(3)渇水ポテンシャルの増大と総合的な渇水対策

イ 水資源の現状
 我が国の年平均降水量は世界平均降水量の約2倍、約1,700mmであるが、人口密度が大きいため、1人当たりの年平均降水量でみると、世界平均の5分の1程度の約5,200m3である(図2-VIII-8)。
 また、降雨は梅雨期及び台風期に集中し、さらに近年では各年ごとの変動も大きくなっている。一方、急峻な地形のため、河川の勾配は急であり、流域は小さく、かつ流路も短い。このため、河川流量の変動が大きく、流水は急速に流下してしまい、水資源の安定的利用を図る上では極めて不利な気候的・地理的条件となるため、豊水時にダム等に流水を貯留し渇水時に補給することにより、効率的かつ安定的な水資源の確保を図ってきた。
 このような状況の中、首都圏をはじめ水資源開発の遅れ等から依然需要は充足されておらず、河川水が豊富な時にしか取水できない、いわゆる不安定取水に依存せざるを得ない状況にある。また、生活用水の使用量が増加傾向にある上、環境保全、消流雪など新たなニーズも発生している。さらに、地形的制約等から局地的に水需給がひっ迫している地域もある。
ロ 近年の渇水の状況
 近年の少雨傾向と、生活水準の向上や生産活動の拡大等による1人当たりの使用水量が増加傾向にあることから、水資源の安定的な利用が困難になり、水需要のひっ迫している地域を中心に渇水が頻発している。
 特に平成6年は、北海道の一部、沖縄を除き、ほぼ全国的に渇水となり、時間給水の影響人口は過去最大の553万人に上った。
 平成11年度には、平成10年度冬季よりの少雨を受けて、四国と九州において取水制限、自主節水を実施した他、平成11年度冬季にも四国と中部において取水制限を実施した。
ハ 渇水に強い社会を構築するための総合的渇水対策
 このような頻発する渇水に対処するため、渇水に強い社会を構築するための総合的な渇水対策をする必要があり、その渇水に強い社会を構築するには、まず水の再利用の推進、節水の促進等水資源を最大限効果的に活用するシステムを社会に組み込むことが不可欠であり、市民生活や経済社会活動の中で、このための施策を展開していくことが重要である。
 しかしながら、節水型社会システムの構築を前提としても、生活水準の高度化等により水需要の増加が今後も予想される地域があることや、近年の少雨化傾向により水利用の安定性も低下していることから、必要に応じダム建設等の水資源の確保、渇水対策ダムの整備、水系間水融通及び既存水源の効率的運用等を積極的に推進することも重要であり、このため、節水型社会システムの構築と水資源の確保を車の両輪とした総合的な渇水対策が必要となっており、下水処理水、雨水の有効活用、節水型住宅・建築物の建設促進、節水型まちづくり等の各種施策を推進している。
ニ これからの社会・経済の展望と水資源開発
 近年の少子化傾向を背景として、我が国の総人口は来世紀初頭には、減少に向かうものと予測されている(厚生省国立社会保障・人口問題研究所『日本の将来推計人口』)。
 今後こうした総人口の増加の頭打ち等により、これまでのような急激な水需要の増加は考えにくい状況にある一方で、高齢化の進行は渇水等に対し抵抗力の弱い人々の割合を高め、また水のおいしさや健康への影響についての関心の高まりもあり、安全で安定した水に対する要望を一層高めるものと考えられる。
 一方、近年の少雨化傾向等により、利水の安定性が低下しつつあり、このような経済・社会のニーズにも鑑み、水資源開発については、従来のような量の確保のみならず、現状の利水安全度を適正に評価しつつ、安全、安定といった質を重視し、利水安全度の向上について取り組んでいくことが必要である。


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