日本人数は、円安の影響による買い物、滞在費等の割高感に加え、旅行先として大きなウェイトを占めていた香港の落ち込みが響いて伸びが鈍化し、9月以降月間での対前年比が減少するなど、出国日本人数の伸びにかげりが見られる。
 入国外客数は、円安による我が国観光の割安感から順調に増加してきている。しかしながら、訪日客の多い韓国が経済停滞から海外旅行の自粛を図るなど、アジア地域の経済の低迷が、今後、訪日外客数にも影響してくるものと思われる。