参考資料 

(3)地域類型と復興のための施策

 今回の被災地は、地形、産業、くらし等の状況が極めて多様である。そこで、今後の各地域での復興の検討に資する観点から、代表的な地域をモデルとして取り上げ、それぞれの復興施策のポイントを概観的に提示することとしたい。
 なお、いずれの場合においても、「逃げる」ことを前提とした地域づくりが基本となるが、復興にあたっては、鉄道、幹線道路、公共公益施設、商業施設の移設・復旧等と連携した総合的な取組が必要である。さらに、広域的インフラについては、各地域の復興プランと十分に連携しながら、「多重化による代替性」(リダンダンシー)の確保という視点に留意しつつ、整備・再構築を図ることが重要である。
 あわせて、復興のための個々の事業については、その立案段階より、費用対効果や効率性の観点を重視し、真に必要かつ有効な事業となるよう、十分な配慮がなされるべきである。

【類型1】 平地に都市機能が存在し、ほとんどが被災した地域
 平地に都市機能が存在し、そのほとんどが被災した地域においては、住居や都市の中枢機能を高台など安全な場所に移転することを目標とすべきである。この際、コミュニティを一体的に維持することが重要である。しかしながら、移転先確保の状況によっては、同一地区内の住民が異なる場所に移転する可能性があることも留意すべきである。
 原則的には、高台移転を目標とすべきであるが、適地確保の問題、水産業など産業活動の必要から、平地の活用も避けられない。その際は、大規模津波発生時には被災の可能性があることから、できるだけ地域になくてはならない産業機能などのみの立地とする土地利用・建築規制を一体的に実施せねばならない。土地のかさ上げ、適切な避難計画に基づく避難路の整備・機能向上、避難ビル等の整備についても積極的な検討が必要である。

【類型2】 平地の市街地が被災し、高台の市街地は被災を免れた地域
 平地の市街地が被災し、高台の市街地は被災を免れた地域においては、高台の市街地への集約・有効利用を第一に考えるものの、権利関係の調整が難航するおそれがあるため、平地の市街地のすべてを移転させることは困難である。そこで、平地の安全性を向上させた上での活用が必要となる。
 その場合、大規模津波発生時には被災の可能性があることから、平地においてはできるだけ産業機能などのみの立地とする土地利用・建築規制を実施せねばならない。またあわせて、土地のかさ上げ、避難路・避難ビル等の避難対策を充実すべきである。

【類型3】 斜面が海岸に迫り、平地の少ない市街地および集落
 斜面が海岸に迫り平地の少ない市街地や集落については、地域全体に甚大な被害が発生する可能性がある。そこでは、海岸部後背地の宅地造成を行うことなどにより住居などを高台に移転することを基本とする。平地においては、産業機能のみを立地させ、住居の建築を制限する土地利用規制を導入すべきである。また、産業関係者の避難のための施設を建設せねばならない。
 さらに、高齢化に伴い、集落維持が困難なケースについては、集落の再編が課題となり得る。また、地形により防災対策を実施することが容易と考えられる地域を重点的に再整備することも検討すべきである。

【類型4】 海岸平野部
 沿岸に広く平野部が展開し、津波による浸水を受け農業関連を中心に甚大な被害が発生した地域においては、海岸部に巨大防潮堤を整備するのではなく、新たに海岸部および内陸部での堤防整備と土地利用規制とを組み合わせなければならない。
 その際、交通インフラなどを活用して二線堤機能を充実させ、住居などは二線堤の内側の内陸部など安全な場所へ移転することを基本とする。仮に、二線堤の海岸側に住居を設ける場合には、宅地の安全措置を講じなければならない。二線堤より海岸側においては、適切な避難計画に基づく避難路の整備・機能向上、避難ビル等の整備について、当然、検討が必要である。
 その上で、コミュニティ維持に配慮し、農地としての再生や既存集落の安全性を一体的に確保するよう、配慮すべきである。

【類型5】 内陸部や、液状化による被害が生じた地域
 内陸部の大規模盛土造成地が崩れた地区や、埋め立て地などの液状化により住宅・宅地に大規模な被害が発生した地区については、被災した住宅・宅地に「再度災害防止対策」を推進するとともに、都市インフラの補強、住宅の再建、宅地の復旧のための支援を行わなければならない。
 以上のすべての選択肢において、被災者生活再建支援法などの各種支援制度はあるものの、地域住民の負担が過大にならないようにすること、地方公共団体の地域づくりに要する負担が一時に集中しないようにすることの配慮が必要である。また、被災地における集団移転などを見越して、投機的な土地の先行取得等が行われることを防ぐため、土地取引の監視のために必要な措置をすみやかに講ずることが必要である。


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