運輸経済月例報告 平成11年2月のトピックス



  我が国をめぐる出入国者数の最近の動向
  
  平成10年の出国日本人数は、景気低迷等により前年比5.9%減と7年ぶりのマイナス  
  同年の訪日外客数は、韓国からの大幅減等により前年比2.7%減  
 国際観光振興会(JNTO)が本年4月に公表した平成10年の訪日外客数・出国日本人数統計(確定値)等に基づき、我が国をめぐる出入国者数の最近の動向についてまとめてみた。
 <出国日本人数の動向>
 10年の出国日本人数は15,806千人であり、前年比5.9%減と7年ぶりのマイナスとなった。昭和39年の海外渡航自由化以降、出国日本人の年間総数が前年比でマイナスとなったのは、第2次石油危機のあった昭和55年(3.2%減)、湾岸戦争のあった平成3年(3.3%減)に続いて3回目であるが、減少幅は10年が最大となった。
 我が国経済は、9年第4四半期以降、5四半期連続してマイナス成長となり、極めて厳しい状況にあるが、出国日本人数も9年9月から16ヶ月連続で前年同月比マイナスが続いた。出国日本人の約8割は観光目的の旅行者であるが、9年秋の金融機関の相次ぐ経営破綻等に起因する消費マインドの冷え込み、9年秋からの円安の進行等により、海外旅行ブームが下火になったことが影響している。
 10年の動向を渡航先別にみると、ウォン安により買物・グルメ等を志向する観光客が増加した韓国(前年比18.5%増)、サッカーのワールドカップが開催されたフランス(4.3%増)、バーツ安に加えビーチリゾート人気が高まったタイ(6.7%増)といった一部の国を除き、軒並み減少となった。特に、中国返還に伴うブームが沈静化した香港(28.7%減)、治安悪化により一部の地域を除き観光旅行延期勧告が出ているインドネシア(35.0%減)、買物志向の観光客が減少したシンガポール(20.5%減)等で大幅減となった。
 我が国の旅行業者主要50社が取扱った海外ブランド商品(主催旅行)の取扱人員当たりの取扱額の推移をみると、減少傾向にあるが、これは、韓国等の近距離ツアー(いわゆる「安・近・短」ツアー)の人気の高まり、国際線の包括旅行運賃の下限撤廃による値下げ競争の進行等による。
 なお、11年に入り、出国日本人数は韓国、中国、タイ等のアジア地域を中心に増加し、11年1月から前年同月比でプラスに転じている。


 <訪日外客数の動向>
 10年の訪日外客数は、4,106千人であり、前年比2.7%減と阪神大震災、オウム事件等で減少した7年以来3年ぶりのマイナスとなった。
 10年の動向を国籍(地域)別にみると、訪日客の年間総数の約四分の一を占めていた韓国からの訪日客が、同国の通貨危機による経済不振を背景に9年12月から大幅減となり、前年比28.3%減の724千人となった。台湾からの訪日客は、10年2月末の台湾での中華航空機事故の影響により上半期は小幅減となったが、下半期は増加に転じ、2.8%増の843千人と、韓国を抜いてトップの訪日客数となった。香港からの訪日客は、円安傾向、訪香港日本人数の大幅減に伴い香港・日本間の航空座席に余裕が生じたこと等により34.3%増の357千人となり、ここ3年間で4.3倍に増加した。このほかアジアでは、9年夏からの相次ぐ通貨・経済危機の影響により、インドネシア(前年比44.4%減)、タイ(25.3%減)、マレーシア(23.8%減)等からの訪日客が大幅減となった。
 これに対して、欧州からの訪日客は、円安傾向、10年2月の長野冬季オリンピックの開催等により、5.9%増の564千人と好調であり、米州からの訪日客も6.1%増の828千人と好調であった。このほか国内経済の好況が続くオーストラリアからの訪日客が21.9%増の124千人となり、3年連続で二桁の伸びとなった。
 なお、11年に入り、訪日外客数は、韓国、中国等からの訪日客数が増加し、全体的に回復の兆しがみられる。
 訪日外客数は、世界各国の受入客数と比較して極めて低い水準にあり、かつ、出国日本人数の約四分の一という不均衡な状況にある。このため運輸省としては、8年4月に「ウエルカムプラン21」を策定し、概ね17年までに訪日外客数を7,000千人に倍増させることを目指しており、さらに、9年6月には外客誘致法を制定した。これらに基づき、国際観光テーマ地区の整備、旅行費用の低廉化、接遇の向上、重点的な観光宣伝の実施、次世代観光情報基盤の整備、ワールドカップの開催を契機とした観光宣伝、受入体制整備の促進等の諸施策を関係方面との連携の下に推進中であり、今後の国際交流の一層の拡大が期待される。


図2 出国日本人数・訪日外客数の国(地域)別内訳及び増減状況
  出国日本人数 対前年増減 訪日外客数 対前年増減
H10実績 シェア H10/H9 H9/H8 H8/H7 H10実績 シェア H10/H9 H9/H8 H8/H7

 

 

韓    国
中    国
台    湾
香    港
タ     イ
インドネシア
マレーシア
シンガポール
その他
千人
1,899
1,002
766
651
778
286
234
556
641

12.0
6.3
4.8
4.1
4.9
1.8
1.5
3.5
4.1

+18.5
▲3.7
▲6.9
▲28.7
+6.7
▲35.0
▲6.2
▲20.5
▲12.7

+11.4
+2.1
▲1.4
▲39.5
+5.1
+14.7
+1.8
▲5.4
+12.6

▲8.2
+17.7
+1.4
+30.1
+15.0
+27.4
+6.7
+1.1
+13.8
千人
724
267
843
357
45
27
41
59
176

17.6
6.5
20.5
8.7
1.1
0.7
1.0
1.4
4.3

▲28.3
+2.5
+2.8
+34.3
▲25.3
▲44.4
▲23.8
▲4.2
+2.1

+1.6
+7.9
+13.9
+56.2
▲6.4
+11.9
+4.5
+20.2
+18.2

+13.8
+9.4
+24.5
+73.8
+18.8
+22.4
+8.5
+25.4
+0.0
6,813 43.1 ▲5.8 ▲3.8 +9.6 2,539 61.8 ▲7.8 +10.9 +18.5

アメリカ合衆国
カ ナ ダ
その他
4,951
350
122
31.3
2.2
0.8
▲7.9
▲5.3
+1.5
+3.7
+6.1
▲1.3
+9.1
+10.0
+12.7
667
107
55
16.2
2.6
1.3
+7.2
+13.5
▲15.7
+5.9
+10.7
▲15.9
+8.7
+13.0
▲3.9
5,423 34.3 ▲7.6 +3.8 +9.2 828 20.2 +6.1 +4.2 +7.7

 
イギリス
ド イ ツ
フランス
イタリア
その他
399
264
371
489
705
2.5
1.7
2.3
3.1
4.5
▲2.4
▲0.6
+4.3
▲3.4
+7.9
+1.9
+8.6
+16.1
+6.0
+8.8
+2.0
+4.6
▲7.4
+30.3
+14.9
182
86
67
31
199
4.4
2.1
1.6
0.7
4.8
+9.7
+4.4
+8.3
▲0.6
+3.6
+17.2
+8.6
+7.8
+8.0
+12.8
+11.1
+11.2
+6.2
+14.3
+7.6
2,228 14.1 +1.7 +7.8 +9.9 564 13.7 +5.9 +12.6 +9.4



オーストラリア

その他
727

616
4.6

3.9
▲6.7

▲16.2
+0.7

+1.7
+4.0

+7.0
124

50
3.0

1.2
+21.9

+1.9
+14.6

+13.5
+14.8

▲4.3
1,343 8.5 ▲11.3 +1.2 +5.4 174 4.2 +15.3 +14.3 +7.7
総  計 15,806 100.0 ▲5.9 +0.6 +9.1 4,106 100.0 ▲2.7 +9.9 +14.7



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