第II部 国土交通行政の動向 

(1)船舶の安全性の向上及び船舶航行の安全確保

1)船舶の安全性の向上
 平成18年7月(一部は19年1月)のSOLAS条約(注1)の改正・発効に伴い、ばら積み貨物船や救命設備に関する安全基準の見直し等を行った。また、21年にSOLAS条約の改正・発効が予定されている損傷時の船舶の復原性能に関する技術要件について検討するとともに、船舶の安全のための技術的な規制の効果を海難事故情報等を基に客観的に評価する「船舶の総合的安全評価」を実施している。さらに、サブスタンダード船(注2)の排除のため、ポートステートコントロール(PSC)(注3)を厳格に実施している。
 このほか、平成18年3月に策定した「内航船舶の代替建造推進アクションプラン」に基づき、船舶の推進機関等の状態を陸上から遠隔監視・診断する「高度船舶安全管理システム」の実用化・普及に向けて取り組んでおり、「次世代内航船に関する乗組み制度検討会」において、乗組み体制の見直し等を検討している。

2)船舶航行の安全確保
 船舶の高速化等海上交通環境の変化に対応し、船舶航行の安全を確保するため、船舶自動識別装置(AIS)を活用した次世代型航行支援システムの整備等を行うとともに、平成18年度には、航路標識の新設を1箇所、老巧化した航路標識施設及び機器の更新等の改良・改修を609箇所、避難港の整備を下田港等6港で実施している。また、海図等の充実を図るとともに外国人船員に対する海難防止対策の一環として英語表記の海図を刊行し、海外でも容易に入手できるよう普及活動に取り組んでいる。事故原因の大半を占めるヒューマンエラー防止としては、「先進安全航行支援システム(INT−NAV)」(注4)の調査研究を実施している。さらに、近年、我が国近海において、水中翼型超高速船(注5)が航行中に流木や鯨類と衝突する事故が相次いでいることから、18年4月より関係省庁、学識経験者等からなる「超高速船に関する安全対策検討委員会」を開催し、同年8月には中間とりまとめを行うなど、ハード及びソフト面から事故防止に向けた方策について検討している。
 また、航海当直基準の一部を改正し、平成18年4月より、少なくとも一人の海技免状を有する船員が船橋航海当直を実施することを義務付け、これに伴う資格取得促進策を講じた。さらに、飲酒対策の強化として、安全管理規程に基づき呼気1リットル中のアルコール濃度0.15mg以上の状態における当直を禁止し、その違反は処分対象とするなどの対策を講じた。
 水先制度に関しては、日本人船員の減少、水先業務運営の効率化・適確化への要請の高まり等、近年における水先制度をめぐる社会情勢の変化に対応するため、「水先法」を改正(平成19年4月施行)し、より安全で、効率的かつ適確な水先サービスを安定的に利用者に提供できる総合的な仕組みの構築を図っている。
 また、マラッカ・シンガポール海峡を通航する船舶の増加や利用の多様化から、新たな国際協力の枠組みを構築する必要性が国際的に認識され、平成18年9月のクアラルンプール会議では、関係者間の対話メカニズム、航行援助施設の維持更新等の資金提供メカニズムの確立に向けた協力について合意された。我が国は、今後とも新たな枠組みの構築に向けて積極的に貢献していくこととしている。


(注1)海上における人命の安全のための国際条約
(注2)国際条約の基準に適合していない船舶
(注3)寄港国による外国船舶の監督
(注4)レーダー、AIS等より得られる情報から自船の進路上にある危険領域を特定し、ブリッジ(船橋)から見た海上の景観情報と合わせて統合的に表示するシステム
(注5)高速航行をする際に、水中翼から得られる揚力で海面上に船体を持ち上げて航行する船舶

 

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