運輸経済月例報告 今月のトピックス 運輸経済月例報告 平成9年12月のトピックス



  平成9年の国内輸送の動向  

 ・貨物輸送は、1〜3月は増加、4月以降は減少傾向、11月以降大きく減少
 ・旅客輸送は、航空を除いて低調が続く  

 平成9年の我が国経済は、1〜3月は、消費税率引き上げを前にした駆け込み需要の発生により生産、消費とも活発であった。4月以降は、この反動により消費の冷え込みがみられたが、生産は円安を受けて好調な輸出に支えられたこともあり高い水準を維持していた。しかしながら、11月以降には、7月以降反動減から立ち直りつつあった消費支出が、経済の先行きに対する不透明感から再び冷え込んだことに加え、在庫過剰及び設備投資の伸びの鈍化から生産が調整局面に入り、生産、消費の動向を示す各指標とも減少に転じた。
 このような経済状況を受けて、国内貨物輸送、旅客輸送とも、航空を除いて4月以降総じて低調に推移している。

(貨物輸送)
 平成9年の国内貨物輸送は、対前年比で、航空、特積トラックが増加したものの、内航貨物船が横這い、一般トラック、JR貨物が減少した。
 月別に見ると、年間を通じて増加傾向にあった航空を除く各輸送機関は、この間の生産、消費の影響を受けた変化を示しており、駆け込み需要で荷動きが活発であった1〜3月はJR貨物を除いて大幅な増加、4月以降はその反動で減少ないし横這いに転じ、11月以降は消費の冷え込みに加えた生産の減少により大幅減となった。
 JR貨物は、他の輸送機関が増加した1〜3月にも減少となり、年間を通じて減少傾向を示した。コンテナは好調を維持したものの、車扱が大幅な減少を続けたことによる。

 特積トラックは、1〜3月に大幅に増加し、4月に減少したものの、9月までは堅調に推移したが、10月以降減少に転じ、11月には過去最大の減少となった。

 一般トラックは、消費の低迷を受けて4月以降減少傾向にあった上に、鉱工業生産が落ち込んだため11月以降は大幅減となった。

 内航海運は、他の輸送機関に比べ消費動向の影響を受けることが少なく、4月以降も増加していたが、貨物船は、6月から減少基調となり、鉱工業生産が落ち込んだ11月以降大幅減となった。また、油送船は、油輸送の合理化の影響もあり、年間を通じて減少した。

 航空は、年間を通じて増加したものの、秋以降は増加幅が縮小してきている。

(旅客輸送)
 平成9年の国内旅客輸送は、航空以外は減少した。
 月別に見ても、年間を通じて増加した航空を除いては、総じて低調な推移であった(鉄道(JR及び民鉄)の3月の大幅増は、4月の消費税率引き上げに伴う運賃改定を前にした先買い需要による見かけ上の増である。)。
 これは、消費の低迷が「出控え」として運輸に影響を及ぼしているものと考えられる。
 JRは、新幹線が秋田新幹線(3月22日開業)及び北陸新幹線高崎・長野間(10月1日開業)の新線開業の効果等で増加傾向にあった他は、先買い需要の反動減から回復していない。

 民鉄も、JRと同様な傾向であるが、減少幅はJRより大きい。

 バス(東京)は、臨海新都心に関連した新路線の好調等により、4月以降減少から横這いに転じたが、10月以降再び減少となった。

 タクシー(東京)は、景気停滞の影響を受けて減少傾向に歯止めがかからずにおり、実車率も過去最低のレベルを続けている。

 航空は、年間を通じて好調に推移している。これは、幅運賃制、事前購入割引等による需要喚起に加え、東京国際空港(羽田)の新C滑走路の供用開始により、7月から20便の増便が行われたことによるものと思われる。