運輸経済月例報告 今月のトピックス 運輸経済月例報告 平成9年5月のトピックス



  最近の大都市における民鉄輸送の動向  

 低調続く、特に定期旅客の減少が顕著
 大都市の都心部への流入人口頭打ち  

 首都圏及び近畿圏の民鉄輸送量は、平成3年度までは順調に増加を続けてきたが、4年度以降は、減少傾向を示しており、特に定期旅客の減少が顕著になっている。
 この要因としては、経済成長の安定化に伴い、大都市における通勤旅客輸送需要が頭打ちになったこと、及び、勤務日数の減少傾向に伴う旅客の定期離れ等に加え、就学年齢人口の減少により通学学生数が減少していることが考えられる。

(大都市における都心部への流入人口)

 平成7年の国勢調査によれば、2年調査に比べ、首都圏及び近畿圏の人口は増加を続けているものの、東京都区部及び大阪市の昼間人口の伸びは、各々0.9%減、0.1%増となっており、それまでの増加傾向から頭打ち状態となった。これは、雇用者数の伸びが4年から頭打ち状態にあること及び学生数が減少傾向にあることによるものと思われる。このため、大都市の輸送機関にとって最大の輸送需要である周辺地域から都心部への通勤・通学等の流入人口も2.1%、0.9%の微増にとどまっている。
 これは、首都圏、近畿圏の民鉄のピーク時輸送人員がいずれも4年度以降減少傾向を示していることからも裏付けられよう。

(大定期旅客の減少)

 民鉄輸送量の動向をみると、特に定期旅客の減少が目立っている。これには、週休2日の浸透による通勤者の勤務日数の減少等から、定期券購入の経済的優位度が下がってきていることが影響しているものと考えられ、月間平均勤務日数の増減と民鉄輸送に占める定期旅客比率は、ほぼ一致した傾向を示している。また、就学年齢人口は毎年着実に減少しており、これによる通学定期旅客の減少が影響している。
 なお、平成8年には定期旅客比率が大幅に減少しているが、これは、7年9月の運賃改定時に定期券割引率の引き下げが行われたことが影響していると考えられる。

(JRとの比較)

 大都市圏の鉄道輸送に関しては、民鉄の輸送量は減少傾向にあるが、JRの輸送量は定期、定期外とも僅かながら増加している。JRにおいても、通学定期は減少傾向にあり、通勤定期の増加がこの減少を上回っていることによる。
 首都圏のJRの定期輸送をみると、都市化の進んだ旧国電区間の放射状の線区は横這いとなっており、これまであまり沿線開発が進行していなかった線区での増加が大きいために、全体での増加を維持していることによる。これは、首都圏における都心部への通勤・通学の流入人口の変化を発生地域別にみた場合に、茨城県等の北関東地域は大幅に増加、埼玉県、千葉県は増加となっているのに対し、神奈川県は横這い、東京都下が減少となっていることからも裏付けられる。