運輸経済月例報告 今月のトピックス 運輸経済月例報告 平成10年3月のトピックス



  九州地域への訪日外客の最近の動向  
  韓国からの来訪客数が激減   

 韓国、台湾等の近隣アジア諸国は、近年の経済発展等に伴い国際観光が盛んになっており、九州地域は、大規模なテーマパーク等の観光資源が豊富であり、地理的に近いことから、国際観光の目的地として人気が高く、アジア諸国からの来訪客が増加していた。しかしながら、昨年来アジア地域の経済が低迷する中で、韓国からの来訪客が減少しており、九州地域の観光への影響が生じてきている。

 九州地域の空港・港湾(下関港を含む)における入国外客についてみてみると(平成8年までのデータ)、我が国全体の入国外客の国籍別構成比に比べ、韓国、台湾からの来訪者が圧倒的に多く、平成8年には、韓国が55%、台湾が26%となっており、九州地域の国際観光は、これらアジア諸国への依存度が高い。また、九州地域への入国外客数は、近年増加してきているが、特に台湾からの来訪者の伸びが大きい。このため、九州地域に入国した外客数は、全国の約10%であるが、国籍別にみると、韓国からでは全国の18%、台湾からでは同14%が九州地域の空港・港湾から入国している。

 平成9年以降の韓国と台湾からの我が国への来訪客数をみると、韓国は、9年10月までは、概ね増加を続けていたが、11月からのウォン安を契機とした景気後退による海外渡航自粛ムードの高まりにより、12月以降大幅な減少に転じた。一方、台湾からの来訪客数は、概ね全来訪客数の伸びを上回る増加を続けており、1月には、台湾の休暇である春節(旧正月)が前年の2月から本年は1月となったことにより大幅増となった。しかしながら、2月には、春節の反動減に加えて、台湾での航空機事故の影響等から減少しており、3月以降も回復していないものと思われる。

 九州地域における入国外客数の最近の動向をみると、9年11月までは安定して増加傾向を続けていたが、12月から大幅な減少に転じており、韓国からの訪日客数の大幅な減少によるものと思われる。

 九州地域と韓国とを結ぶ旅客船の乗客数は、韓国からの来訪客数の推移と同様に、9年12月から減少に転じている。しかしながら、10年2月以降は、韓国ウォンの対円為替レートが安くなったことによる韓国観光の割安感から、日本人の訪韓客が増加したことにより、減少幅が縮小してきている。
 観光事業に関しても、これまで韓国からの来訪客を多く受け入れてきた温泉地やテーマパーク等に影響が生じていると考えられる。例えば、早くから韓国からの観光客誘致を行ってきた別府温泉のホテルでは、 10年1月以降の韓国人宿泊客数が前年比で数パーセントにまで激減している。このため、これらの観光施設では、台湾・香港等からの観光客誘致の動きを強める動きがみられる。