第I部 地域の活力向上に資する国土交通行政の展開 

第I部 地域の活力向上に資する国土交通行政の展開

第1章 地域の置かれている状況〜社会・経済構造の変化の中で転換点に立つ地域

【第1章のポイント】
 地域の置かれている状況について見ると、一人当たり県民所得の地域間格差が戦後長期的には縮小してきたこと等が確認できるが、今後、人口減少・高齢化の進行が地域のあり方に深刻な影響を及ぼすことが懸念される。地域の活力を維持・向上させていくためには、このような人口構造の変化に対応するとともに、経済のグローバル化が進む中で東アジア地域の成長を取り込んで行くことが重要な課題となっている。

第1節 地域に対する国民の意識
 地域の現状への認識や将来見通し、地域格差に対する意識について調査した。その結果、自分の住んでいる地域に関し、現状については、以前より悪くなったとする回答は少数であったが、将来については、不安を感じるとする回答が町・村の居住者を中心に比較的高く、具体的には、高齢化や少子化、人口減少といった点に不安を感じていることが分かった。また、地域格差の拡大を感じるとする回答の割合は高くなっており、地域格差の拡大を感じる点としては、所得水準や雇用情勢を挙げる回答が上位を占めている。

第2節 地域の基本的な状況

(人口の動向)
 我が国の人口は、既に減少局面を迎えている。地方圏では、高度経済成長期のような三大都市圏への大規模な人口移動は見られないにもかかわらず、全国人口の減少に先がけて人口減少に転じたが、その背景には、高齢化の進行により人口の自然増加率の低下が進んできたことがある。

(所得や雇用の状況)
 一人当たり県民所得の地域間格差について見ると、昭和40年代後半以降ではそれまでと比べジニ係数は低下しているが、直近では平成14年度以降16年度まで上昇が見られる。有効求人倍率や完全失業率については、最近、景気の回復を反映して改善しているが、地域ごとに動きは異なっており、産業構造の違い等が影響しているものと考えられる。

(産業構造・産業立地の状況)
 就業者数や県内総生産の産業別構成比について見ると、東海等で第二次産業のシェアが高くなっているなど、地域ブロック間で大きな違いがある。産業立地については、東アジア地域等への生産拠点の移転が進んだものの最近では国内回帰現象が指摘されており、国内の新規工場立地件数は平成14年に過去最低にまで落ち込んだ後、最近では回復してきている。地域別に見ると、14年と17年の比較では全ての地域ブロックで増加しており、2倍以上の増加を示している地域もある。

第3節 地域の将来展望
 我が国は、人口減少・高齢化の進行や、経済のグローバル化が進む中での東アジア地域の急速な経済成長といった社会・経済構造の大きな変化に直面しており、これらが地域のあり方に大きな影響を及ぼしていく。このような中で、地域の活力をいかにして維持・向上させていくかということが、重要な課題となっている。

 我が国は、人口減少局面を迎えるなど、歴史的な転換点に立っており、このような状況の下で、地域の将来のあり方への関心が高まってきている。
 地域に対する国民の意識について、内閣府の「社会意識に関する世論調査」を見ると、「現在の日本の状況について、悪い方向に向かっていると思われる分野」として「地域格差」を選択した人の割合は、平成19年2月の調査においては26の選択肢中8番目の26.5%であり、前々回調査(平成17年2月)の9.7%、前回調査(平成18年2月)の15.0%から増加している。
 一方で、経済協力開発機構(OECD)が行った、一人当たりGDPや失業率の地域間格差に関するジニ係数(注1)を用いた国際比較によれば、我が国はOECD加盟国の中でこれらの地域間格差の最も小さい国の一つであるとされている(注2)
 
図表I-1-1-1 一人当たりGDPの地域間格差(ジニ係数)の国際比較

我が国の一人当たりGDPの地域間格差を、ジニ係数を用いてあらわすと、オーイーシーディー平均が0.15であるのに対し、我が国は0.09であり、オーイーシーディー加盟国の中で2番目に小さい値である。
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図表I-1-1-2 失業率の地域間格差(ジニ係数)の国際比較

我が国の失業率の地域間格差を、ジニ係数を用いてあらわすと、オーイーシーディー平均が0.19であるのに対し、我が国は0.11であり、オーイーシーディー加盟国の中で最も小さい値である。
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 そこで、本章では、我が国の地域の置かれている状況は、実際のところ、どのようなものであるのか見ていくこととする。
 まず、第1節では、国民が、自分の住んでいる地域の状況や地域格差についてどのように感じているのか、意識調査の結果から見ていく。
 次に、第2節では、地域の活力を基礎付ける人口、所得・雇用、産業に関するデータについて分析を行う。
 最後に、第3節では、地域の将来を考える上での大前提となる我が国の社会・経済構造の変化として、人口減少・高齢化の進展や、経済のグローバル化が進む中での東アジア地域の経済成長について取り上げる。


(注1)コラム・事例 ジニ係数とは参照
(注2)これらの比較においては、我が国の地域区分は47都道府県による一方、一部のヨーロッパ諸国においては地域区分が比較的細かくなっていること等、国による地域区分の単位の違いが結果に影響を及ぼしている可能性があることにも留意する必要がある。

 

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