運輸経済月例報告 今月のトピックス 運輸経済月例報告 平成9年11月のトピックス



  国内石油輸送の最近の動向について  

 内航タンカー及び鉄道による輸送は減少傾向
 石油精製・販売事業の輸送コスト削減の動き急  

 平成8年4月の「石油製品の安定的かつ効率的な供給のための関係法律の整備等に関する法律(石油関連整備法)」の施行及び同3月の「特定石油輸入暫定措置法(特石法)」の廃止により石油製品輸入が自由化され、競争が激化したこと等から、石油精製・販売事業者(以下「元売事業者」)が、コスト削減の一環として石油輸送の合理化を急激に進めている。このため、内航タンカー及びJR貨物等の石油製品輸送に影響が顕れてきている。

(石油製品輸送の動向)
 石油製品の国内輸送のシェア(平成8年度:トンベース)は、内航タンカーが37.7%、自動車が59.4%、JR貨物が2.9%となっている。近年の動向を見ると、対前年度比で、内航タンカーはそれまでの順調な増加基調から7年度以降減少に転じ、JR貨物は安定した輸送量を確保してきたが、8年度に減少した。この傾向は、9年度においても続いており、石油製品(燃料油)の販売量が堅調に推移しているのに比べ、内航タンカー及びJR貨物の輸送量の減少が著しい。
 一方、自動車による輸送量は増加を続けている。しかしながら、自動車の石油製品輸送の平均輸送距離の推移を見ると、8年度には大幅に距離が短縮しており、内航タンカーやJR貨物がこれまで長距離輸送分野を担ってきたことを考慮すると、内航タンカー及びJR貨物の輸送量の減少分が一概に自動車輸送にそのままシフトしたとは考えられない。
 これらの輸送機関毎の石油製品輸送の動向は、元売事業者による、コスト圧縮の手段としての輸送の合理化の影響と考えられる。

(元売事業者における合理化の動向)
 合理化の中で、輸送に大きな影響を与えているのは、元売事業者間の製品の相互融通と油槽所の統廃合と考えられる。
 従来、元売事業者は、自社で精製又は輸入した石油製品を全国に展開した自社系列の油槽所に配送し、そこからガソリンスタンド等の小売事業者に配給する体制をとっていた。運輸事業者においては、内航タンカーは製油所等から臨海部の油槽所への配送を、JR貨物は臨海部から内陸部の油槽所への配送を、自動車は近距離の油槽所間及び油槽所から小売事業者への配送を主に担当してきていた。この場合、ネットワークを構成する小規模の油槽所の維持及び輸送のためのコストが、元売事業者にとっての負担となっていた。
 このため、競争の激化に伴い、小規模油槽所を廃止し近隣の油槽所に統合するとともに、元売事業者間の提携により油槽所の直近の製油所等から製品を相互に融通することにより、元売事業者間で交錯していた製品輸送を合理化し、コスト削減を図る動きが急激に進行してきた。
 これによって、内航タンカーやJR貨物への輸送需要が減少してきており、航路数の減少、石油専用列車数の減少が生じているものである。

 なお、この合理化の動きは今後ますます加速されるものと思われ、運輸事業にとっても一層大きな影響が生じるものと思われる。