第2節 観光先進国の実現に向けた取組み

■2 観光産業を革新し、国際競争力を高め、我が国の基幹産業に

(1)観光関係の規制・制度の総合的な見直し及び民泊サービスへの対応
 通訳案内士の絶対数の不足や悪質なランドオペレーターによる高額なキックバックを前提とした土産物屋への連れ回し等の事案に対応するため、通訳案内士の業務独占規制の廃止及び名称独占の存続、通訳案内の質の確保、ランドオペレーターの登録制の導入、地域限定旅行業に係る規制緩和等を内容とする「通訳案内士法及び旅行業法の一部を改正する法律」が平成30年1月4日に施行された。
 また、規制改革実施計画(28年6月2日閣議決定)及び「「民泊サービス」のあり方に関する検討会」の最終報告書(同年6月取りまとめ)の内容を踏まえ、適切な規制の下でニーズに応えた民泊サービスが推進できるよう、「住宅宿泊事業法」が29年6月に成立し、政省令の整備等を行った。

(2)産業界ニーズを踏まえた観光経営人材の育成・強化
 観光分野における人材の育成及び確保のため、トップレベル、中核レベル、実務レベル、それぞれのレベルで取組みを行った。
 トップレベルについては、我が国の観光産業全体を牽引できる人材を育成することを目的に、一橋大学及び京都大学の大学院段階(MBAを含む)に観光の経営人材を恒常的に育成する拠点の平成30年の設置に向け、産学官連携によるカリキュラム内容の検討や広報・啓蒙活動を含めたシンポジウム等を実施した。
 中核レベルの人材については、平成27年度に行った小樽商科大学での教育プログラムを水平展開し、28年度採択の和歌山大学及び大分大学、29年度に新規採択した青森大学、鹿児島大学、東洋大学、明海大学の6大学において地域の宿泊産業の経営力向上に向けた講座を開講した。
 実務レベルの人材については、観光産業の人手不足の対応として、観光産業を志す学生向け長期インターンシップの調査や、働きたいシニア・女性等の潜在労働力の活用促進を図るため、先進的なモデル事例に関するオンライン講座やセミナーを開催した。

(3)宿泊施設不足の早急な解消及び多様なニーズに合わせた宿泊施設の提供
 平成28年6月に発出した宿泊施設の整備に着目した容積率緩和制度の創設に係る通知に基づき、積極的な取組みを進めるとともに、(一財)民間都市開発推進機構(民都機構)による金融支援の対象に宿泊施設を追加した。

(4)世界水準のDMOの形成・育成
 観光地域のマネジメント及びマーケティングを担う法人であるDMO注1の全国各地での形成・育成に向けて、日本版DMO登録制度において198法人を登録するとともに、各地域の取組みに対し、情報・人材・財政金融支援の3つの側面から支援を行った。

(5)「観光地再生・活性化ファンド」の継続的な展開および次世代の観光立国実現のための財源の展開
 観光庁と包括的連携協定を締結している(株)地域経済活性化支援機構(REVIC)において、地域金融機関等と共同して平成29年度末までに12件の観光活性化ファンドを組成し、これらのファンドから39件の投融資を行い、観光地の面的な再生・活性化に貢献した。観光庁では、同機構の取組みに関連性の高い事業の情報提供、ファンド組成等のウェブサイトでの周知など、同機構の取組みに対する支援を行った。
 また、観光先進国の実現に向けた観光基盤の拡充・強化を図る観点から、観光促進のための税として国際観光旅客税が創設された(31年1月7日制度開始予定)。財源の使途に関しては、受益と負担の関係から日本人出国者を含む負担者の納得が得られ、先進的で費用対効果が高く、地方創生をはじめとするわが国が直面する重要な政策課題に合致するものに充てることとしている。

(6)オリパラ後を見据えた訪日プロモーションの戦略的高度化及びインバウンド観光促進のための多様な魅力の対外発信強化
 観光庁・JNTOは、欧州・北米・豪州からのインバウンドを更に促進するため、平成30年2月に、日本の旅行先としての認知度向上を目的とした「Enjoy My Japan グローバル・キャンペーン」を開始し、デジタル技術を活用しつつ、ウェブを中心に広告・情報発信を展開した。
 JNTO内にデジタルマーケティング専任部署を新設し、ICT経験人材を配置するとともに、ウェブサイトの刷新、アプリ・インスタグラムの運用開始、全ウェブサイトでアクセス解析を始める仕組みなどのデジタルマーケティングの基盤整備を進めた。

(7)MICE誘致の促進
 我が国のMICE国際競争力の更なる強化に向けて、平成29年7月に関係府省一体となって実施する施策について「関係府省MICE支援アクションプラン中間とりまとめ」を、同年8月にMICE業界、関係省庁・団体に係る施策について「MICE国際競争力強化委員会中間とりまとめ」を策定した。これらの取りまとめに沿って、同年11月に各コンベンションビューローの機能強化等を目指して「グローバルMICE都市・都市力強化対策本部」を新設する等、より一層取組を強化した。また、グローバル企業のビジネス活動を支える会議施設等の整備への支援を実施している。

(8)ビザの戦略的緩和
 観光ビジョンにおいて戦略的なビザ緩和の対象市場である中国とインドについて、申請手続の一部簡素化を行ったほか、中国については東北六県注2への訪問者に対する数次ビザの発給等、インドについては数次ビザ対象者の拡大を実施した。また、アラブ首長国連邦に対する事前登録制ビザ免除のほか、CIS・東欧諸国等に対するビザ緩和措置を行った。

(9)訪日教育旅行の活性化
 観光ビジョン等を踏まえ、JNTOに一元的窓口で訪日教育旅行の受入マッチングを行ったほか、台湾等の市場において教育関係者等の招請事業等を行った。

(10)観光教育の充実
 子どもたちが地元や日本各地の歴史や文化の魅力的な観光資源等を学習し、その魅力を自ら発信できるよう、先進的な取組事例を収集し、モデル授業の構築を行った。

(11)若者のアウトバウンド活性化
 日本旅行業協会にて「アウトバウンド促進協議会」を設立し、セミナー等を実施した。また、観光庁において、若者のアウトバウンド活性化について具体的な方策を検討するため、「若者のアウトバウンド活性化に関する検討会」を平成29年12月に立ち上げ、活性化方策の取りまとめに向けて検討会を3回実施した。


注1 DMO:Destination Management/Marketing Organization。
注2 青森県、岩手県、宮城県、秋田県、山形県、福島県の六県


テキスト形式のファイルはこちら

前の項目に戻る     次の項目に進む