第2節 国際交渉・連携等の推進

■3 各分野における多国間・二国間国際交渉・連携の取組み

(1)国土政策分野
 韓国との間で定期的に局長級の二国間会合を開催し、国土・地域政策及び土地政策の両国間の類似課題に関する情報交換を実施している。今後は、ハビタットIIIにおける戦略的な国土政策の推進に関する国際的な合意を踏まえ、我が国の国土・地域政策の海外展開を積極的に推進していくため、アジア諸国、国際機関等による「国土・地域計画策定・推進支援プラットフォームを構築する。

(2)都市分野
 平成29年度は、韓国、中国、フランスとの間で都市政策に関する二国間会議を行った。また、EU域内の都市と世界各国の都市がペアを組んで都市間協力を行う「EU国際都市間協力プロジェクト」について、日本国内の自治体への周知や参加都市の選定に協力した。
 ミャンマーに対しては、同国建設省の要請を受け、都市・地域開発計画法関連施行規則の策定支援及び、ヤンゴン市内のバランスのとれた都市開発に向けたインフラ計画調査を実施するとともに、現地JICA専門家を通じて技術協力を行った。

(3)水分野
 水問題は地球規模の問題であるという共通認識のもと、国際会議等において問題解決に向けた議論が行われている。平成29年12月にミャンマーで開催された第3回アジア・太平洋水サミットに石井国土交通大臣が出席し、我が国の水問題に対処してきた経験を各国に伝え、日本の存在感を示すとともに、インフラシステム海外展開に貢献するため、水問題解決の我が国の技術をアピールした。本サミットの成果として、「ヤンゴン宣言」が取りまとめられ、持続可能な開発のための水の安全保障についての道すじが示された。この宣言には、我が国が発信した、「健全な水循環の管理」、「災害リスク低減のための事前投資」、「衛生と汚水管理」等が盛り込まれた。併せて、30年3月にブラジルで開催された第8回世界水フォーラムに秋本国土交通大臣政務官が出席し、閣僚級会議では、水防災意識社会の重要性、水循環の取組等、世界の国々の持続可能な発展に貢献できる日本の取組を発信した。取りまとめられた閣僚宣言文においては、水循環の視点の重要性等が認識され、災害対策に対する十分な財源の確保等が盛り込まれた。
 また、アジア河川流域機関ネットワーク(NARBO)と連携し、統合水資源管理(IWRM)の普及・促進に貢献している。
 さらに、韓国とは、水資源管理等に係る二国間会合を開催し、各国の現状や先進的取組みの共有等を行った。また、第3回日中韓水担当大臣級会合を開催し、3国が協力してSDGsの達成に取り組むことを共同で宣言した。
 このほか、地方公共団体、日本下水道事業団、国土交通省等による連合体である、「水・環境ソリューションハブ」が、セミナーや研修等を通じて、途上国に下水道事業のノウハウを提供している。

(4)防災分野
 世界の水災害被害の軽減に向けて、災害予防が持続可能な開発の鍵であるという共通認識を形成するため、我が国の経験・技術を発信するとともに、水災害予防の強化に関する国際連帯の形成に努めている。防災面での課題を抱えたインドネシア、ベトナム、ミャンマー等を対象に、両国の産学官で連携し、平常時から防災分野の協力関係を強化する「防災協働対話」の取組を国別に展開している。現在、既存ダムを有効活用するダム再生や土砂災害対策等の分野で、本邦技術を活用した案件形成を進めているところ。韓国とは、河川・防災分野について二国間会議を開催し、両国が直面している課題を共有し解決に向けた意見交換を実施した。また、国立研究開発法人土木研究所水災害・リスクマネジメント国際センター(ICHARM)では、総合洪水解析システム(IFAS)や降雨流出氾濫(RRI)モデル等の開発、リスクマネジメントの研究、人材育成プログラムの実施、UNESCOやアジア開発銀行のプロジェクトへの参画及び国際洪水イニシアチブ(IFI)事務局としての活動等を通じ、水災害に脆弱な国・地域を対象にした技術協力・国際支援を実施している。
 この他、日EU双方の防災対策の充実を目的として、EU防災総局と国土交通省の間で交換した書簡に基づき、実務者級会合を開催している。また、砂防分野においては、イタリア、韓国、スイス及びオーストリアと砂防技術に係る二国間会議を開催しているほか、ブラジル、スリランカに対して、JICA専門家の派遣等を通じて土砂災害からの警戒避難や、土地利用規制などの技術協力を行っている。

(5)道路分野
 世界道路協会(PIARC)では、各技術委員会等に積極的に参画し、今後の方針策定をリードしている。また、平成29年10月には、ドイツ・ボン市で開催されたPIARC年次総会において、「自動運転に必要な路車協調」及び「高齢化社会を支える自動運転サービス」の2つのトピックについて紹介した。1つ目の「自動運転に必要な路車協調」については、自動運転の基盤データとなる「ダイナミックマップデータ」を作成する上でのコンセプトを紹介するとともに、自動運転を実現する上で課題となるIC合流部での情報提供に関する官民共同研究の取組みについて紹介した。2つ目の「高齢化社会を支える自動運転サービス」については、日本の中山間地域が抱える課題について触れ、道の駅等を拠点にした低速の自動運転サービスを移動手段とする実証実験の取組みを紹介した。

(6)住宅・建築分野
 国際建築規制協力委員会(IRCC)等への参加など、建築基準等に係る国際動向について関係国間での情報交換を行った。
 二国間としては、韓国、ドイツ、中国との会合を開催し、住宅政策、省エネ建築、住宅金融等に関する情報交換等を行った。
 ミャンマー・カンボジアに対しては、両国間の覚書等に基づきJICA専門家の派遣等を通じて幅広く技術協力を行った。

(7)自動車分野
 平成27年の第13回日ASEAN交通大臣会合にて承認された、「自動車基準・認証制度をはじめとした包括的な交通安全・環境施策に関するASEAN新協力プログラム」に基づき、29年11月にアジア地域官民共同フォーラムを開催し、アジア地域における基準調和・相互認証活動について情報交換を行った。また、昨年に引き続き、同プログラムに基づくASEANにおける自動車の交通安全・環境保全施策策定プロセスを改善する事業を実施し、必要となる調査及び情報・意見交換を行った。

(8)海事分野
 海事分野では、IMOにおける世界的な議題への対応の他、局長級会談等を通じた二国間の議題への対応を行っている。平成29年度にはデンマークとの「海事分野の協力に関する覚書」に基づき局長級会談を初めて開催し、国際基準の執行、デジタル化等について情報共有や意見交換を実施した。この他、マラッカ・シンガポール海峡の共同水路測量調査事業の実施に関する覚書が、我が国と沿岸国の間で、10月に締結された。また、日ASEAN交通大臣会合で承認された「日ASEANクルーズ振興戦略」に基づき、マレーシア及びフィリピンにて現地旅行会社等を対象としたセミナーを開催した。
 また、28年の日ASEAN交通大臣会合で承認された「ASEANにおけるグリーンシップ戦略の策定を支援するためのプロジェクト」の一環として、29年9月、戦略の策定に向けた具体的な内容を検討するための第1回実務者会合をマレーシアにて開催した。

(9)港湾分野
 北東アジア港湾局長会議やAPEC交通WGを通じて、港湾行政に関する情報交換や、クルーズの促進等を実施している。また、国際航路協会(PIANC)や国際港湾協会(IAPH)等との協調を重視し、政府自らその会員となり、各国の政府関係者等との交流を行うとともに、各種研究委員会活動に積極的に参画している。特にPIANCに関しては、技術基準等の海外展開・国際標準化の推進にも積極的に取り組んでいる。
 さらに、平成29年7月には、LNGバンカリングを促進するための国際的な港湾間協力に関する覚書(28年10月に7カ国8者の港湾当局により署名)に、新たにバンクーバー港など3者が加わり、LNGバンカリング港湾の国際的なネットワークが更に強化された。

(10)航空分野
 平成29年8月、モンゴルにて第54回アジア太平洋航空局長会議が開催され、航空安全、航空保安及び航空管制等、航空全般に関するアジア太平洋地域各国の取組みについて意見交換を行った。
 また、同年9月、フランスとの「民間航空分野における技術協力に関する覚書」に基づき、大阪にて第3回日仏協力作業部会を開催し、今後も定期的な会合の開催など、協力を進めていくこととした。

(11)物流分野
 平成28年7月に開催された第6回日中韓物流大臣会合における合意に基づき、シャーシの相互通行の拡大、北東アジア物流情報サービスネットワーク(NEAL-NET)の日中韓における対象港湾の拡大やASEAN諸国等への拡大に向けた検討等、日中韓3国間の物流分野における協力を推進している。
 また、日ASEAN交通連携の枠組みの下、二国間政策対話において物流環境の改善に係る協議等を行っており、11月にはインドネシアと、12月にはフィリピンと、物流政策対話を開催した。また、5月には、ASEANにおける優秀な現地人材の確保のため、学生を対象とした人材育成事業をベトナムにおいて実施した。

(12)地理空間情報分野
 ASEAN諸国等に対し、世界測地系の導入や電子基準点網の統合的な運用に向けた支援を行っている。タイでは、平成27年2月の日タイ首脳会談での協力合意を踏まえ、29年6月に国土交通省とタイ科学技術省との協力覚書を締結し、同年12月の電子基準点網構築セミナーや、28年度から継続しての専門家派遣等を行った。ミャンマーでは、ヤンゴン管区の地形図及び電子基準点の整備を目的とした「ヤンゴンマッピングプロジェクト」へ、JICAの調査団に職員を派遣するなど、積極的に参画した。また、中国、韓国との間でも測量・地図に関する協力会議をそれぞれ開催し、測量技術・事業について情報交換を行った。

(13)気象・地震津波分野
 世界気象機関(WMO)の枠組みの下、気象観測データや技術情報の交換に加え、我が国の技術を活かした台風情報等を提供している。また、国際連合教育科学文化機関(UNESCO)政府間海洋学委員会(IOC)の枠組みの下、北西太平洋における津波情報を各国に提供している。

(14)海上保安分野
 北太平洋海上保安フォーラム(日本、カナダ、中国、韓国、ロシア及びアメリカの6カ国)及びアジア海上保安機関長官級会合(アジア20カ国・1地域)並びに二国間長官級会合、連携訓練等を通じて、捜索救助、海上セキュリティ対策等の各分野で海上保安機関間の連携・協力を積極的に推進している。
 また、海上保安庁は国際水路機関(IHO)の委員会等における海図作製に関する基準の策定、コスパス・サーサット機構における北西太平洋地域の取りまとめ、国際航路標識協会(IALA)の委員会等におけるVDESの開発に係る検討、アジア海賊対策地域協力協定(ReCAAP)に基づく情報共有センターへの職員の派遣など、国際機関へ積極的に参画している。このほか、開発途上国における海上保安分野の能力向上支援の取組み等を通じて、国際貢献を果たしている。
 さらに、アジア諸国の海上保安機関の相互理解の醸成と交流の促進を通じて、海洋の安全確保に向けた各国の連携協力、そして「力ではなく、法とルールが支配する海洋秩序」の強化の重要性について認識の共有を図るため、平成27年10月に開設した海上保安政策に関する修士課程「海上保安政策課程」に、アジア諸国の海上保安機関の若手幹部職員を受入れている。
 加えて、近年、アジア諸国における相次ぐ海上保安機関の創設などの社会情勢の変化から、海上保安庁に対する、外国海上保安機関への能力向上支援の期待が高まっている。これに的確に対応するため、海上保安庁は、平成29年度から国際的な能力向上支援に専従する「海上保安庁モバイルコーポレーションチーム」を発足させた。同チームは初の派遣活動として、平成29年11月にフィリピンにおいて、フィリピン、ベトナム、マレーシア、インドネシアの海上保安機関職員に対し、小型高速艇を用いた法執行訓練を実施した。今後も各国の海上保安機関の要請等に応じて、必要な能力向上支援を実施していく。


注 VHF Data Exchange Systemの略


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