(ア)概況


 (トン数、トンキロとも増加を続けた国内貨物輸送)
 7年度の実質GDP(2.2%増、6年度は0.5%増)を構成する経済指標のうち貨物輸送の動向に影響の大きな指標についてみると、民間企業設備投資は5.0%増(6年度は3.5%減)、公的固定資本形成は10.0%増(6年度は1.0%減)と増加に転じた。民間最終消費支出も2.7%増(6年度は1.5%増)と緩やかな回復傾向を示している〔2−1−12図〕

 

 このような状況のなかで、7年度の国内貨物輸送は、総輸送トン数で66億4,300万トン、対前年度比(以下同じ。)2.2%増、総輸送トンキロで5,590億トンキロ、2.1%増と、トン数、トンキロとも2年連続の増加となった〔2−1−13表〕

 

 輸送機関別でみると、航空(輸送トン数で5.4%増、輸送トンキロで6.0%増、以下同じ。)が3年連続して増加した。自動車は、営業用自動車(4.2%増、5.2%増)は6年度を上回る伸びとなったが、自家用自動車(1.4%増、0.0%増)は低迷を続けている。内航海運(1.3%減、0.1%減)は、6年度は堅調であったが、7年度はわずかながら減少となった。鉄道(2.6%減、2.5%増)は、近年はトン数、トンキロとも減少の傾向が続いていたが、7年度はトン数は減少したものの、震災による不通区間の復旧により輸送距離の長いコンテナ貨物の輸送量が大きく回復したことから、トンキロは増加した。
 この結果、7年度の輸送トンキロでみた各輸送機関の分担率は、鉄道4.5%、営業用自動車39.9%、自家用自動車12.8%、内航海運42.6%、航空0.2%となり、営業用トラックのみが拡大した〔2−1−14図〕。

 

 (実質GDPの成長率とほぼ呼応した貨物輸送量)
 貨物輸送量の動きとGDPに対する部門別寄与度の推移を見ると、4年度までの5年間、国内需要の動きに概ね呼応してきたトンキロベースでの輸送量は、5年度は、上昇に転じた国内需要に反して減少を続け、GDPの成長率を大きく下回ったが、6年度は、緩やかな回復を続ける国内需要を上回る率で増加に転じ、GDPの成長率を上回った。7年度は国内需要を下回ったが、GDPの成長率にほぼ呼応した〔2−1−15図〕

 

 これは、5年度が冷夏、長雨で、夏場の季節商品や発電用重油の需要低下に伴い、輸送需要が減少したが、6年度は一転して猛暑、渇水となり、これに伴う輸送需要が増加したことに加え、阪神・淡路大震災に係る救援物資輸送、代替輸送、輸出入貨物の転送、がれき等廃棄物輸送等が、輸送経路遮断等のマイナス以上にプラス要因として働いたものと見られる。このように、近年においては、輸送量の伸び率を通常の経済的要因による伸び率以上に増幅させる特殊要因が作用してきたものと考えられる。7年度は、震災時の緊急輸送需要の終息、震災復旧需要の発生などの増減要素が重なり合い、特殊要因間で打ち消し合ったが、景気が緩やかな回復局面にある中で、輸送量の伸び率はGDPの成長率にほぼ呼応することとなった。