運輸経済月例報告 今月のトピックス 運輸経済月例報告 平成10年12月のトピックス



  最近の最近の営業倉庫の動向について  
  営業用普通倉庫の保管残高が急激に減少  
  生産調整による入庫高の減少等を反映  

 運輸経済月例報告のデータ(営業用普通倉庫21社統計)によれば、営業用普通倉庫の月末保管残高は、対前年同月比で平成8年7月から増加傾向が続いていたが、10年9月以降減少に転じた。
 この間において、入庫高は、10年1月から減少を続けており、1〜8月までの間の保管残高の増加は、米をはじめとする農水産品の滞貨と、保管残高の3分の2を占める工業製品の在庫が、消費の低迷及び設備投資の落ち込み等により増加していたことによるものと考えられる。また、9月以降の保管残高の減少は、生産調整による工業製品の在庫圧縮が進んできたこと等によるものと考えられる。
 乗用車保有台数においては、小型車が減少、これに代わって普通車及び軽自動車が増加しており、保有台数に占める小型車のシェアが縮小してきている。
 自動車の販売台数を見ると、消費税率の改定があった9年4月から対前年比で減少傾向が続いていたが、軽乗用車については、規格改定が実施された10年10月から大幅な増加となった。

 [工業生産と営業倉庫の実績]
 営業倉庫に保管される貨物のうち、工業製品についての保管残高と鉱工業生産指数の四半期別の対前年同期比の推移を比較した(図1)。
 工業製品の保管残高は、鉱工業生産指数の増減のカーブにやや遅れて増減している。試みに双方のデータを2四半期分(半年分)ずらして重ねると、増減カーブがほぼ一致してくる。最近では、10年第1四半期をピークに工業製品の保管残高のカーブが急激に落ち込んでいるが、これは、9年第3四半期からの生産指数の落ち込みに対応するものであり、生産調整の進展を反映しているといえよう。
 一方、工業製品の入庫高と、鉱工業生産指数の推移を比較すると(図2)、両者のカーブはほぼ一致しており、最近では9年第4四半期から入庫高の減少が生じている。


 [家計消費と営業倉庫の実績]
 営業倉庫に保管される工業製品の出庫高及び保管残高と家計消費のうちの財(商品)に対する支出の推移を比較した(図3)。
 長期的には、消費の増減は、出庫高とは並行的な関係、保管残高の増減とは相補的な関係があるといえようが、8年から9年には、消費と出庫が同じペースで増減を繰り返している中で保管残高が一方的に増加しており、消費税率の変更を前にした駆け込み需要に対応した工業生産の拡大と、その後の消費の低迷を反映しているものと考えられる。

 [営業倉庫の事業活動]
 営業倉庫の事業活動を示す指標の一つとして、倉庫の入出庫量と保管残高の比をとった回転率が使われている。普通倉庫の貨物を、農水産品、工業用原材料、工業製品に分けて各々の回転率の推移をみた(図4)。
 倉庫貨物全体の回転率は、7年以降一貫して低下傾向にあるが、これを品種別に見ると、米をはじめとした穀類の滞貨による農水産品の回転率の大幅な低下の影響が大きい。工業製品は、9年以降の保管残高の増加を受けて、ゆるやかな低下傾向を示しており、工業用原材料には、大きな変化が見られない。
 なお、6年の農水産品の回転率の大幅な上昇は、米の緊急輸入による入出庫の増加の影響である。
 営業倉庫は、近年、単なる保管・貯蔵施設から、貨物に関する情報管理、流通加工等の物流のトータルマネージメント拠点としての性格を強めており、生産、消費等の経済活動の動きに、より敏感になってきている。
 最近の倉庫の回転率の低下は、景気低迷により保管残高が大幅に増加してきたことの影響と考えられ、10年後半からの保管残高の大幅な減少により、回転率も上昇傾向にある。しかしながら、この保管残高の減少は、消費及び設備投資の回復による出庫高の増加ではなく、生産調整の進行による入庫高の減少によるものと考えられ、回転率の上昇のテンポも緩やかなものとなっている。倉庫の入出庫及び保管残高のバランスが適正な状態になるためには、今後、各種経済対策等が奏功し、我が国経済が早期に自立的回復軌道に入ることが望まれる。

(参考)
「営業倉庫」:倉庫業法による許可を受けた者(倉庫業者)が他者から物品を預かり、保管する倉庫。自己の貨物を保管する倉庫は「自家用倉庫」。
「普通倉庫」:普通物品を保管する倉庫。「冷蔵倉庫」及び「水面倉庫」以外の倉庫。
「回 転 率」:倉庫事業の稼働状況を示す指標。月間の入庫量と出庫量の和を、前月と当月の月末保管残高の和で除したもの。図4では各四半期の月間加重平均値を用いた。

倉庫業(21社)の月間平均保管残高の品目別割合(平成10年)