運輸経済月例報告 今月のトピックス 運輸経済月例報告 平成11年1月のトピックス



  交通関係の家計支出の最近の動向  
  平成10年の交通費・旅行等支出は前年比で減少  
  自動車維持費も燃料価格の低下等により減少  

 総務庁の平成10年の家計調査速報に基づき、交通関係の家計支出の最近の動向について分析した。
 平成10年においては、長引く景気低迷等により消費マインドが冷え込み、家計総支出が減少する中で、交通費は、航空の僅かな増加の他は、いずれの交通機関も対前年比で減少となった。また、ガソリン等の燃料価格の低下等により、自動車維持費も減少した。宿泊及びパック旅行(以下「旅行等」という。)に対する支出についても、国内観光、海外旅行等の減少及びパック旅行の価格低下等により減少となった。

 [家計支出における交通費等]
 平成10年における家計支出をみると(図1参照)、交通費は、1ヶ月当たり7千4百円で、総支出の2.2%となっている。同様に、自動車関係費(自動車購入費及び自動車維持費をいう。)は、1万9千5百円で5.9%、旅行等は、8千円で2.4%であった。平成2年と10年で家計支出における費目別シェアを比較すると、交通費は横ばい、自動車関係費及び旅行等は増加となっている。
 なお、家計支出の他の主要費目のシェアを比較すると、被服・履物、食料、教育が減少、住居費、保健医療、通信が増加している。
(注) 旅行等への支出については、交通費、宿泊費、パック旅行費のほか、旅行前の支度費、 旅行先での飲食費、入場料、土産購入費等を含めて広義にとらえられる(運輸省の平成6年調査によれば、1人1回当たり平均旅行費用は、国内旅行51,100円、海外旅行547,200円)が、ここでは、総務庁「家計調査報告」の区分に基づき狭義にとらえている。


 [交通費等に対する家計支出の推移]
 家計支出(名目)の対前年比の推移をみると(図2参照)、家計総支出は、6年以降減少傾向にあり、9年には増加したものの10年には再び減少に転じた。交通費は、8年には鉄道に対する支出増等により4年ぶりに増加に転じたものの、10年には再び減少となった。旅行等も、交通費と同様、8年、9年と2年連続して増加した後、減少に転じた。自動車維持費は、燃料価格が低下傾向にあること等から、7年以降4年連続して減少している。
 交通費を項目別に見ると(図3参照)、バス及びタクシーは減少傾向が続いており、航空はほぼ横ばいとなっている。鉄道は、運賃改定の影響等により8年、9年に増加した後、10年は減少した。
 最近の家計支出の動向を四半期別にみると(図4参照)、家計総支出は9年第4四半期から減少が続いており、10年第4四半期には減少幅が増大した。交通費は、9年第4四半期までは増加基調であったが、10年には減少基調に転じた。旅行等は、景気低迷による消費の冷え込みが顕著になった9年第4四半期に大幅な減少に転じたが、10年第4四半期にはその反動もあり増加となった。また、自動車維持費は減少基調で推移している。

 [都市別の交通費等に対する家計支出の特色]
 都市別に交通費等に対する支出の特色をみると(図5参照)、東京(23区)は、鉄道網が充実していることから、鉄道に対する支出のウェイトが高く、また、旅行等の支出も多い。仙台市は、鉄道運賃及びバスへの支出が比較的多く、地下鉄とバスの共用カードの普及等により日常交通での利用が多いことがうかがえる。世帯当たりの自家用乗用車保有台数が最も多い群馬県にある前橋市は、自動車維持費のウェイトが圧倒的に高く、公共交通機関への支出が極めて少ない。金沢市は、自動車維持費のウェイトは高いものの、バスへの支出も比較的多く、本年3月のオムニバスタウンへの指定を契機に、さらに市民の足としてバスの活性化が図られることが期待される。