第3節 将来を見越す

◯3 新技術の活用と維持管理・更新の担い手の育成

(1)新技術の活用による維持管理の効率化
 厳しい財政状況や技術者の不足といった制約のなかで、今後の社会インフラの老朽化に適切に対処していくためには、インフラの効率的な維持管理を可能とする新技術の開発・活用を進めていくことが必要である。そこで、以下では、点検・診断技術やモニタリング技術の分野において、効果的・効率的な維持管理の実現に向けて新技術を開発・利用している取組みを紹介する。

(高度な点検・診断技術)
 労働力人口の減少への対応や生産性向上を目的として、産業・生活のさまざまな場面でロボットの活用が進んでおり、ロボット産業は急速な成長が見込まれている。インフラの点検・診断においても、ロボットの活用が期待されており、例えば、東日本高速道路株式会社では、UAV(無人飛行体)システムを橋梁点検等に利活用できるよう検討を行っている。
 現在の点検作業においては、例えば高所で検査路の無い箇所で近接目視を実施するためには車線規制を設け、橋梁点検車を用いて点検を実施する必要があるなど(図表2-3-29)、高橋脚のコンクリート面や付属物、歩行困難な急斜面部や河川部等の橋梁点検には困難が伴う。UAVを導入することは、それらの作業の代替となり、得られた画像を元に打音点検を必要とする箇所を絞り込むことができるようになる。こうしたことにより、点検の効率化に繋がると期待されるとともに、点検技術者をより高度な判定が必要な箇所へ重点化できるようになるものと考えられる。
 
図表2-3-29 橋梁点検車を用いた点検状況
図表2-3-29 橋梁点検車を用いた点検状況

 検討に使用しているUAVシステムは、カナダのエリヨン・ラボ社が開発したもので、操作用タブレットに飛行ルート、高度、撮影ポイント等を入力するのみで操作が可能である。離陸後は、あらかじめ入力した目標地点まで自立飛行し、必要な動画や静止画像を自動的に撮影することができる。
 また、一度作成した飛行ルートは、保存することも可能なため、異なるオペレーターが操縦しても、同様のルートで飛行することができる。点検業務において、このような属人的影響を受けない再現性が確保できるということは、非常に大きな利点である。さらに、操作が簡便であるため、飛行自体には特別な技能が必要とならないことも、このUAVシステムの特徴の1つといえる(図表2-3-30)。
 
図表2-3-30 UAVシステム機器構成
図表2-3-30 UAVシステム機器構成

 
図表2-3-31 UAVシステムを用いた橋梁点検状況
図表2-3-31 UAVシステムを用いた橋梁点検状況

 
図表2-3-32 UAVシステムからの撮影画像
図表2-3-32 UAVシステムからの撮影画像

 2013年度には、群馬県渋川市の関越自動車道・利根川橋で、既存カメラにおける床版下面部及び桁下部の探査可能範囲や桁側面への接近可能距離等を確認することを目的として検証を行っており、今後も早期の実運用を目指して検討を進めていくこととしている。
 また、橋梁点検への活用を主として検討を進めているが、今後は交通渋滞時や災害時の調査等への活用も期待し、更なる実証実験を行っていくこととしている。
 別の分野として、近年、インフラの先進的な点検技術として開発・活用が進められているもう一つの技術に、非破壊検査技術がある。従来は、構造物内部の劣化状況を把握するためには、ドリルを使ってコンクリート構造物の試料採取を行ったり、コンクリート内の鉄筋破断について調査するために鉄筋を部分的にはつり出して注68調査を行うなど、調査のたびに構造物を傷つけなければならなかった。また、点検のために交通規制を行う必要があったり、人が入りにくい場所での点検には困難が伴ったりするなど、実施上も課題があった。非破壊検査技術とは、赤外線やレーザー、電磁波等を用いて、構造物の表面や内部の状態を点検・診断する技術であり、こうした技術を活用することで、点検・診断の効率化や質の向上が期待できる。
 
図表2-3-33 コンクリート埋込部の点検・診断技術の例
図表2-3-33 コンクリート埋込部の点検・診断技術の例

 非破壊検査の実証例として、2013年6月、国土交通省岐阜国道事務所では、岐阜大学社会資本アセットマネジメント技術研究センターとの連携のもと、橋梁の損傷個所を調べる非破壊検査を実施した。国道258号「羽根谷橋」において、調査機材を搭載した車両が時速約50kmで走行し、床版損傷のデータを収集した。この調査は、交通規制を伴わずに実施できることに加え、軽度な損傷も早期に発見することができることから、深刻な状況になる前に損傷箇所を発見することができる。また、補修が必要になる箇所を工事着手前に事前に把握できることから、工事をスムーズに実施することができ、工事に伴う交通規制を短縮することができる。
 
図表2-3-34 羽根谷橋の位置と調査車両
図表2-3-34 羽根谷橋の位置と調査車両

 このように、点検の質と効率性の両面で改善が期待される非破壊検査技術については、今後一層の普及と活用が期待される。

(モニタリング技術)
 技術者による点検で把握されるよりも先に、インフラに生じた変位や異常を常時察知することを可能にするモニタリング技術についても、開発・普及が進んでいる。
 2012年2月に東京湾に開通した東京ゲートブリッジでは、維持管理の省力化、ライフサイクルコストの低減、劣化メカニズムの分析を目的として「橋梁モニタリングシステム」を導入している。東京ゲートブリッジには、橋の左右の伸縮変位や中心部のひずみ、免震装置の変位等を測定する多くのセンサーが取り付けられており、センサーが計測したデータは、システムを通じて、ほぼリアルタイムに監視室にあるパソコンに表示される。また、異常発生時は警報で通知される。
 
図表2-3-35 橋梁モニタリングシステム
図表2-3-35 橋梁モニタリングシステム

 橋梁モニタリングシステムは、構造物の状態をリアルタイムに把握するだけでなく、開通時からのデータの蓄積によって、劣化メカニズムの分析に役立てることができる。例えば、重量貨物による疲労劣化は橋梁にとって深刻な問題だが、東京ゲートブリッジでは、床組に設置されたセンサーにより、車両重量等を測定・解析することができる。これにより、劣化を早めに察知し、予防保全を行うことができるようになる。今後のデータの蓄積により、橋梁のライフサイクル全体を通した劣化のメカニズムの解明にもつながっていくことが期待される。
 以上のように、日夜進歩する新技術をインフラの分野に活用することで、維持管理の効率化・高度化を図っていくことが重要である。

(2)維持管理・更新の担い手の確保・育成
(地方公共団体における担い手確保・育成)
 国土交通省が地方公共団体を対象に行った調査によると、維持管理・更新のために取り入れている人材育成・推進体制の整備に対する取組みとして、「全庁的に国や他機関等における維持管理・更新に関する知見習得に向けた研修制度を活用している」が約4割と高い割合となっている一方で、「特に取組は行っていない」が過半数を占めている(図表2-3-36)。「特に取組は行っていない」地方公共団体は、その他市区町村で割合が高くなっており、規模の小さい地方公共団体ほど維持管理・更新を担当する技術職員の数が少ないため、人材育成が進んでいないことが考えられる。例えば、道路部門で技術職員数別の人材育成の取組状況を見た場合、「研修制度の活用」「業務を通じた技術的知見の継承」のいずれも、職員数が少ない(いない)ほど、その実施割合は低くなっている(図表2-3-37)。
 
図表2-3-36 地方公共団体における維持・更新のための人材育成・推進体制
図表2-3-36 地方公共団体における維持・更新のための人材育成・推進体制
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図表2-3-37 技術職員数別の人材育成、推進体制整備の取組状況(道路部門)
図表2-3-37 技術職員数別の人材育成、推進体制整備の取組状況(道路部門)
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 また、「維持管理・更新にあたる職員(技術職員等)を積極的に採用している」や「維持管理・更新に専任する職員を配置している」といった推進体制の整備に関する取組みは総じて低い割合であり、その他市区町村でその傾向は顕著となっている。図表1-3-23で見たように、地方公共団体の土木関係職員数が総体的に減少し続けるなかで、維持管理・更新を担当する職員を新たに増員することが体制的に難しい状況が見てとれる。
 このように、地方公共団体において、維持管理・更新のための人材育成や推進体制の整備に関する取組みは十分に行われているとはいえない。人員上の制約があるなかでも、地方公共団体はインフラの管理者として維持管理・更新を適切に行う責務があり、そのための方策を模索していかなければならない。そのうえで、図表1-3-19で見たように、小規模な地方公共団体ほど老朽化状況の把握が進んでいないことも踏まえ、特に中小の市町村等において自助努力だけでは対応が難しい状況に直面した場合には、第2節で見たような民間の活用に加えて、国や大規模な地方公共団体等が、自らが保有するノウハウや技術、人材を提供して補完することが必要となる。

■国から地方公共団体への技術支援
 国土交通省では、管内の橋梁に重大な損傷等が発生した場合に、地方公共団体からの相談や要請に応じて職員を派遣し、緊急調査、応急対応方針に関する助言等を行う体制を整備し、社会インフラの維持管理・更新における技術支援を行っている。
 2012年4月、静岡県浜松市が管理する原田橋に損傷が発見され、全面通行止めとなった。迂回には2時間半を要するなど、通行止めに伴う地域住民の生活に与える影響が甚大で対応に急を要したため、浜松市は中部地方整備局に対して支援を要請した。要請を受け、中部地方整備局は対策支援本部を設置し、職員を派遣するとともに、国土技術政策総合研究所・土木研究所の橋梁専門家を現地へ派遣し、調査や復旧方法に関する技術的助言を行った。その後、現橋の利用可能性の検証や補修方法について提案を行い、提案された方法に基づいて補修工事が行われ、同年6月に供用が再開された。
 
図表2-3-38 原田橋の現地調査
図表2-3-38 原田橋の現地調査

 こうした職員の派遣以外にも、地方公共団体職員向けに橋梁保全に関する現場研修会や講習会等を行うなど、保全技術向上を図るための支援が進められている。

■都道府県から市町村への支援
 奈良県では、市町村が管理する橋梁の点検業務と長寿命化修繕計画策定を県が受託して実施する「垂直補完」を2010年度より実施している。これは、土木技術職員の不足等から、独自では長寿命化修繕計画の策定が難しい市町村を支援するための取組みである。具体的には、県の支援を希望する市町村について橋梁の点検を県の管轄土木事務所が行い、各市町村の長寿命化修繕計画を県と同じ考え方に基づき県道路管理課において策定している。これにより、市町村においても計画に基づく予防保全型の適切な維持管理が可能となるほか、市町村が独自で計画を策定するよりも費用を低減できるといったメリットも生じる。
 この垂直補完の推進によって、2012年度末に全市町村の橋梁点検が終了し、2013年度には橋梁長寿命化計画の策定が終了した(図表2-3-39)。今後は、長寿命化修繕計画に基づき本格化が見込まれる補修工事についても市町村への支援を検討しており、昨年度はモデルケースとして1工事を受託した。補修工事においては市町村職員を県に派遣してもらい、積算や現場管理等、工事の実践を通して人材育成も同時に進めることも考えている。
 
図表2-3-39 奈良県市町村の橋梁長寿命化修繕事業の進捗
図表2-3-39 奈良県市町村の橋梁長寿命化修繕事業の進捗
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 一方、橋梁に続いて2013年度には、道路ストック総点検の一環でトンネルについても垂直補完により9市町村15トンネルの点検業務を県が受託するなど、この取組みは広がりを見せている。
 こうした取組みに見られるように、高度な技術やノウハウを有する主体が、それを必要とする他の主体に対して提供し、共有していくといったインフラ管理者間の相互連携を進めていくことは、我が国全体の社会インフラの維持管理・更新の水準向上に寄与するものと考えられる。

(建設業における担い手確保・育成)
 第1章で見たように、建設業の就業者は減少を続けており、社会インフラの維持管理・更新を担う人材不足が懸念されている。この要因の一つとして、建設投資の大幅な減少等が技能労働者の賃金低下をもたらしていることが考えられる。建設業の売上高経常利益率の推移を見ると、1990年代前半は全産業平均よりも収益力が高かったが、バブル崩壊後は低下傾向が続き、2000年代以降は1%台の低水準で推移している。2011年度より、復興需要等でやや回復に向かっているが、依然として全産業や製造業の利益率を下回る状態が続いている(図表2-3-40)。
 
図表2-3-40 建設業の売上高経常利益率の推移
図表2-3-40 建設業の売上高経常利益率の推移
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 また、技能労働者の賃金について、建設業の男性生産労働者の年間賃金総支給額の推移を見ると、1990年代前半までは大幅上昇を続け、製造業の男性生産労働者との格差はかなり縮小した。しかし、その後は建設業の賃金低下が早期に始まり、かつ下げ幅が大きかったことから、格差は再び拡大した。近年は、賃金水準はおおむね横ばいであり、製造業に比べて建設業の賃金が低い状況が続いている(図表2-3-41)。
 
図表2-3-41 年間賃金総支給額の推移
図表2-3-41 年間賃金総支給額の推移
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 維持管理・修繕業務の収益性について、「維持管理・修繕業務に関する事業者アンケート」によれば、発注者別では、国、都道府県、市町村のいずれも「収益性は低い」と回答する割合が高くなっており、なかでも、市町村が62.9%と高くなっている。また、収益性の低い理由としては、約90%の事業者が「実際にかかる手間・コストに比べ、積算上の単価・歩掛が低く見積もられる」を挙げており、国が発注する維持管理・修繕業務では「業者間の価格競争が厳しい」が、都道府県、市町村が発注する業務では「発注規模が小さい」が二番目に多くなっている(図表2-3-42)。
 
図表2-3-42 維持管理・修繕業務の収益性(発注者別)
図表2-3-42 維持管理・修繕業務の収益性(発注者別)
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 積算上の単価について、発注者側の認識を見てみると、国土交通省が地方公共団体に対して実施したアンケートによれば、維持修繕工事で予定価格と実態の経費が乖離している原因について、「乖離しているという認識はない」という回答がもっとも多くなっている(図表2-3-43)。
 
図表2-3-43 維持修繕工事で予定価格と実態の経費が乖離している原因
図表2-3-43 維持修繕工事で予定価格と実態の経費が乖離している原因
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 これに対し、上述の事業者アンケートのなかで、地方公共団体が発注する維持管理・修繕に係る工事について収益性の低い要因を見た場合も、やはり「実際にかかる手間・コストに比べ、積算上の単価・歩掛が低く見積もられる」と回答する割合は高くなっており、工事のみの問題か、点検作業等の問題であるか引き続き把握が必要であるが、地方公共団体と事業者の認識にギャップが生じている可能性がある(図表2-3-44)。
 
図表2-3-44 収益性が低い要因(地方公共団体・工事関係業務)
図表2-3-44 収益性が低い要因(地方公共団体・工事関係業務)
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 このため、発注規模や工期の工夫に加えて、積算単価を実態に即して適宜見直していくことで、建設業が一定の収益性を確保し、将来に向けた設備投資や人材育成を行っていけるような環境づくりを進めていくことが、維持管理の担い手を確保していくために必要である。こうしたことから、2013年度に橋梁補修用歩掛の新設、維持修繕用歩掛の改定、間接工事費率の見直し等を実施したところである。
 維持管理・修繕業務の現場において、どういった人材(技能者・技術者)の確保が困難かを「維持管理・修繕業務に関する事業者アンケート」の結果をもとに見てみると、建設業者では「一般の技能者」「職長クラスの技能者」、建設コンサルタントでは「一般の技術者」が多くなっており、現場作業を担う人材の確保が難しくなっていることがわかる注69
 一方で、技術者としての人材は、建設業者では「一級土木施工管理技士」、建設コンサルタントでは「技術士」「RCCM注70」「コンクリート診断士」が多くなっている。「一級土木施工管理技士」は、建設工事のいわゆる現場監督を行う監理技術者の資格の一つとなっており、「技術士」「RCCM」は業務発注の際、受注者側が置くべき技術者の要件として求められる場合がほとんどである等、業務を受注するうえで必要となる機会が多い資格を持つ技術者が不足しているという結果となっている(図表2-3-45)。
 
図表2-3-45 維持管理・修繕業務において確保が困難な人材
図表2-3-45 維持管理・修繕業務において確保が困難な人材
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 これに対し、今後自社の従業員が取得することが有用と考えられる資格については、上記で不足しているとの回答割合が高かった技術者に加えて、建設業者で「コンクリート診断士」が多くなるなど、現状は不足していないが、今後を見据えた場合にニーズがあると考えられている資格があることがわかる(図表2-3-46)。
 
図表2-3-46 今後自社の従業員が取得することが有用と考えられる資格
図表2-3-46 今後自社の従業員が取得することが有用と考えられる資格
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 「維持管理・修繕業務に関する事業者アンケート」によると、事業者が行っている人材確保・育成のための取組みとしては「新規入職者の確保」「現従業員に対する教育・研修」「高年齢従業員の雇用延長」が多くなっている。従業員規模別に見た場合、全体の傾向として、規模が大きいほど人材確保・育成に取り組む割合が高くなっているが、「高年層従業員の雇用延長」については従業員規模による差異が見られず、規模の小さい事業者も実施しやすい取組みであることが見てとれる(図表2-3-47)。こうした高齢者の活用に引き続き取り組んでいくことに加え、長期的に見た場合には若年層の新規入職者を増加させることが必須となる。
 
図表2-3-47 人材確保・育成の取組状況(従業員規模別)
図表2-3-47 人材確保・育成の取組状況(従業員規模別)
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 技能者の確保という観点から、国勢調査において、技能者の詳細区分の年齢構成を見ると、職種によって年齢構成に違いがある。30代後半と60代前半に就業者の山ができているが、その大きさは職種によって異なるものとなっており、特に、大工・左官では50代後半から60代にかけての割合が突出して高く、年齢構成が高齢者に偏っている。このため、今後、技能者の人材確保を進めるに当たっては、こうした職種ごとの年齢構成の傾向を見据えながら、戦略的に取り組んでいくことが必要となる(図表2-3-48)。
 
図表2-3-48 技能者の職種別年齢構成
図表2-3-48 技能者の職種別年齢構成
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 また、第一生命保険株式会社が保育園児、幼稚園児及び小学生を対象に行ったアンケート調査によると、「大人になったらなりたいものは何ですか。」という質問に対し、「大工さん」と答えた割合は安定して推移しており、順位も上位10位以内を維持している(図表2-3-49)。
 
図表2-3-49 就きたい職業に関するアンケート(男子)
図表2-3-49 就きたい職業に関するアンケート(男子)

 このように、小学生以下の子どもにとっては、建設業は魅力ある職業として捉えられており、中学生以上に対して、その魅力を発信し、継続して関心を持ってもらうことも、若年入職者の増加につながると考えられる。このため、技能労働者が学生にものづくりの楽しさや喜びを伝える出前講座、工事現場の見学会、現場実習等に加え、適切な賃金が支払われるようにすること等の処遇改善等を通じて、引き続き若者の入職動機の形成、入職促進を図っていくことが必要である。
 さらに、現在外国人労働者の受け入れに関する検討が政府全体で進められており、建設業については、2020年度までの時限的措置として、外国人の技能実習修了者について、引き続き国内で建設業務に従事することを認めるなどによりその活用を図ることとされている。また、女性技能労働者についてもその入職拡大に向けた取組みが進められている。こうした取組みの効果や影響等を踏まえつつ、今後も建設業における技能者の人材確保に向けた取組みを検討していく必要がある。
 技術者の確保という観点では、資格制度を活用することも有効な方法の一つと考えられる。「維持管理・修繕業務に関する事業者アンケート」で社会インフラの維持管理において、今後新設された場合に有用と考える資格について質問したところ、建設コンサルタントでは、橋梁やトンネルといった「対象物別の資格」や構造物を維持・点検する「技術レベル別の資格」、建設業者では入札参加時に義務づけられる「業務範囲別の資格」や巡視パトロールや災害時の緊急点検の「目的別資格」を望む傾向が見られた(図表2-3-50)。これらの違いは、それぞれの業種において主に対象とする維持管理・修繕業務の具体的な内容の違いから生じると考えられるが、こうした資格が、業務上も有効に活用されるとともに、これらの資格を有することが社会的な評価につながることが明らかとなれば、これらの資格の取得を希望し、社会インフラの維持管理に関わる仕事に就くことを希望する若者も増加すると考えられる。
 
図表2-3-50 今後、新設された場合に有用と考える資格
図表2-3-50 今後、新設された場合に有用と考える資格
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 また、以上のような人材確保の取組みに加えて、一人一人がより高いパフォーマンスを発揮できるよう個々の能力を高めていくことが不可欠であるとともに建設業全体でより効率的な生産システムの構築に努めていくことが必要である。


注68 表面のコンクリートをはがして検査すること
注69 建設コンサルタントにおける「一般の技術者」とは、技術士やRCCMといった資格を有せず、上位の技術者の指示を受けて作業にあたる要員のことをいう。
注70 Registered Civil Engineering Consulting Manager。建設コンサルティング業務の管理技術者、照査技術者になるための資格。


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