第2節 自然災害対策

コラム 中小河川での透過型砂防堰堤整備や危機管理型水位計設置等「中小河川緊急治水対策プロジェクト」の推進

(1)平成29年7月九州北部豪雨による被害
 平成29年7月九州北部豪雨では、集中的な降雨に伴う同時多発的な斜面崩壊により洪水が大量の土砂や流木とともに流下したことで、土砂による河道の埋塞や橋梁への流木の集積による河道の閉塞が発生しました。また、河道の流下能力を超過した洪水が土砂や流木とともに河川の周辺に氾濫したことにより、家屋の倒壊や人的被害が発生しました。

(2)中小河川緊急治水対策プロジェクト
 平成29年7月九州北部豪雨を受けて設置した「筑後川右岸流域 河川・砂防復旧技術検討委員会」において、1)山地部の河川で大量の土砂や流木が発生し被害が拡大したこと、2)中小河川で度重なる浸水被害が発生していること、3)洪水時に河川の状況をリアルタイムに把握できなかったことが、九州北部豪雨等における課題として明らかになり、このような課題は九州北部豪雨等により被害が生じた河川と同様の特徴を有する他の地域の河川においても共通していると考えられました。
 このため、全国の中小河川の緊急点検を上記の3つの観点で実施し、その結果を踏まえ、全国の中小河川において今後概ね3年間(平成32年度目途)で実施すべき対策を、「中小河川緊急治水対策プロジェクト」としてとりまとめました。具体的には、土砂・流木捕捉効果の高い透過型の砂防堰堤注1等の整備、多数の家屋や重要な施設の浸水被害を解消するための河道の掘削・堤防の整備等、危機管理型水位計注2の設置を推進することとしました。
 
中小河川緊急治水対策プロジェクトの推進
中小河川緊急治水対策プロジェクトの推進


注1 土砂・流木捕捉効果の高い透過型砂防堰堤〜流木捕捉メカニズム〜
 土砂災害においては、豪雨や地震により山が崩れると土砂と共に流木が下流へ流れ出ることで家屋等への被害を増大させる事例が多くあります。その対策として、土砂・流木捕捉効果の高い透過型砂防堰堤の整備が重要になります。砂防堰堤は大きく不透過型と透過型に分けられ、共に流木を捕捉する機能を持ちます。特に透過型は水が貯まらずに流木と土砂が一体のまま捕捉出来るため、流木を効率よく捕捉出来ます。そのため、土石流のおそれのある箇所では、透過型砂防堰堤の整備を推進していきます。一方、恒常的に土砂が流れ出るような箇所では、不透過型砂防堰堤により、新たな斜面の崩壊や土砂の流出を防ぐ必要があります。
 
不透過型砂防堰堤と透過型砂防堰堤の比較

注2 官主導型オープンイノベーションによる危機管理型水位計の開発・実装
 危機管理型水位計(洪水時に特化した低コストの水位計)は、平成28年11月のオープンイノベーション参画に関する公募開始以来、平成29年1月のピッチイベント、同年3月の開発チーム結成、同年8月からの現場実証とスピード感を持って技術開発がなされ、同年12月には機器開発が完了しました。約1年というスピードでの機器開発を可能にしたのは、要求水準を国土交通省から具体的に明示したこと、企業等の長所を活かしたマッチング(12チームが開発に着手)が成立したことによります。この水位計の特徴は、従来型の1/10以下のコスト(1台100万円以下)、長期間メンテナンスフリー(無給電5年以上稼働)です。平成30年度内に国管理河川のうち緊急性の高い地点に設置するとともに、平成32年度までに都道府県管理河川での設置を促進します。


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