小笠原諸島振興開発審議会(第72回)会議録

 

日 時  平成15年5月30日(金)午後1時30分

会 場  中央合同庁舎3号館 国土交通省 11階 特別会議室

議 題  (1)平成15年度小笠原諸島振興開発実施計画について

     (2)小笠原諸島の振興開発について

     (3)その他

出席者  会     長  岡 本 伸 之
     会 長 代 理  秋 本 敏 文
     委     員  赤保谷 明 正
              小豆畑   孝
              伊 中 義 明
              岩 崎 美紀子
              台   たまえ
              沼 田 早 苗
              山 下 生比古
              宮 澤 昭 一
              池 田   望

     幹     事  澤 井 英 一 国土交通省都市・地域整備局長
              児 山 貴 一 小笠原総合事務所長

     国 土 交 通 省  中 馬 弘 毅 国土交通副大臣
              平 田 憲一郎 国土交通大臣官房審議官(都市・地域整備局担当)
              石 原   孝 都市・地域整備局総務課長
              山 口 悦 弘 都市・地域整備局特別地域振興課長

     東  京  都  赤 星 經 昭 総務局長
              高 橋 敏 夫 総務局多摩島しょ振興担当部長

(参   考)

〜当日配布資料〜
資 料 1  小笠原諸島振興開発審議会委員及び幹事名簿(PDF形式;10KB

資 料 2  平成15年度小笠原諸島振興開発実施計画(PDF形式;751KB)
資料3−1  小笠原諸島振興開発事業のあり方調査−調査報告書−
        はじめに・第1章 地域特性(PDF形式;919KB)
        第2章 これまでの事業の成果(PDF形式;1.43MB)
        第3章 社会経済環境の変化と小笠原諸島振興開発事業(PDF形式;157KB)
        第4章 今後の振興開発事業のあり方(PDF形式;427KB)
        参考資料(PDF形式;2.32MB)
資料3−2  小笠原諸島振興開発特別措置法の改正・延長に関する要望(PDF形式;20KB)
資 料 4  小笠原諸島振興開発審議会における議論の論点整理(PDF形式;28KB)

参考資料1  小笠原諸島の主要指標(PDF形式;21KB)
参考資料2  新小笠原諸島振興開発計画(PDF形式;231KB)
参考資料3  法律延長に係る国会における主な議論(抜粋)(PDF形式;32KB)

 

 

< 議 事 詳 細 >

 

○岡本会長 本日は委員13名のうち10名のご出席を賜りましたので、委員の過半数の出席をいただきました。定足数に達しておりますので、ただいまから小笠原諸島振興開発審議会を開催いたします。

 

副大臣挨拶

 

○岡本会長 議事に先立ちまして、国土交通省の中馬副大臣がお見えでございます。ご挨拶を賜りたいと存じます。

○中馬副大臣 国土交通副大臣の中馬弘毅でございます。

  本日、第72回の小笠原諸島振興開発審議会が開催されるに当たりまして、一言ご挨拶を申し上げます。

  それぞれ、お忙しい中、こうして遠方よりご出席いただきまして、誠にありがとうございました。

  さて、小笠原諸島は、今年の6月に昭和43年の本土復帰から35周年を迎えることになります。小笠原諸島は、地理的、自然的、歴史的等の諸事情による特殊な条件下にありますことから、本土復帰以来、特別措置法のもと、国、都、村が一体となって基盤施設の整備などを着実に推進し、島民の生活の安定と地域の自立的発展に相応の成果を上げてまいりましたが、いまだ経済面あるいは生活面における諸格差等の解決すべき課題を抱えております。

  このような状況の中で、21世紀を迎えまして、小笠原諸島の振興発展をより効果的に実現させるには、これまで35年間の施策の成果を踏まえまして、時代の流れに即した新たな視点からの施策が必要であると思います。と申しますのも、最近では地方自治体のあり方、地方分権が一括法等でかなり進んでまいりましたし、あるいは市町村合併等の動きも活発でございます。それぞれの施策や制度が変わってきてもおります。そういう中でございますので、ひとつそういう観点でご審議を願いたいと思います。

  小笠原諸島が有する貴重な自然環境は地域振興に当たっての固有の資源であります。これを小笠原諸島の発展可能性と捉えまして、最大限に活用し、交流人口の拡大を図ることによりまして島内経済の自立的発展を実現していくことが必要であると考えております。

  ご承知のとおり、小笠原諸島振興開発特別措置法は平成15年度が最終年度でありまして、来年度以降の小笠原諸島の振興開発施策の展開について検討しなければならない重要な段階にあります。本日の審議会は、これまでの議論を踏まえまして、小笠原諸島の今後についてさらに議論を深めていただきたいと思います。

 我が国土交通省といたしましては、これまでの事業の成果や地域の実情を十分に検証し、本日の審議の内容を踏まえ、東京都や地元小笠原村等と連携しつつ適切に対処してまいりたいと考えておりますので、委員の皆様方におかれましては引き続きご支援を賜りますよう、お願い申し上げまして、ご挨拶といたします。

  よろしくお願いいたします。

○岡本会長 ありがとうございました。

  なお、中馬副大臣は国会開会中でございますので、ここで退席されます。

〔副大臣退席〕

 

委員等の紹介

 

○岡本会長 次に、議事に入ります前に、委員の異動がございましたので、事務局より紹介をお願いしたいと思います。

○山口課長 本審議会の事務局を担当しております国土交通省都市・地域整備局特別地域振興課長の山口でございます。

    委員の異動につきましてご報告いたします。

    稲垣勇委員が退任されまして、池田望小笠原村議会議長が就任されました。

  続きまして、幹事の異動でございますが、2名の幹事の異動がございました。お手元の資料1の右側に記載しております。

  以上でございます。

 

議  事

(1)平成15年度小笠原諸島振興開発実施計画について

 

○岡本会長 それでは、会議次第により議事を進めたいと思います。

  本日は、次第にありますように、平成15年度の小笠原諸島振興開発実施計画について、また小笠原諸島の今後のあり方についての2点に関してご議論いただきたいと思います。

  それでは、まず初めに平成15年度小笠原諸島振興開発実施計画につきまして審議いたしたく思います。

  この実施計画は、毎年度東京都が作成し、国土交通大臣の同意を得なければならないとされており、国土交通大臣は、その際、あらかじめ審議会の意見を聞くこととされております。

  それでは、事務局から説明願います。

○山口課長 それでは、お手元の資料2でございますが、15年度の小笠原諸島振興開発実施計画についてご説明申し上げます。

  この実施計画は、本年4月1日に成立しました予算をもとに、振興開発計画を実施するために必要な15年度の事業を定めるものでございます。概要を説明いたします。

  1ページに実施計画の基本方針、事業概要等の説明をしております。ここに要約して書いておりますが、実施計画につきましては、基になります新小笠原諸島振興開発計画の最終年度に当たるということでございますので、これを踏まえまして、計画に基づく事業の一定の成果が得られるようにということで、交通施設の整備、あるいは産業振興・観光振興、そして生活基盤等の整備を行うために実施計画を定めるものでございます。特に、基本方針の3段目に「特に観光については」と書いておりますが、平成17年春にテクノスーパーライナーが就航する予定でありますので、これに対応した事業を今年度行おうと考えておりまして、増加が予想される観光客への対応、また基盤施設その他を重点的に計上いたしております。

  事業概要でございますが、1ページの下の段に書いております。今言いましたように、まず交通施設整備の補助のところで港湾整備がございます。父島の二見港の岸壁改修をはじめ、安全な海上交通の確保を図る施策を実施することとしておりますが、15年度から特にTSLへの対応ということで、まず二見港の岸壁の改修を行いたいと考えております。ちなみに、16年度には防舷材の設置を行って、17年度のTSLの就航に備えたいと考えております。

  また、道路整備につきましては、生活・観光の基本となるものですから、都道、村道の整備を図りたいということでございます。詳細につきましては後ろに表がございますが、これは後ほどご説明いたします。

  次に、産業・観光振興でございます。この中でも特に今回重要なものとしては、先ほど言いました観光開発ということになろうかと思っております。来島者が増加することが予想されておりますが、その受け皿となります観光関連施設の整備をどうするかというところで、自然公園の機能を充実させていきたいということでございます。園地整備、遊歩道の整備、そして施設整備を行う際に、土地所有者の確定にあわせて土地の買収を実施する。また、観光の受け入れを行うに当たって、まだ不十分な点が多々ございます。例えば、雨が降った場合の対応もまだ不十分であるという状況でございますし、また島内の観光客に対する標識等も不十分であるということで、これに関しての調査を行う予定にしております。

  2ページを見ていただきますが、生活基盤施設等の整備でございます。生活基盤の整備はこれまで着実に行ってきましたけれども、まだまだ残された課題がございますので、今回は特にIT化への対応として情報通信基盤施設の整備を行う。具体的には情報センターを整備するということでございます。これは、情報の結節点、そして島民の方々のIT関係の共同利用の施設として使えるようにということでございます。また、母島の小中学校が建て替えの途中でございます。現在仮校舎に移転を済ませておりますので、15年度から校舎の整備を行いたいと考えております。

  2番は開発費補助金ということでソフト補助という形になりますが、病害虫の防除対策、そして診療所の運営費の補助等を行っております。

  また、各種調査のところで、先ほどの「観光」というテーマもございますが、東京都が行います自然ガイド育成モニター調査の支援をする。また、村が行われます観光宣伝手法の調査、これへの支援を行いたいと考えております。

  3ページ以降に一覧表を載せております。15年度の事業費と国費が左側にありますが、右側の「前年度比(A/B)」という欄を見ていただきますと、今年度の事業の重点化の分野がどういうところかが見えるかと思います。全体で、国費は対前年度0.97でございます。その中で交通施設整備は、先ほど説明をいたしましたけれども、TSLへの対応ということで、一の1の(1)二見港(父島)の欄が国費で3.09、岸壁改修等を実施予定ということで3倍強となっております。

  そして、道路整備の2の(2)村道改築でございますが、これが1.97です。これは扇浦地区で新しい宅地造成を行っておりますが、その関係で村道の新設等を行うということで伸び率が高くなっております。

  事業によりましては、事業が終了したものもございますので、数字としては皆減のものもございます。

  4ページの上から4行目、5の観光開発が1.42でございます。自然公園の施設整備で1.15、観光施設の調査費を新たに起こしております。

  次に三の生活基盤関係ですが、1.22でございます。これも先ほど説明いたしましたとおり、小中学校の整備を今年度から行いたいということで3.76、IT対応の情報センターの整備で1.77ということでございます。

  5ページですが、調査費、対策費等のソフトが全体で0.96ということでございまして、病害虫の研究調査、防除が、それぞれ1.00、1.08となっております。

  6ページ以降が各事業の詳細な説明でございます。これは、今説明をいたしましたとおり、どの分野に重点的に行っているかについては、「目的」のところに説明をさせていただいておりますので、ご覧おきいただきたいと思います。

  以上でございます。

○岡本会長 それでは、ただいまの平成15年度小笠原諸島振興開発実施計画につきまして、ご質問、ご意見等がございましたら、ご発言をお願いいたします。いかがでございましょうか。

 

○岡本会長 ございませんようでしたら、平成15年度小笠原諸島振興開発実施計画につきましては、適当である旨、当審議会から国土交通大臣に対して答申することといたしたいと思いますが、いかがでございましょうか。

〔「異議なし」の声あり〕

○岡本会長 ご異議ないようですので、そのように答申することといたしたいと思います。

  なお、この後の取り扱いにつきましては私に一任していただきたいと存じますが、この件についてもいかがでございましょうか。

〔「異議なし」の声あり〕

○岡本会長 それでは、そのようにしたいと思います。

 

(2)小笠原諸島の振興開発について

 

○岡本会長 続きまして、小笠原諸島の振興開発について審議いたしたいと思います。

   皆様ご案内のとおり、今年度末に小笠原諸島振興開発特別措置法が期限を迎えますが、本審議会は、16年度以降の小笠原諸島の振興開発についてどのように取り扱うべきか、国に対して意見を申し出る立場にございます。

  前回の審議会においても、21世紀の小笠原諸島の振興開発施策を考える上で、これまでの振興開発事業の進捗状況や評価の指標の資料に基づきご議論いただき、多くの貴重なご意見が出されたところでございますが、今回も引き続き委員の皆様方のご意見をお伺いし、当審議会の判断の方向性を検討したいと思います。

  それでは、東京都と事務局から資料が出されておりますので、これを説明していただいた上で皆様のご意見をいただきたいと思います。

  まずは東京都からよろしくお願いいたします。

○高橋部長 東京都の多摩島しょ振興担当部長の高橋でございます。

  それでは、お手元に配付させていただいております資料に基づきまして説明させていただきます。資料は二つございまして、資料3−1が「小笠原諸島振興開発事業のあり方調査」という冊子、もう一つは、資料3−2、A4判1枚紙で「小笠原諸島振興開発特別措置法の改正・延長に関する要望」でございます。

  まず、資料3−1、「小笠原諸島振興開発事業のあり方調査」についてでございます。

  この調査報告書は、小笠原諸島における事業計画につきまして、これまでの事業実施による成果について評価・分析を行うとともに、今後の小笠原諸島振興開発事業の基本的な考え方、施策のあり方等について幾つかの提案をとりまとめたものでございます。

  前々回の審議会におきましては、この報告書のうちアンケート調査の部分につきまして既にご説明をさせていただいておりますが、本日はこの中から事業の成果と課題に関する部分につきまして、その概要を説明させていただきます。

  まず、事業の成果でございます。恐れ入りますが、36ページをご覧願います。(1)分野別事業実績のうち@交通基盤施設について記載しております。生活・産業等あらゆる活動を支える道路、港湾などの交通基盤の整備は、事業費においても一貫して高いウエイトを占めておりまして、平成12年度までに総額約468億円の投資がなされております。父島(二見港)及び母島(沖港)での施設整備による海上交通の利便性の確保、都道及び村道整備の状況などについてまとめております。あわせて、整備状況の写真のほか、事業費の推移と父島集落部における事業実績につきまして、計画別に色分けをしてお示しをしてございます。

  次に38ページをご覧願います。A産業振興・観光開発についてでございます。ほ場、漁港などの農業、漁業の産業基盤となる施設整備、及び自然公園施設整備などの観光開発の促進のため、平成12年度までに総額約274億円の投資がなされております。漁業生産基盤としての各種共同利用施設の整備による漁業経営や漁民生活の向上、農業基盤の整備や農協施設の整備・拡充による農業の振興につきまして、また自然公園施設を中心とした観光施設整備について記載しております。

  次に40ページをご覧願います。B生活基盤施設整備でございます。住宅基盤、簡易水道、し尿処理、ごみ処理、教育、医療、福祉といった生活基盤施設につきまして、平成12年度までに総額約289億円の投資がなされております。事業費は、40ページの右下の方にございますが、計画によって重点的に整備された施設に応じて比率が変化しているということでございます。

  次に42ページをご覧願います。C防災・国土保全でございます。砂防施設の整備を中心に河川改修、地すべり防止施設の整備が行われ、平成12年度までに総額約341億円の投資がなされております。砂防施設の整備により洪水や土石流から集落を守るとともに、河川整備の実施により流路の安定を図っております。

  以上、これまでの主な事業の成果についてご説明させていただきました。

  続きまして、振興開発事業の課題の整理につきましてご説明いたします。92ページをご覧いただきたいと思います。

  これまで実施いたしました「復興事業」「振興事業」「振興開発事業」を通じて、交通基盤施設、産業振興・観光開発、生活基盤整備、防災・国土保全の各領域におきまして一定の水準目標が達成されつつあります。しかし、一方で、経済的な自立という側面から見た場合、なお経済基盤は脆弱であり、多くの課題を抱えております。このため、改めて振興開発事業の課題の整理を行っております。

  まず、包括的な課題として4点に整理をいたしました。第1の課題として「自立的な経済基盤の形成」、第2の課題として「生活環境の充実」、第3の大きな課題として「自然環境の保全」、それから、93ページになりますが、第4の課題として「社会経済環境の変化に応じた施策展開」としております。

  以上の4つの包括的な課題に続きまして、個別的に対応を必要とするものとして9つの課題を整理しております。@交通アクセスの改善、A土地の流動化、B後継者対策、受入体制の整備、C意識改革と自立、D情報通信基盤の整備、E医療・福祉・文化施設等の充実、94ページにまいりまして、F施設の老朽化への対応、G各事業間の連携・強化、H官民協調の必要性を掲げております。内容につきましては後ほどお目通しを願いたいと思います。

  次に、資料3−2、「小笠原諸島振興開発特別措置法の改正・延長に関する要望」をご覧願います。小笠原諸島振興開発特別措置法の改正・延長をお願いするに当たりまして、東京都の考えを一表にまとめたものでございます。

 小笠原諸島は、特別措置法に基づいて各種の基盤施設の整備が進められ、島民生活の安定が図られてまいりました。しかし、この資料の一番左の「振興開発事業の成果と課題」に掲げておりますように、課題も残されております。その内容は先ほど説明させていただきましたが、ここでは、交通施設、産業基盤、生活基盤の大きく3つにくくってございます。

  これらを踏まえまして、この資料の中央で今後の方向性と必要となる施策を記載してございます。内容は4つに構成しております。

  第1点目はハード事業からソフト事業への転換でございます。島内の産業構造におきましては、公共事業が占めるウエイトが非常に高く、今後は観光振興を中心としたソフト事業への転換が自立のために必要であると考えております。施策といたしましては、エコツーリズムを機軸とした島内産業の振興を図っていくことを柱に据え、エコツーリズムをきっかけとして島を訪れる観光客のニーズに応えられるよう、小笠原でとれた新鮮な素材を地元で提供していくことや、島特有の物産を用いた小笠原ならではの商品の開発を進めていくことなどが必要と考えております。

  第2点目は小笠原らしい街づくりでございます。世界的にも貴重な固有種が数多く存在する独自の生態系を保全し、豊かな自然環境を生かしながら街づくりを進めていくことが必要であると考えております。施策といたしましては、環境に配慮した景観の創出等を柱に据え、街並み形成や景観誘導によって個性ある街づくりを進めることや、自然環境の利用増進を図るために遊歩道の整備を進めること、また自然再生型の公共事業を実施するとともに、植生回復事業や固有種を保護・増殖することなどが必要と考えております。

  第3点目は、平成17年のテクノスーパーライナーの就航に向けた環境整備でございます。施策といたしましては、輸送能力の増強に応じて観光客の誘致を図っていくことを柱に据え、本年4月からのエコツーリズムの実施に加えて新たな観光ルートを開発することや、ホスピタリティを醸成すること、また宿泊施設等の受け入れ体制を整備することなどが必要となってまいります。

  第4点目は生活環境のさらなる改善でございます。島の生活基盤につきましては、復帰後の時間の経過や社会経済状況の変化に対応することが必要であると考えております。施策といたしましては、高齢化、高度情報化への対応を柱に据え、保健・医療・福祉の3機能を備えた複合施設を新たに整備することで多様なニーズに応えることや、島と本土との通信回線数の増加や高速通信のための島内外の情報通信体系を再構築することなどを考えております。

  最後に、右側の枠になりますが、こうした施策の実現に当たりまして、引き続き小笠原への特別な措置が必要であり、特別措置法の改正及び5年間の延長によりまして、自然環境の保全と観光振興の両立による自立的発展を目指すことが小笠原の将来にとって必要不可欠であると考えております。

  以上、簡単でございますが、説明を終わらせていただきます。

○岡本会長 続きまして、事務局からよろしくお願いします。

○山口課長 続きまして、お手元の資料4、「小笠原諸島振興開発審議会における議論の論点整理」というペーパーをご覧いただきたいと思います。これまでの審議会でご議論いただいた委員の方々のご意見を事務局でまとめてみました。今まで数次にわたってご議論いただいた内容を、それぞれ、できるだけその内容に即した形で列挙させていただいております。そして、矢印の下にそれをまとめた考え方という形になっております。

  まず、「(1)自立的発展に向けた取り組み」でございます。自立に向けた施策を進める中で、小笠原にしかできないこと、そういう視点から自立振興策を構築していきたいというご発言がございました。小笠原の地域経済は、いろいろな不利性を抱えているというご議論もあったわけですが、そういう状況のもとで非自立的な経済構造となっている。これでは本来の法律の目的である住民生活の安定になかなか結びつかないということで、「自立的発展」に向けた努力ということを基本的なテーマとして捉えるべきであるというご意見がありました。そういうご提案をまとめたものでございまして、「小笠原の『自立的発展』を図るため、地域の自助努力とともに、振興施策による支援をもってその実現を目指す。」というふうにまとめさせていただいております。

  (2)は「小笠原の特殊事情による不利性及び課題の克服」でございます。多くの委員の方々からご意見を頂戴しておりまして、その中の一部でございますが、地理的に離れているという遠隔性、これは極めて特別なものである。小笠原に行くのに往復6日かかる。こういうところは世界にまずないと言ってもよい状況である。それから、国内で交通アクセスが毎日確保されていない。そういったご意見がございました。

  また、生活面に目を向ければ、物価が6割高だということですが、これに対して十分な対応がなされていない。前回の審議会でもお配りしましたが、基本的な資料ということで参考資料1、「小笠原諸島の主要指標」を今回もお配りしておりますが、これを参考にしていただければと思います。

  もう一つ、旧島民の帰島促進という問題がいまだ残されている。特に旧島民の方々が高齢化してきている中でどのように対応するのかという課題がまだ残っているというご発言もございました。

  等々がございまして、特殊事情による「不利性及び課題を克服」するということが基本的なテーマとしてまだ残っているのではないかということです。

  これに関連してご説明を申し上げたいのですが、お手元に参考資料3をお配りしております。5年前の小笠原特別措置法の延長に係る国会での質疑答弁がなされたときの議事録の抜粋でございます。これをご覧いただければわかるかと思いますが、小笠原の問題にどの程度対応できているのかという一般的な質問もあったわけでございます。特にここで重要なのは、先ほど説明しました特殊事情の不利性、この特殊事情の不利性を解消しなければいけないということがある意味では特別措置法の存在の根拠であろうかと考えられますが、国会の議論の中でこの特別措置がどういう状況まで必要なのかという質問がなされて、答弁をしております。特に、小笠原の措置法は今回で35年ということになりますけれども、どれだけの効果・成果があったのか、また、各種事業をやってきたわけですけれども、その成果・効果が十分把握できているのかという指摘がなされております。衆議院の場合は1ページから2ページにそのあたりを中心に記述しておりまして、参議院においても4ページに示されております。継続が必要かどうか、その先には離島振興法や過疎法等、そういった一般法への移行ができるのか、そういう十分な検討・判断をしたかどうか、という厳しい指摘を受けておりまして、それに対して回答しております。つまり、不利性の解消の状況等を十分に把握しているのかどうかという指摘でございます。

  今回、法律を今後どのように展開していくかということを決めなければいけないわけですけれども、今回も同様にこのような指摘がなされるものと考えられますので、不利性の解消状況や本来の目的である経済面・生活面での格差の状況、そういった部分について十分議論がなされる必要があると考えております。本日のご審議の参考にしていただければと思っております。

  次に、資料を戻っていただきまして、資料4の2ページ、(3)でございます。先ほど特殊事情による不利性という観点でまとめましたけれども、この特殊事情というのはある意味で裏腹の関係にあって優位性もあるのではないかというご指摘をいただいております。それをまとめまして、「国家的・地球的役割の再評価と地域の優位性の発揮」ということでございます。

  最初に、太平洋上で漁船事故等があった場合に小笠原は大きい役割を果たすべきではないかという指摘がございます。ある意味では国におけるセキュリティといいますか、そういった国家的役割があるのではないか。また、二つ目に書いておりますが、小笠原には多くの固有種がある。日本の中でも固有の極めて特異な種が現に存在しており、これは世界にとっても非常に貴重なものであるので、世界遺産への登録も議論してはどうかというご指摘もございました。そういった意味での自然資源があるのではないか。そして三つ目として、小笠原が排他的経済水域全体の3分の1を抱えているという面、また海洋資源、海洋利用の可能性、こういった面を計画に組み入れていくべきである。こういったご意見が出されました。これをまとめまして、枠の中に書いておりますが、「この地域固有の自然環境等の有する『国家的・地球的役割』を生かし、特殊事情による優位性を発揮」という観点でまとめさせていただいております。

  (4)は「自立的社会経済構造の構築」ということでございます。東京都からの説明にもありましたけれども、小笠原の経済社会構造自体がある意味では非自立的な状況にいまなっていると認識をすれば、これを自立的な構造に持っていくための努力をしていくべきであるということで、いろいろご意見、ご提案をいただいております。観光を含めた産業振興、地産地消、観光・漁業・農業を連携させる。それから、インフラを整備するのはいいけれども、それを生かすという意味の発想がまだ弱いのではないか。それから、下の二つに書いておりますが、観光と漁業を連携させるとか、観光振興は地域づくりの総仕上げだというご意見もございまして、観光というものを一つの総合産業として捉えて、総合産業を前提としたような地域の経済社会構造を創り上げていく必要があるのではないか。まとめに書いておりますが、「観光産業等の総合的な内発的産業を中心とした『自立的経済社会構造』に転換する」というふうに意見をまとめさせていただいております。

  次のページにまいりまして、「(5)地域の自主的・主体的な島づくりの促進」でございます。基盤整備がある一定水準まで進んできた、そういう意味では相応の成果は上がってきた。しかし、残された課題の解決、整備された基盤を今後生かしていく、こういう状況に現在なっているのではないか。そのためにはまず島民が最大限の努力をしていくことが重要であるというご提案もございました。村民の気持ちやアイデアも生かし、また小笠原の人たちだけではなくて日本中のいろいろな人たちが考えられるような工夫も考えるべきではないかというご提案がございました。まとめで書いておりますが、「地域の個性と地元の創意を生かした『自主的・主体的』な島づくりの実現を図る」ということが指摘をされております。その担い手となる人材をどうやって育成するかという課題も残されております。

  (6)は「総合的・戦略的な施策の展開」ということでございます。事業実施の手法に当たる部分であろうと思っていますが、「事」を考えてから「物」を考えていくという過程でハードとソフトのあり方を検討すべきというご意見もございました。ハードとソフトをうまく総合的に行うべきだというご意見だと考えております。また、事業は総花的で満遍なくやるよりも、ポイントを絞れというご意見もございました。公共事業に関しても重点を置いていく必要があるのではないかということでございますので、まとめとしては、「合理的・効率的な振興を図るため、振興事業はもとより、地元の自主的な取り組みを含め、ハードとソフトを一体的に活用して『総合的・戦略的』に施策を展開する」というふうにまとめさせていただいております。

  次は「(7)小笠原の特性を生かした産業振興施策の展開」でございます。産業振興の直接の担い手は民間の産業ということになります。この民間の産業をどのように展開させていくべきかということでご提案をいただいておりまして、日本最大の自然の財産を持っている小笠原諸島ですので、エコツーリズムという観点から世界の中でも極めて優良な場所であるということで、質の高い観光事業が可能であろうというご意見でございます。また、観光利用と環境保全というのは従来であれば対立するものでありますけれども、この地域ではうまく連携できるのではないかというご指摘もいただいております。それをまとめまして、「小笠原の隔絶性に起因する固有の文化や希少な自然環境を優位性として活用し、『小笠原の特性』を新たな産業振興施策として創造する」というふうにまとめさせていただいております。

  次のページに今までの意見を1枚の紙にまとめさせていただいております。今後の展開として議論をまとめますと、こういう流れになるのではないかということでございます。

  まず基本的テーマは、小笠原の「自立的発展」を図るということでございます。自立的発展を図るためには、これまで施策をやってきた目的でもあります「特殊事情による不利性」の克服、これをまだやるべき部分がある。

  また、その特殊事情による課題、旧島民の方々の帰島を促進するという部分についてのご指摘もございます。

  また、この不利性を逆に「国家的・地球的役割」を生かすという観点で、今度は「特殊事情による優位性」という形で発揮するという発想をご提示いただいております。

  そういう形で地域の自立的経済を支えるためには、今後は、観光産業等の総合的な内発的な産業を興して、「自立的な経済社会構造」に転換していくという目標を持ってはどうかということでございます。

  そして、地元住民の参加と「自主的・主体的な島づくり」、計画をつくるのは地元あるいは地元住民の方々のアイデアからつくり上げていくべきではないか。

  また、事業の実施方法は、ハードとソフトを一体的に活用した「総合的・戦略的」施策として展開をしていくべきではないか。

  また、その中心となるべき民間の産業としては、「小笠原の特性を生かした新たな産業を振興していく施策」が必要であろうというふうにまとめさせていただいております。

 以上のような施策を展開していくには、法に基づく特別措置による支援が必要ではないかというご意見もございました。

  この流れを一つにまとめております。「小笠原諸島が『自立的に発展』できるように、地域の自主的な取り組みと併せて、経済・社会的基盤の整備とともに、小笠原諸島の特性を生かした観光等による産業の振興を総合的に進め、島民の生活の安定及び福祉の向上、並びに地球規模での交流促進を図る必要がある」という形でまとめさせていただいております。

  この論点整理を参考にしていただいて、本日は議論をさらに深めていただければと思っております。

  それから、先ほど参考資料1で主要指標をお示ししました。これは前回の審議会でも提出させていただいております。ただし、若干、数字を最新の数字に入れ替えております。大きな変更はございませんけれども、今日の議論の参考にしていただきたいと思っております。

  以上でございます。

○岡本会長 ご苦労さまでした。

  それでは、これらの資料をベースに議論を進めていきたいと思いますが、まず、小笠原村長から地元としてのご意見を伺いたいと思います。

○宮澤委員 発言の機会を与えていただき、ありがとうございます。

  委員の皆様をはじめ国土交通省並びに東京都の皆様におかれましては、日頃より小笠原諸島の振興開発につきましてご尽力を賜り、この場をお借りして厚く御礼を申し上げます。

  先ほど国土交通省から法延長の論点について、また東京都からは今後の振興開発に対する考えについてのご説明がございましたが、返還以来三十数年にわたり特別措置法に基づく諸整備が進められ、道路、上下水道、ごみ処理施設、医療施設等、住民生活に必要となる基本的な社会基盤は概ね整備をされてきたと村としても認識をしております。

  しかしながら、一方で、我々村民の悲願である航空路や平成17年春のTSL就航等、交通アクセスの問題をはじめ、医療・福祉の充実、また農業・漁業等の産業振興、情報発信の手段としてのIT基盤の整備、また高齢化が進み新たな視点での対応が必要な旧島民対策など、まだまだ解決しなければならない課題も数多く残されております。

  また、昨今、世の中全体が環境の時代となり、「資源循環型社会」や「環境との共生」という言葉が叫ばれている状況の中、環境の保全と利活用のバランスがいろいろな場面で問われるようになってきております。この問題は全国の離島において共通する今日的課題でありますが、他の離島とは性質を異にする小笠原独自の自然環境があり、また、そのことを観光資源の目玉として標榜する小笠原だからこそ、その対応の仕方が問われる状況もございます。

  その意味においては、自然環境との調和に配慮しながら、その環境を生かした産業振興や、それにふさわしい基盤整備を進めていく必要が生じております。

  今後、村としては、大きな目標である自立発展に向け、エコツーリズムを機軸とした観光振興を柱の一つに据え、観光拠点施設の整備をはじめ、観光振興等の連携の中で農業・漁業・商工業等の産業振興を図るとともに、環境に配慮した街づくりや豊かな資源を保全しながら、村民のみならず広く国民に利用される島を目指した振興開発を進めてまいりたいと考えております。

  特別措置法の目的である住民生活の安定及び福祉の向上を真に達成するためには、残された課題の解決と時代の潮流に即した新たな基盤の整備、また今まで整備された基盤を最大限に生かしていくことが重要になります。そのために、まず我々島民が最善の努力をすることが肝要であることは言うまでもありませんが、国のご支援が必要不可欠と考えております。

  委員並びに関係機関の皆様には活発な議論をお願いしまして、私の発言とさせていただきます。

  ありがとうございました。

○岡本会長 ありがとうございました。

 それでは、東京都の赤星総務局長からも地元としてのご意見を賜りたいと思います。

○赤星幹事 東京都の総務局長の赤星でございます。

  小笠原諸島振興開発特別措置法の延長につきましては、既に当審議会の会長宛に東京都知事から要望書を提出させていただいておりますが、本日は知事が所用のため出席できませんので、代わりまして私からその要点を申し述べさせていただきます。

  小笠原諸島は本年6月に返還35周年を迎えます。この間、特別措置法に基づきます施策の実施によりまして、道路、港湾をはじめとした基本的な社会資本整備が着実に進んでまいりました。このことには深く感謝を申し上げたいと思います。

  しかしながら、エコツーリズムを機軸といたしました島内産業の振興、環境に配慮した景観の創出、さらには平成17年春のテクノスーパーライナーの就航に向けました環境整備など、依然として取り組むべき課題は山積しております。

  また、課題の解決に当たりましては、貴重な生態系の保全など自然保護を図りながら豊かで生きがいのある充実した地域社会の実現を目指す必要がございます。このため、地域自らが地域の特性を生かした創意工夫を行うのはもちろんでございますが、都としても引き続き各種の施策を展開してまいる所存でございます。

  当審議会におかれましては、小笠原諸島の課題の解決や自立発展に向けた小笠原村や東京都の取り組みに対しまして特段の配慮をいただけるよう、お願いするものでありまして、平成15年度末に期限切れとなります小笠原諸島振興開発特別措置法の改正及び5年間の延長を要望いたします。

  よろしくお願い申し上げます。

○岡本会長 ありがとうございました。

  それでは、ただいまの小笠原村、東京都の声も踏まえまして、委員の皆さんからご意見をいただきたいと思います。

  今日は時間も十分ございますので、皆さんから、これまでもご意見をいただいておりますけれども、本日もご意見を賜ればと希望いたしております。どなたからでも結構でございますが、いかがでございましょうか。

  観光の話が出ておりますが、観光といいますのは基本的に異文化交流でございまして、まずは地域の住民の皆さんがその地域の自然と文化を誇らかに示し、島を訪れる客人としての観光客はそれを仰ぎ見るというような交流をすることによって、お互いに暮らしの知恵を学ぶというのが観光でございますけれども、まずは地域に誇り得る生活がないと観光にならないわけでございます。先ほど村長から「資源循環型社会」というキーワードもございましたし、また山口課長のご説明の中にも「地産地消」という言葉がございましたが、そういう文脈の中で日本国民全体が誇り得るような生活を小笠原で実現できたらなと思うのでございますが、皆様、いかがでございましょうか。

○岩崎委員 特別措置法についてですけれども、私は当然のこととして改正・延長が必要だと思います。

  先ほどの国会の議論を読んでおりましたら、これまで35年やってきてどんな成果があったかとか、特別措置法を適用しなければならないような特別な事情がある地域かとか、いろいろあるんですけれども、私は前にも申し上げたと思いますけれども、日本の国土で時間的にも地理的にもこれほど遠いところはないんです。例えば、今、東京から25時間ですね。それが何日かに一遍ですね。

○岡本会長 1週間ですね。

○岩崎委員 ということは、乗っている時間は長いですけれども、それに乗ろうと思ったら、1週間に一遍、往復で何日もかかる。世界中にこういうところはないわけです。それが日本の国土の中にあるということですね。そうすると、「地理的、自然的、歴史的条件等、特殊事情による不利性」とありますけれども、こういうことでくくっても、まだくくれないぐらいに特殊なんです。距離というのは。早い話、航空便があったらそういうことはないわけで、他の離島に行く方はある。時間距離をつくってみると小笠原はすごく離れてしまうと思うのですけれども、そういうことが解消された後ですと同じ離島のカテゴリーに入れても構わないと思うのですけれども、そうではなくて、アクセスにとんでもない時間がかかるのは不便と言う以上のもので、物流の問題や物価高、医療制度の問題、そういうことにすべてかかわってくるわけです。これほど物流が中心の社会で、物流の一番のネックのところがこれほど弱いところはない。私などから見ると、よく我慢していらっしゃるなと思うぐらいです。今、都会人は何時に宅急便が来ないと怒るとか、秒単位であるぐらいなのに、こういうところを全然配慮しないのはおかしいと思います。TSLが入ると16時間ということですけれども、毎日就航しているわけでもないわけですね。そういうことを考えていくと、不利性に基づくそこに住んでいらっしゃる方の不便などを考えていくと、どういう形であれ、まだ延長して、そういう中で考えていくべきだというのが私の基本的なスタンスです。

  もう一つ申し上げさせていただければ、資料4の2ページ、箱の中に「特殊事情による優位性」というふうに書いてありますけれども、これはちょっと傲慢な書き方ではないか。うまい言葉が見つからないので言ってしまいましたけれども、遠く離れているから自然なものが多いとか、海難事故があったときにいいとか、そういうことは国家とか外から見るとそうかもしれませんけれども、そこに人が住んでいるからこそ、そういうことがわかるわけで、人が暮らしているからこそ、領海の意味とか小笠原が持っている経済水域の意味があるわけですね。それは人が暮らしているからこそであって、そこに暮らしている人たちへの眼差しがここの記述の中にどれだけあるか。今回、もし特別措置法が改正されたり延長される場合は、自立経済とか、そういうことではなくて、そこに住んでいる方への眼差しから始まって、それに対して国家が国民に対する責任を負うというようなアプローチといいますか、視座、目線、そういうふうに持っていかないと……。今までと同じようなこと、ハードの整備をどんどん続けていくような意味で改正するのではないということも重要ですけれども、そういう点ですね。それから、物流とか、恐ろしく時間がかかるとか、物理的に隔絶された地域であるわけですから、そういう視点を入れながら、是非それを克服すべく、改正なり延長をお願いしたいと思います。

  まとまりませんけれども、お願いします。

○岡本会長 大事なお話を賜りました。大変貴重なご指摘だと思います。

  関連してでも結構でございますし、また別のことでも結構でございます。

○伊中委員 私は新聞記者として20年前に海上保安庁の船で一回行き、かつ今回審議会のメンバーとして自衛隊機で行かせていただくという幸運に恵まれて、なおかつ、こういう法案のこのタイミングで関われたことは大変ありがたく思っているのですけれども、私も措置法の延長については、当然のことであり、是非政府としても自信を持って議会に対して訴えていっていただきたいと思います。

  一般的には、こういう特別措置法、時限のついたものについては、サンセット的に見直すことが原理原則であって、資料にありますように委員会の中で議員からそこのところを指摘されるのは当然のことだと思います。従いまして、にも関わらず継続しなければいけないというところを、いかに政府として説得力を持って展開するかということに尽きると思います。

  その論点として、今、岩崎さんがおっしゃったことは全くそのとおりでありますから、暮らしている人の立場に立ってそれを守らなければいけないと同時に、それが持っている小笠原の価値、国民にとって共有財産であるという視点をより明確に出さなければいけないと思います。

  ここに今までの議論がまとめられておりますので、重ねて言う必要もないのですけれども、極めて隔絶した場所にあるところに対してのアプローチとしては、現にある不便をいかに減らすか、マイナスをいかに小さくするかという部分と、もう一つは、住んでいる方にとって、心理的なものではありますけれども、マイナスであるがゆえに、それをプラスにし得るという、いわば価値観の転換がなければいけない。その二つが同時になければならないと思っています。

  それから、いろいろな産業の振興等々、いかに交通の不便を減らすかというアプローチがこの中にもございました。一方で、エコツーリズムのように、ある意味では辺境、あるいは隔絶しているというマイナスが、視点を変えれば、まさに地球及び太平洋のへそに位置しているのだというふうに考えた瞬間に別な発想が出てくる。あるいは、そこに別な価値観が入ってくる。その二つのアプローチで、国民に対してこの特別措置法の延長が必要であるということを、是非自信を持って議会の場で説明していただければいいのではないかと、そういう印象を持っております。

  以上です。

○岡本会長 ありがとうございました。

  先ほどの資料にもございましたけれども、不利性を優位性に変えていくような、また、それが地元の村民の皆さんの目線、視点でそういう不利性の優位性への転換が行われればすばらしいことだ、また、そのためには支援が必要だというふうに考えるわけです。

  そのほか、どうぞご遠慮なく、自由にご意見をいただきたいと思います。

○赤保谷委員 2ページの(3)で、岩崎委員のおっしゃったことと同じことになるのかもしれませんけれども、誤解されそうなのは「特殊事情による優位性」です。決して小笠原が優位なわけではなくて、漁船の事故、あるいは領海、あるいは経済水域、それは小笠原以外の人みんなが受益している。単に小笠原のためだけではない。これでは小笠原が優位に立っているような感じを受ける。ひとり小笠原のためではなくて、受益者は日本中広いんですよということを法案を出すときの理由にされたらいいと思います。

  ついでですが、その下の(4)の下から二つ目の「○」です。これは私が言ったことですが、一般の農業政策では無理ではないかと。農業政策というよりは、大分前ですけれども、よそでつくっていないような地域特産物、そういうものがあるのかないのか。亜熱帯性植物、果物などが外国からいろいろ入ってきているんです。あそこでないとつくれないのがあるのかないのか、よくわかりませんが、そういう意味で以前申し上げた記憶があるので、一般の農業政策ということとはちょっと意味が違うのだろうと思うのです。ですから、どこかへ出すときには、そういう意味合いで書き換えておいてもらいたい。

○岡本会長 個人的には、委員ご指摘の方向性でいろいろな試みがなされていて、パッションフルーツとか、小笠原のおいしいトマトとか、観光客も本当に楽しめるものが出てきております。また、漁業にいたしましても、私自身、これまで全くやったことのないような釣りをして大いに楽しんだり……。観光も第一次産業、自然の豊かさをビジネスに結びつけるという意味では農業、漁業と全く同じでございますので、そこらで総合的に共存できるような方向性が出てくればと思います。

  今のようなお話で何かご指摘はございませんでしょうか。

○岩崎委員 今のお話に関連すると思うのですけれども、私も、そこでしかとれない農産物といいますか、特産品、そういうものはすごく重要だと思っております。パッションフルーツが大好きなので例えば「高野」や「紀伊国屋」あたりでいろいろ見ているんですけれども、いいものがないといいますか、フレッシュなものがなかったりする。前に小笠原に行かせていただいたときに、トマトとかシカクマメなどをいっぱいいただきまして、ここに来てしか食べられないということも一つの魅力だけれども、それが6日に一遍の25時間の船ではつらいわけですね。

  何を申し上げたいかといいますと、そういう特産品を広く販売できるようにするためには物流が非常に重要です。例えば、こういう特産物を6日に一遍の船に乗せて25時間かけて本土に運び、着いたところが竹芝ですね。そこからやっと他の地域と同じような宅急便のルートに乗っていくわけですね。そうすると、鮮度が重要な特産品がちゃんと経済ルートに乗ろうと思ったときに、そもそもそこに行くまでにすごいハンディがある。だから、あまり売れないから拡大もしないということになりますね。私は、注文しても、着くまで10日とか2週間かかるのかなと思ったりするわけです。今、全国から特産品のパンフレットをいっぱい送ってくるんですけれども、注文したら、ほとんどはその時期のものはさっと送ってくるわけです。今時の消費者は、差別化された商品は欲しいけれども、忍耐がないから、すぐ欲しいというところがあると思うのです。そういうことを考えると、物流のルートをもう少し考えておかないと、幾ら自立経済と言ったところで、あの島で自立というふうにはいかないと思います。観光の人は来るんですが、物を外に売るということを考えると、そのルートがどうしても必要かなという気がします。

○岡本会長 今は技術が発達しまして鮮度はなかなか落ちないんですけれども、ただ、船の都合に合わせなければいけないというところがございますのでね。

  ほかに、どうぞ。

○台委員 今の特産品の件ですけれども、農産物の場合には、物流的なロジスティクスの時間だけではなくて、一定の価格で一定の品質で出さなければ市場の信用力が得られないということになると、市場だけではなくて、生協に出したり契約販売の道を探っていかなければならないと思うのです。かつて、それを農業者の方たちが試みながら、自然条件下の中、あるいは組織力の不足という中、あるいは指導力の不足という中で、まだそこまで達成されていないという部分もあるのではないかと思います。

  農産物の場合、鮮度だけではなくて、加工をいかにしていくかということが特産品の開発に結びついていくかと思いますけれども、その場合、この何年間、振興開発の中心的な産業になりつつある観光産業、この観光産業と農業、観光産業と漁業というような二つの産業間の向き合い方だけではなくて、観光を軸とするならばするとして、そういった第一次産業、それから加工を行う食品産業、それから、いかに宣伝し広めていくのか、どうやって販路を開拓していくのかというような商工会、あるいは行政としてどのように支援していくのか、村の産業観光課のあり方とか、それから技術的な指導として農協の方というふうに、農政では既に農業構造改善事業というハード事業から、いかに需要に見合ったものを作り出していくのかということで、一次産業、二次産業、三次産業が手を組んでいくような試みが広がっています。それを、一、二、三と掛けて、どれが欠けてもいけないのだということで六次産業的な展開、あるいは地域内発型アグリビジネスと言ってみたり、地域構造対策事業と言ってみたりするわけですけれども、誰が、どのようにマネジメントしていくのかということも、漁業として、農業として、商工会としてというバラバラな単体ではなくて、観光がその軸となるのであれば、そういう六次産業的な組織力を持ったもので対応していかなければ、物理的に、あるいは市場の優位性もない中で、特産品というのは非常に難しいかなと思います。

  その中で、小笠原村議会の方で村民対話集会というものを平成14年の2月17日から20日まで行われていらっしゃいますね。私、これに非常に興味を持ったんですが、手元にはニュースのファックスをいただいた資料しかないのですが、その対象者となっている方たちが漁業関係者の方から観光、商工、建設業の方、それから民宿の経営者、自然ガイド関係者、そして婦人会、それから3歳児未満の子供を持つお母さんなどということで、非常に多様な方たちが参加されての対話集会を持っていらっしゃると思います。これがすばらしいなと思ったのは、女性の発言の機会はなかなかないですね。あっても、ドキドキして話せないとか、特に3歳児未満のお母さんは、子供を預けられないし、なかなか外に出ることができません。そういう中で、こういう集会を議会の方が軸になって持たれたことはすごく意義あることではないかと思います。さらに、ここで村の方たちが忌憚なく発言された意見を議会としてどのように具体化されていくのかということを強力に取り組んでいただけると、この審議会の中で話されている上からだとかいうことではなくて、本当の意味での自立的な発展のあり方が村の方たちの中から模索されるのではないかと思います。

  長くなりまして済みません。

○池田委員 この審議会に初めて委員として参加させていただいておりますが、稲垣の後の議長をやっております池田でございます。

  先ほど委員からお話がありましたのは議会での調査の報告だと思いますけれども、それは、母島を対象に、いろいろな方から意見を聴取しよう、母島の振興のために皆さんの意見を聞こうということでつくらせていただきました。資料はできておりますので、また送らせていただきます。

  なぜそういうことをしたかといいますと、委員がご指摘のとおりですが、いろいろな考え方を持っているお母さんやお父さん、そしてお兄さん等、農業をやられている方や漁業をやられている方がいらっしゃるんです。ところが、あんな小さな自治体でも、なかなかそういう意見が出てこないという状況があったので、仕掛けとしてちょっとやってみようということでございます。それはここの前委員でありました稲垣前議長が中心になってやってくれたことです。今年は父島の方でも村民にいろいろなことを伺ってやってみようという姿勢でやろうと思っておりますので、また結果が出れば、こういう機会があれば発言させていただきます。

  それから、岩崎委員が毎回、村民を代表して、我々が言いたいことを言ってくれるのでうれしいなと思っているのですが、今、農業やいろいろなことがありますが、まず飛行場をつくるという大目的がないと、そのことが解決できないという状況があると思うのです。ですから、今回の法延長に当たっても、どうか1日1便のアクセスがあるぐらいの村にしていきたいなと思っております。

  それから、TSLができても、毎日は動きません。今の予定では4日に一度ぐらいということになりますので、海の足と空の足を何とか確保したい。このように思っているのが村民の大勢だと思います。

○岡本会長 どうぞ。

○秋本会長代理 今回、論点整理をいろいろやっていただいた中で、「国家的・地球的役割の再評価」ということをはっきり書いていただきました。これは、言葉はいろいろあるのでしょうけれども、要するに小笠原が持っている国家的な意味合いをはっきり認識しようということで、これは今までも議論がありましたし、調査会等でもそういう趣旨のお話があったんですけれども、国家的意義・役割を小笠原が持っているということは、国としても、そのことについてどういう役割・責任を果たしていくのかということが出てくるだろうと思うのです。岩崎委員がおっしゃったこともまさにそのことにつながってくるのだと思います。

  ただ、振興計画を改めて見てみると、これは私がやっているときからこうだったのかもしれませんが、そこには国の役割とか責任という趣旨のことは書かれていないんです。今後、小笠原の振興開発の特別措置法を延長して、そして計画をつくって国としての考え方を明確にするというときに、国としてどういう役割を負わなければならんと思っているかみたいなところをどんなふうに書けばいいのか。これは考えなければいけないのではないかと思います。自分がやっているときには気がつかなくて、今ごろ気がついて言うというのは恥ずかしいのですけれども、ひょっとしたらそうかもしれないなと。

  それから、飛行場の話がありましたけれども、例えば振興開発計画も15年度までのものでは「空港」という言葉で計画には書いてあるんです。ただ、今日の東京都のご説明の中で、空港とか航空路というのは、私がパッと見た感じで言うと、都の計画や構想そのものには書かれていないように思います。これはいろいろないきさつがあったことが想像できますので、そのことを責めるという意味ではもちろんございません。今言いましたように、空港の問題は、振興開発計画でこれまでは事業化を進めるという趣旨のことが書いてあって、これから先も特別措置法を延長して振興開発計画をつくるというときに、小笠原の方からもお話がございましたように、空港の整備、航空路の整備は大きな問題であって、そのことについて触れないわけにはいかないだろうと思うのです。それについてどう対応していくのかということを、前回の計画では事業化を進めるぐらいに書いてあったけれども、今度はどうするのか。そういったことを本当に真剣に受けとめて考えなければいけないだろうと思います。

  前のときにもお話があって、自分がやっているときには兄島ということでほぼ決まりだった。それが私が辞めた後にできなくなって、時雨山になったと。時雨山でまとまったのなら、まあいいかと思っていましたけれども、これもとても無理だと。そうすると別のことになっている。こういうことの繰り返しではなく、もうちょっと現実的なものをいろいろやっていかないといけないのではないかという気がするのです。したがって、いろいろ言いましたが、振興開発計画に今までは「空港の整備」と書いていた。今度はどうするのか。それをいろいろご相談いただいてご検討いただく必要があるだろうと思います。

  ちょっと違う話になりますが、「エコツーリズムを機軸として」というふうに書かれているわけです。私はエコツーリズムというものが具体的にどういうものなのか、よく知らないものですから、前回もお尋ねをしたことがあるのですけれども、先日、南島のエコツーリズムというところに行ってみて、たしか1日200人、限定された方だけを入れると。

○池田委員 100人です。

○秋本会長代理 100人ですか。もっと限定しているわけですね。

  そういう方だけに入って見てもらう。そして、それだけ大事にする。これはこれでわからんでもないなと思ったのですけれども、今たまたまいただいた資料を見ていると、これは島民の方のアンケートの部分のようですが、54ページの一番下に、「行政主導型の規制ばかりではダメ。南島が良い例で観光政策と逆行する。地元民による自主ルートで創意工夫してやっていくルールを重視してもらいたい。」とございます。これは島民の一部の方かもしれません。しかし、こういう意見が出てきているということは、「エコツーリズムを機軸として観光振興を図っていく」というときのエコツーリズムが南島のようなエコツーリズムを考えるのであれば、それを機軸とした観光振興というのはものすごく限界があるといいますか、こういうことになるのかなという感じが出てくる。

  本当はそういうことなのかどうなのか、よくわからないのですが、小笠原というものは観光宣伝でどんなふうにされているかということで旅行会社のパンフレットを見てみると、「小笠原」の中にオプショナルプランとして「ジャングルフィールドガイド お一人様6,000円」というのがある。これは、ジャングルをガイドさん付きでご案内する、人数制限とかいうことではなくて、私がご案内してあげますから、どんどんいらっしゃいということだろうと思うのですが、それが小笠原の自然の中に入っていって、説明を受けて自然を勉強し、楽しみながら回っていく。こういうものがエコツーリズムと言うのかどうかは知りませんけれども、こういった類のものも含めた何らかの自然と共生するツアーを楽しんでもらう、そういったものを盛り込んでいく中で観光産業振興を図っていく、関連して農業や漁業も育っていこうと。こういうものだったら自然に入るんですけれども、ここで言っているエコツーリズムとは何ですかというのは、前回私がこの場でお尋ねしたときは、東京都の条例でつくったエコツーリズムであるという話だったので、もう少し考え方があっていいのではないかというような感じがしたんですが、本当にそうなのか。

  そして、そういったことを本当に進めていこうということになると、ソフト的な施策と書いてありますけれども、振興開発事業の中でソフトを重視していこうという言葉は前からも言われていますし、いろいろなところで出てきます。そうすると、国の振興開発事業の中でソフトとして具体的にどういうものを取り上げるかということを皆さんで考えていくのか。従来、振興開発事業はハード中心でやってきている面がありますから、どんな対応ができるかというのは、ひょっとしたら難しいものもあるかもしれない。それをどんなふうに考えていくのかというような一歩突っ込んだものが必要ではないだろうかという気がしまして、そのソフトとは何なのか。恐らく今日はそれ以上のことはできないと思いますけれども、これからそこを詰めていかなければならないのではないかと思います。

  ついでにもう一点言いますが、97ページ以下にプロジェクトのイメージが出ています。イメージ1が「徹底的に“美しい島”を創る」ということで、その中でフランスやアメリカ等いろいろなところの例が挙げられています。私は、「徹底的に“美しい島”を創る」というコンセプト自体はもちろん賛成ですけれども、こういうことと小笠原は距離があり過ぎるような感じもするんです。それと、このプロジェクト・イメージが具体的な政策にどんなふうにかかわってくるのか。それは一体どうなのか。美しい写真だけ見るという感じで終わらない、次の段階へつなぐものをもう少しやっていかないといけないのではないかという気がするんです。

  そういうふうに考えますと、さっきのソフト施策とも関連するんですけれども、例えば小笠原というのは「東洋のガラパゴス」と言われるのですけれども、私はガラパゴスへ行ったことがないんです。ガラパゴスはどんなところか。ガラパゴスでなくてもいいんですけれども、1000km離れた洋上のこういう島、似たようなところがもし世界中にあるとすれば、そういうところではどうしているのか、村民の皆さんも一緒に勉強をしに行くといったことがひょっとしたらあるのではないか。そういうところでの交通路の整備はどうしているか、観光に結びつく地元の農業・漁業はどうしているかといったことを勉強する。この頃、そういうところへ行くと、観光地ということになりますので、「遊びに行くのか」ということで怒られるかもしれませんけれども、そういうことではなくて、本当に真面目に、島の観光振興につながるような具体的な施策、対応の仕方を真剣に勉強に行くなどということがあっていいのではないか。そういうものを下敷に持ちながら、プロジェクト・イメージをもう一遍考えていけば、より実践的といいますか、身近なイメージになってくる、そういうことがあるのではないか。

  そういったことが例えば国の振興開発事業のソフト事業の対象になり得るかどうかはわかりませんけれども、そういう今までにないことを考えていかないといけないのではないか、また、そういうふうにしたら何か出てくるのではないかという感じがしました。

  最初のことと最後のこと、自分のときにできなかったことを今頃になって考えたらどうですかと言うのは非常に心苦しいのですけれども、以上、申し上げます。

○岡本会長 ありがとうございました。

○赤星幹事 今、会長代理からいろいろお話を伺いましたけれども、小笠原のエコツーリズムは、小笠原村の村長も見えていますが、私もこの前のポジションが環境局長でございましたので、環境と観光をどう調和していくかということをいろいろやってきて、エコツーリズムについて一緒になって村長とお話をしてきたんです。

  先ほど言われた南島というのは一つの象徴的なエコツーリズムのあり方でございますけれども、あれだけを指して小笠原の観光をやろうということではございません。南島はかなり破壊されてきていたものですから、都としても大分手を入れたんです。よそから物を入れないで、できるだけ原形のままで元へ戻そういう形で、かなりの手を入れております。あれ以上破壊されないようにということで、あそこの場所では1日100人なら100人という形で切ったわけでございまして、小笠原が全部あのパターンでやるということではございません。

  南島はまだ整備されておりませんけれども、石門とか、ルートを開発していかなければいけないでしょうし、小笠原には、夜、真っ暗になりますと、すばらしい星空があります。これも一つの観光資源だと思います。先ほど会長代理も言われたように、小笠原にはまだまだ指定された地域以外の自然も観光資源としてあるわけでございますので、それらを総合的に考えながら、できるだけ自然破壊をしないようにしながら、あそこで観光開発していくことが将来の小笠原にとってプラスになる。それと先ほど言われた特産物、そういうものと結びつけていく。

  ガラパゴスの話も出ましたけれども、東京都ではガラパゴスに行ってまいりました。ガラパゴス型がいいのか……。南島はそういう形になるのだろうと思いますけれども、全体を見たときにどういう形がいいかということは、今も村とよく相談しながらやっているところでございますけれども、とりあえず南島、石門はそういう形で、大事な自然をこれ以上破壊されたら困るという意味で、しかも資源としてもかなり効果的な資源でございますので、それはうまく活用したいと、こういうことでございます。

○秋本会長代理 私は南島のやり方について反対して申し上げたのではありませんよ。それは誤解のないようにしてください。

○赤星幹事 わかります。私もそう思っていませんので。

  ただ、いろいろな形があるだろうと思います。それは今も島の方たちとよく相談しながらやっております。今年、エコツーリズムで自然ガイドに百数十人を認定したと思いますけれども、その方々がやるのは、石門とそういう観光資源だけではなくて、もっと広々した、大きな観光資源を開発していくことがこれから必要なのだろうと、こう思っております。とりあえずあの2カ所だけは何とか守りたいという意味でのエコツーリズムで、それ以外のエコツーリズムというのはもっと広い意味での観光資源として小笠原全体を活用していく必要があるだろうと思います。

  それから、航空路の問題でございます。確かに難しい問題でございまして、自然との調和をどうするか。例えば、時雨山をやりますと、あそこは小笠原のかなりの部分の山を崩さないとできない状況になっております。しかし、航空路は必要なのだろうと思っています。それをどうやって確保するかというのは、自然と調和しながらどうやってやるか、これもよく考えているのですけれども、先ほど池田議長も言われましたように、よく話し合いながらやっていかなければいけないだろうと思います。

  村にもよく考えてもらい、東京都としてもよく考えていかなければいけない。これは国にもご支援いただかなければいけないところでございます。あの島が自立していくというのはなかなか難しいことでございますけれども、将来、自立できるような形に持っていきたいというのは同じ願いでございますので、これからも一緒に協力しながらやっていきたいと考えております。

○岡本会長 ありがとうございました。

○小豆畑委員 小笠原の関係者の一人として今までのご議論を伺っていて、これだけ小笠原に対するご理解をしていただき、かつまた法延長についても積極的な意見をいただいて、本当にうれしく思います。ただ、それが単なる法延長でいいのかということになりますと、今までの35年間を振り返り、よく検証してみて、これからの5年間を考えていく必要があるなと思っています。

  先ほど山口課長からご説明がありました資料4、これは論点整理としてはよくできておりますし、それから参考資料1は前回もお配りいただきましたが、枚数こそ少ないものではありますけれども、一種の小笠原白書のようなものだろうと理解をしております。

  過去35年間を振り返りますと、小笠原は、公共事業投資の是非が問われていますが、その典型的な島であったと思っています。参考資料1でも、給与所得が92.8%という所得構造、経済構造になっている。極めて異常であります。そういうことをどうやって直していけるのかということが一つ問題であります。

  もう一つは、全体を考えますと、人口は既に減少の傾向をたどっております。平成11年をピークにして毎年減少をしております。観光のことで何人かの委員の皆様からお話をいただきましたが、今の「おがさわら丸」ができた平成9年の次、10年の2万5,000人をピークにして、これまた観光客も減少を続けています。現実はそういう数字になっております。

  先ほど農業についてお二人の委員からお話がありましたので、これも数字で見てみますと、予算ベースではございますが、平成15年までの35年間、どれだけの経費が投入されたかを考えますと、国費ベースで50億9,600万円、全体として87億7,000万円であります。農家戸数が、私が把握しているだけでは85戸であります。生産額にして1戸当たり200万弱、こういう数字になっております。

  そうしますと、一つの例として農業を申し上げるわけでありますが、今までのやり方が本当に正しかったのかということは、今後の法延長の中身、施策を展開していただくに当たって、ぜひ検証していただきたい問題であります。農業だけを申し上げて恐縮でありますが、35年間、ほとんど同じ施策の連続であります。集中的な生産、市場で相手にされる生産物の生産ということはほとんどなされてこなかったのではないかと理解をしております。

  4番目に岩崎委員からお話がございました物流の問題でありますが、この間、母島で珍しくクロマグロがとれました。最高級品でありましたが、おっしゃるとおり、鮮度が問題であります。たまたま船便がありましたので、かなり高値で取引をされましたけれども、あの船便がなかったら一体どういうことになっていたか、極めて心細いものであります。

  あるいは、島内消費を見ましても、船が着いた日の商店の賑わいも、1日あるいは半日で一斉に品物がなくなりまして、あとの5日間は閑散としています。すべてと言っていいぐらい内地から入ってくる。農産物もそうでありますし、魚類もそうであります。そういう状況をどうするか。

  あわせて、航空路の問題が出ましたけれども、急病人の対策としても、ぜひ航空のことはお考えをいただきたいと思います。いつかも申し上げましたけれども、奄美と沖縄で19カ所も飛行場があるのに、どうして小笠原にはできないのか。痛切にその必要性を感じております。

  具体的にどういうことなのかということを申し上げますと、例えば公共事業の縮小傾向は避けられない状況になってきていると思いますけれども、前回の審議会でも申し上げましたように、例えば小笠原の都道・村道のすべてに歩道をつけてください。そのことによって観光に来てくださったお客様が自分の足で小笠原を歩いてくださるような条件をつくっていただけないか。あるいは、皆様に観光に来ていただく期間が春休みと夏休みとお正月前後に限られておりますから、村の議会でも問題になったことだと伺っておりますけれども、「ジャカランダ」です。今、アフリカでこれが大々的に栽培されておりまして、ヨーロッパやアメリカから飛行機を連ねて観光客が集中している。豆科の植物だそうでありますが、例えばの話、そういうもの。あるいは、これは小笠原に咲くビーデビーデと花の咲く時期が重なりますが、ヒカンザクラの類を移植できないか。そのことによって、ここはビーデビーデの山、その隣はヒカンザクラの山、その隣は今申し上げました豆科の植物ということで、これからの施策の中に是非出していただきたい。私は素人ですので、そんなことが可能かどうかはよくわかりませんけれども、そういう具体的なことをお考えおきいただきたいと思います。

  それから、参考資料1の中で小中学校のことが出ております。少し問題が大きいものでありますが、最後のページでありますが、整備率がこういう状況にあるということは放っておけないので、重点的な施策として是非教育条件の確立にご努力をいただきたいと思います。

  以上でございます。

○岡本会長 ありがとうございました。

  どうぞ。

○山下委員 私も基本的に延長に賛成でございますが、延長した後、この法制度の下で何をするのかということが大切なことではないかと思っております。延長に賛成ということは、これまでのところではだめで、もっといろいろなことをしなければならないという認識があるから賛成を申し上げているわけですけれども、今までと同じようなと言うと語弊があるかもしれませんが、そういうことで進めていくことでいいのだろうかと懸念するような気持ちがわいてきております。

  私自身にどんなものがあるという提案を持ち合わせているわけではもちろんございませんけれども、具体的なターゲットといいますか、努力目標値といいますか、そういうものを設定して、いろいろ議論したり調べたりする中から新しい切り口が見えてくるようなことがあるのではないかという気がします。

  委員の皆さん方も何回もコメントされておりますけれども、資料4の2ページの「国家的、地球的役割」云々の項目で、三つの「○」がついて一種の提案がなされていると理解しておりますけれども、ここに出ているのは私は実は具体的な形で提案されているというふうに受け止めております。例えば、1番目はいわば海上保安の問題でありますから、漁船事故があったということもありますし、事故がなくとも台風等いろいろなことがあったときに避難するということもあろうかと思います。いろいろな形でどういうことができるのか。2番目の世界遺産の話も、本当にあそこを世界遺産に登録するという努力をしてみたら、どういうことが出てくるのか。そういうことをいろいろ勉強する種が出てくるのではないか。具体的なことをターゲットにいたしまして物を考えるようなことをする時期ではないか。これまでもなさってこられたとは思いますが、そういう気がしております。

  そういう意味で、全くの素人が思いつきで申し上げますけれども、先ほどからのお話を聞いておりますと、小笠原というのは世界的にも特殊なところのようではありますが、世界の中には人が住んでおられる離島がほかにもたくさんあると思いますので、一種の連帯運動ですね。東京都も姉妹都市を幾つかお持ちではないかと思いますし、港では姉妹港という活動が大変盛んでございます。そういう意味で、例えば姉妹アイランド運動みたいなものをお考えになって、そういう切り口から何か新しいものが出てこないか。

  あるいは、私も現地に行かせていただきまして一つ気がついたことは、非常に特殊な自然条件の下に島が置かれているということから出てきていると思うのですが、試験研究機関が幾つか出ておられる。試験研究機関があるということは、いろいろな学術的資料があるわけですね。しかも、それが現地にあるということは私は大きな特徴ではないかと思っておりますので、例えば修学旅行の誘致をして修学旅行の定番みたいなことにしていけないだろうか。テクノスーパーライナーも再来年に就航するようですし、そういうことも組み合わせると、そういう方向のこともあるいはできるのではないか。関係省庁の方もおられるかもしれませんので、勝手なことを言うとおしかりを受けるかもしれませんが、そんなことも想定としてはあり得るのではないだろうか。

  いろいろ具体的なことと重ね合わせて、新しい切り口からいろいろ物を考えて、延長した制度の下では、自立的発展あるいは自立的な経済社会構造の構築に結びつく、島の方々の生業をいろいろサポートできる、あるいはそういうものを少しでも増やしていくという方向もそういうところから生み出していけないだろうかということを思っております。

  素人の思いつきばかりで恐縮ですが、以上です。

○岡本会長 ありがとうございました。

  研究所は四つもあるようでございますけれども、産業振興の基本は研究開発と人材育成でございますので、非常に貴重な点だろうと思います。どうもありがとうございました。

  沼田委員、いかがでしょうか。

○沼田委員 今の状況ですと、小笠原に行くのは時間とお金がある人でなければ行けないなという感じがするのです。

    私、撮影をやっておりまして、今は、中年といいますか、初老といいますか、アマチュアの方ですけれども、男性も女性も結構年輩の方で撮影をする方がとても多ございまして、海外へもよくツアーで行きます。30万とか40万ぐらいの値段で10日ぐらい一緒に撮影をするツアーですけれども、そういう方たちをターゲットにするのが手っ取り早いのではないかなという感想を持ちました。

  ただ、もし小笠原が世界遺産になり得るようなたくさんのデータがあって、それを並べていただいて、こんなものがありますよとか、お祭りとかイベントですね。自然がきれいなだけでは、撮影ツアーとしては人がなかなか集まりにくいと思うんです。自然がすごく好きな人は、若い人とか潜って写真を撮る人とか、体力的に自信のある人はそういう風景を撮るということでも多くいらっしゃるんですけれども、ちょっと中高年になりますと、安易にといいますか、お祭りを撮ったり、人の生活を撮ったり、すっと入れて人の島と出会えて、お話ができて、いいなと思ってシャッターを切るというような感じが多いので、なるべくそういうものがありますよというコピーをつけていただく。それで、船に乗って、1週間ですね。そうすると、船の中で写真のレクチャーなどをして、向こうへ行ったらこんなものがありますよとか、長い船旅も楽しめるようなイベントをして、向こうへ行ったら、いろいろなお祭りを撮らせてもらったりする。

  それから、おいしいものがないと今の人は……。それから、この間のアンケートでもお風呂が欲しいということでした。非常に古典的なことですけれども、そういうきめの細かいサービスがないと、旅行をする人たちは……。旅行会社もとても細やかなサービスでパッケージをしますので、そういうきめの細かいことをやっていかなければいけないのではないか。

  それと、美しいということもあります。ただ、私も行かせていただきましたが、海はきれいです。でも、日本の島ですから外国へ行ったような雰囲気にはなれないわけです。だから、逆にもっと日本的な人の触れ合いとか、古い島にしか残っていないようなものに触れ合えるとか、そういう島の人たちとの対話みたいなもの。

  漁業なんかも、私も田舎へ行って漁なんかも撮りますけれども、今は養殖みたいなものをしていましたね。私が行ったときは漁の雰囲気があまりなかったんです。あるのかもしれませんが。ですから、観光客が体で島を体験できるようなものがあると、それも写真に撮れますし、そんな細かい配慮が必要なのかなということ。

  それから、観光のときに案内板等がいろいろ整備されてしまうと、逆に絵になりにくいということがあって、案内がうまくいくからいいというものではない。逆に変なところに看板を立てないでいただきたいので、そういうことも考えていただいて、なるべく南島のような、元の自然に戻すといいますか、ここは絶景ポジションですみたいなところが一つあってもいいと思うんです。ここから撮れば誰でも撮れますよとか、ここに何月に来れば鯨の尻尾が見れますよとか、そういう「売り」をおつくりになれば、今は海外に行くという傾向ではなくなってきているので、逆に日本の中で特異な場所に行きたいという方もいらっしゃるのではないかという感じがいたしました。

  そういうことは、島の人たちから見ていると、ちょっとわかりにくいと思うんです。ですから、東京都の方が島から離れて見ていただくと、逆に良い点がいっぱい出てくるのではないかという感じがいたしました。

  以上です。

○岡本会長 ありがとうございました。

  考えてみると、東京23区に住んでいるような人間よりは、はるかに自然と共生しながら、うらやましい生活を送ってこられる、そんな島になっていただきたいと思いますね。

  まだ時間がございますが、来月に向けて意見をまとめなければいけません。ほかに、もう一点というようなご意見はございませんでしょうか。

○宮澤委員 地方自治体を取り巻く環境は大変厳しいものがあると認識をしているわけですが、特に離島を取り巻く環境は、恐らくかつて経験したことのないほど厳しい環境にあるのではないかと私は思っております。地方分権、市町村合併という大きな流れがあるわけですけれども、その大きな流れの中で小笠原ほど合併にそぐなわない地域はないだろうと思っているわけです。ただ、いろいろな審議会とか自民党の検討部会等での今の流れを見ていますと、そういう離島町村でも人口1万人以下の島は自治権を召し上げて、窓口業務だけをやりなさいよとか、様々な議論がされているわけです。どういう結論になるかはわかりませんけれども、大なり小なり、そういう影響が出てくるのは小笠原といえども確実ではないかと考えているわけです。

  では、その中で小笠原が自治体として生き残っていくための方策、方法論があるだろうかということも常日頃考えているわけですが、私としましては日本の経済水域の3分の1を占める地理的特性というものが一つの大きな理屈になろうかと思うのです。もう一つは、国から見ても、東京都から見ても、本当に特色のある、価値観の高い地域づくりをすることによって、かろうじて自治体として保全される道も開けてくるのではないかというぐらい真剣に受け止めて考えているわけです。

  いずれにしましても、今日の皆さん方のご意見を拝聴させていただきながらそういう部分を感じているわけですけれども、そういうものを全部集約して取り上げて実現化していくことによって価値観のある地域づくりができると思っていますので、今後とも是非前向きなご意見とご指導等もいただきたいと思っています。

○岡本会長 ありがとうございました。

○赤保谷委員 この小笠原諸島の振興開発と関係あるとは思うのですけれども、復帰に伴う特別措置法、あの中にはいろいろなことが書いてあると思いますが、私はよく知りません。ただ、私が今まで2〜3回発言をさせていただきましたのは、特別賃借権の制度についてです。特別措置法の中に書かれていることで、死文化していて役にも立たんし害にもならんというものは置いておいてもいいだろうと思うんです。特別賃借権というのは生きていまして、そのまま放っておくと、地権者、賃貸人の方も相続でどんどん増えていく。借りている方も誰が相続人なのかがわからないぐらいです。そういう非常に複雑な権利関係がそのまま残っているんです。

    あれは現実にはあまり害もないのかもしれないけれども、法律上は歴然として権利として残っている。もう復帰後三十何年もたっているのですから、役に立っているものは置いておいたらいいけれども、放っておくと害になると言えば言葉は悪いけれども、複雑になってどうしようもない、いずれ法律上、擬制をして整理をする必要が出てくると思うので、何とかならんかという話をしたら、それだけを取り上げてやるわけにはいかんと。特別措置法にはいろいろありますので、全般を見直す中で特賃の制度を取り上げていきたいという話がありましたので、では、よく勉強しておいてくれということを申し上げたんです。

  そして、今度の振興開発、現行法は、何年延長するのかわかりませんが、期限が切れて区切りのときでありますので、いいチャンスだと思います。特賃に限らず、復興特別措置法に書かれていることで、そのまま放っておくとどうかなと思われるようなものについて見直しをする気があるのか、ないのか。あの法律の所管省庁は国土交通省になるんですかね。各省みんな束ねているので、その辺のお考えを役所の方からお聞きしたいと思います。

○岡本会長 今の段階でご指摘ございますか。

○小豆畑委員 その前に私から一言。

  特別賃借権のことを取り上げていただいて本当にうれしく思います。日本で唯一、農地法の適用のない島になっております。私は経過的には特別賃借権はやむを得ないものだろうと思っていますけれども、まだ全くそれに手をつける気がない。農水省が担当省庁だと理解しておりますけれども、赤保谷委員がおっしゃったとおり、年々、地権者も亡くなって、土地を持っている者も亡くなって、相続の問題が出ております。特別賃借権というのは簡単に言うと小作権みたいなものです。ちょっと違いますが、小作権みたいなものでありますが、小作権者、特別賃借権者も細分化されていって、処理に非常に困惑を重ねています。ようやく、ある地主さんが意を決しまして、自分の土地を賃借権者に分け与えて法定賃借権だけは解消させましたが、まだまだそうでない土地が残っておりますので、赤保谷委員がおっしゃるとおり、これからますます複雑さを増していく傾向にあります。

  防衛施設庁は、地権者が少なければ少ないほど土地の借り上げに便利でありますから、立場が違うと思いますけれども、いろいろ意見を持っておられるようでありますから、ぜひ防衛施設庁の考えもお聞き及びの上、赤保谷委員がおっしゃるとおり、この法律改正の時期に解決をしていただければありがたいと思います。

  以上です。

○澤井局長 役所でその点についてどう考えているかということですけれども、今日大変突っ込んだいろいろなご議論が出た中で、これからの振興開発の中身の議論だけではなく、法律の議論、特別措置法はこれからも必要であるというご意見が大勢だったと思います。私どもも基本的にはそう考えているんですが、逆に言いますと、単純延長はまず通らんだろうと思っていまして、どういう格好で新たな小笠原特別法に仕立てるか、まず入り口の大枠を我々は我々で一生懸命考えていますし、今日頂戴した議論はそういう意味でも大変参考になりましたので、それをまず整理させていただいて、ご指摘のように今のような重要な議論があるということは私どもも前から承知しているつもりですが、そういったことも含めて、こういうときでないとできない法律事項の整理はきちんとしたいと思っています。

○岡本会長 どうもありがとうございました。

  それでは、時間もまいりましたので議論をまとめさせていただきたいと思います。

  まず、地元の意見、要望といたしましては、小笠原諸島は、特別措置法の下、生活基盤や産業基盤の整備が行われ、所要の成果が上げられてきた。しかし、医療・福祉の充実、さらには情報通信ネットワークの整備などの解決されていない問題や新たな課題が存在している。小笠原諸島の特性を生かしながら自立的発展を進めていくためには、引き続き法に基づく特別の支援が必要であるということでございました。

  また、本日の委員の皆様の貴重なご意見をまとめますと、小笠原諸島の自立的発展を目指し、地域の自主的な取り組みとあわせて、空港を含む交通基盤の整備を含む社会経済的基盤の整備とともに、小笠原諸島の特性を生かした観光等による産業の振興を、総合的にソフトな側面も含めて推進するためには、これまでの成果を十分検証しながら、引き続き特別な措置が必要ということになろうかと私としては思いました。

  次回は、これまでの議論を踏まえ、16年度以降の振興施策のあり方について検討し、審議会としての意見をまとめたいと思いますので、これまで出された意見を事務局において集約していただきたいと思います。

  次回の日程につきましては、来年度の予算要求の日程上の都合もあり、6月中旬頃には開催する必要があります。そこで、事務局において開催日を決定していただきますよう、お願いします。

○赤保谷委員 その前に質問です。この次に開くときには今日の議論をまとめるんですね。今回は、昨日帰ったら資料が届いていましたので助かったんです。だから、この場で読んで、これでいいとか悪いとか言うよりも、1日早く送ってもらったら非常に助かりますので、是非お願いします。

○山口課長 それでは、事務局よりご説明いたします。資料はできるだけ早く送付するように努力いたします。

  次回の日程でございますけれども、小笠原村から村長と議長が上京されるということもございますので、「おがさわら丸」の運航日程を考慮せざるを得ないところでございます。そこで、できますれば、6月18日(水曜日)ということでご予定はいかがでございますか。

○岡本会長 よろしゅうございましょうか。

〔「はい」の声あり〕

○岡本会長 ありがとうございました。

 

(3)その他

 

○岡本会長 それでは、本日予定されている議事は以上でございますが、ほかに何か報告事項など、ございますでしょうか。

    村長、記念行事のことなど、ございますか。

○宮澤委員 先ほど話題にしていただきましたが、昭和43年に返還以来、当地では返還35周年という節目のときを迎えております。こういうご時世ですから、その式典等につきましてもいろいろ悩みはしたのですが、2年後にはTSLも就航するという時代背景もございますので、ささやかながら、式典等も含めて、振興に向け、一過性に終わるのではなくて、TSLの導入その他に向けての持続性・永続性ということも視野に入れたことを考えてございますので、先生方、いろいろとお忙しいとは思いますが、できるだけ多くのご参加をお願いさせていただきたいと思います。よろしくお願いします。

○岡本会長 ありがとうございました。

 

局長挨拶

 

○岡本会長 それでは、最後に、国土交通省都市・地域整備局の澤井局長よりご挨拶のお申し出がございますので、よろしくお願いします。

○澤井局長 局長の澤井でございます。

  本日は長時間にわたり大変ご熱心なご議論を賜りまして、ありがとうございました。

  先ほどもちょっと申し上げましたが、これからの自立発展というのが皆様の大体のコンセンサスだと思います。その中身をますます豊かにしていくということはもとよりでありますけれども、それを盛る器、法制でありますが、これをどのようにするか。恐らく今までの流れからしても、中身を一切いじらずに単純に延長するということが通る時代ではないと思っております。したがって、いろいろな意味で位置付けなり光の当て方を変えていくということだと思っております。

  今の法律は、ご承知のように、復帰したという事情、それから地理的・自然的な特殊事情がある小笠原について、基礎的条件の改善、あるいは特性に応じた振興ということで、言葉は悪いのですが、国なり都なり関係方面が協力をして村を引き上げていこうと、そういうスタンスの法律だったと思うのです。最近の議論、特に今日の議論を踏まえれば、そういう議論ではなくて、基礎条件の改善という光はもちろん当てなければいけないところがありますけれども、言ってみれば「国の宝」、「地球の宝」というような新しい光を当てることによって、国の関わり方もまた新しい関わりをして、よって特別な法制が要るというような、そういう立論といいますか、諸先生方からは、その辺、最後は政府でしっかり考えろというご意見がありまして、私どもも考えているのですけれども、例えばそんな行き方で行くのかなということをいろいろ考えながら今日の議論を拝聴しておりました。

  そんなことで、先ほどの会長のご指示も踏まえて、次回までにその辺をできるだけ整理をしたいと思っております。特に会長代理の秋本委員からは、「自分ができなかったこと」という言い方をされておりますが、先輩局長の大変厳しいご指示と受け止めまして、あわせて次回までに一生懸命整理をさせていただきます。

  ありがとうございました。

○岡本会長 ありがとうございました。

  それでは、以上をもちまして本日の審議会を終わりたいと思います。長時間にわたり、ご協力いただきまして、ありがとうございました。