運輸経済月例報告 今月のトピックス 運輸経済月例報告 平成10年6月のトピックス



  最近の高速バスの輸送動向  
  高速道路網の発達に伴い国民の足として定着  
  低廉な運賃が評価され、概ね好調な路線が多い  

 全国で営業用バスの輸送量の減少が続く中、運輸経済月例報告のデータによれば、最近の首都圏−近畿圏の高速バス輸送が対前年同月比で概ねプラスを維持するなど、高速バス部門の健闘が目立っている。
 高速バス(運行系統キロの2分の1以上で高速道路を利用する路線バス)は、高速道路の伸長に伴い、ネットワークの拡充が進み、平成8年度末現在で全国で1,420系統が運行されるなど、国民の足として定着してきている。
 これは、高速バスが、@鉄道、航空に比べ低廉な運賃であること、A車両のグレードアップによりゆとりある座席空間となったこと、B定時性が確保され、輸送機関としての信頼性が向上したこと、C夜行便にあっては、時間の有効活用が図れること等の事情から、利用者に受け入れられているものと考えられる。最近においては、長引く景気低迷下にあって、運賃面のメリット等が評価され、輸送実績の伸びている路線が多いが、一方、他の交通機関との競合等により伸び悩み又は減少している路線もある。また、近年の傾向として、300q以上の長距離の系統は、ネットワークがほぼ完成状態にあり系統数の増減がみられないが、都市間中距離輸送を担う300q未満の系統数は増加を続けている。
 以下、特色を有する高速バス路線の最近における輸送実績の推移等をみてみる。
(1) 東京(新宿)−福岡
 日本一の長距離路線(1,137q)であり、航空、鉄道と競合している。
 所要時間は長いものの、夜行便で時間の有効活用が図れること、運賃が鉄道の約6割、航空の約半額と低廉であることから、学生、帰省客等を中心に、輸送人員は安定的に推移している。
(2) 東京(新宿)−仙台
 昼行便であることから、鉄道との競合の影響を特に受けやすい。
 輸送人員は、東北新幹線の輸送力増強の影響から6〜8年度は不振であったが、9年度には、低廉な運賃が評価されたこと及び新宿駅南口に直結した新しい高速バスターミナルの開設等により急激に需要が回復した。
(3) 東京(新宿)−秋田
 夜行便で時間の有効活用は図れるものの、鉄道と競合関係にある。
 輸送人員は、6〜8年度まで順調に増加してきたが、9年3月の秋田新幹線開業の影響を受けて、9年度には大幅に減少し、5年度のレベルまで落ち込んだ。
(4) 東京−つくば
 東京と近郊拠点都市を結ぶ路線で、通勤や出張等に利用される。高速バスの中では年間輸送人員が最も多く、運行便数も最も多い。
 運賃は、鉄道と路線バスを乗り継いだ金額より安く設定され、また、所要時間は、下り便が1時間05分、上り便が1時間50分に設定されている。このため、下り便は運賃、所要時間とも鉄道より好条件であることから、順調に増加しているものの、上り便は、首都高速の渋滞の影響を受けて定時性の確保が難しいことから、輸送人員も微増にとどまっている。
(5) 福岡−宮崎、福岡−鹿児島
 7年7月に人吉〜えびの間が供用開始され九州自動車道が全通したことから、利便性の向上が図られたが、鉄道との競争が激しい。
 所要時間は、鉄道に比べ宮崎では約1時間30分短く、鹿児島ではほぼ同じに設定され、運賃は、それぞれ鉄道の約6割となっており、鉄道より好条件となっている。また、福岡の中心地である天神地区を発着地としていることから、近年天神地区周辺に相次いでオープンした大規模商業施設等の集客効果もあって、輸送人員が順調に増加している。

 今後、競合する交通機関との関係で高速バスの利点を更に発揮するためには、(ア)需要に見合った路線の再編成、 (イ)利用しやすいバスターミナルの整備、(エ)車内の快適性の一層の向上、(オ)利用者へのPRの工夫等を更に進める必要がある。