(2) 変貌を迫られる我が国外航海運


 (国際競争力強化に向けた取り組み)
 海運サービスにおいては、サービス水準が船社間で差がなくなってきていることから、運賃水準が船社決定の最重要要因となっている。このため、邦船社はコスト削減に向けてコストのドル建て化を進めるとともに、運航費・船費・店費の実額の圧縮を図っている。
 また、貨物のアジアシフトに伴って三国間輸送の比重が高まっており、7年には定期コンテナ船部門における輸送量の約51%を占めるに至っている〔2−7−3図〕。このため我が国外航海運企業においては特に定期部門を中心に、本社及び地方支店のダウンサイジングにより店費を削減するとともに、主要海外拠点の代理店を自営化し、運賃決定権等を現地に移譲することにより海外における営業力の強化する傾向にある。

 

 (我が国外航海運の構造変化)
 厳しい国際競争に生き残っていくために、我が国をはじめとする先進国の外航海運は大きく構造変化している。
 我が国商船隊は、日本籍船、仕組船(日本船社が海外子会社に保有させ実質的支配の下に運航している外国籍船)及び単純外国用船(貨物の増減による船腹需要に対応して海外からチャーターしてくる外国籍船)の3種類から構成されているが、船舶の仕組化と外国人船員の配乗が進められた結果、日本籍船は大きく減少している〔2−7−4図〕

 

 船社機能についても、船舶保有部門はパナマ等の便宜置籍国に設立した子会社がその主体となっており、船員配乗についてもフィリピン等に設立した配乗会社(マンニング会社)を通じて外国人船員の配乗が行われている。また、船舶のメンテナンスについても分社化し独立させるのが一般的となっており、資本関係のない海外の独立系船舶管理会社に船員配乗と船舶メンテナンスを会わせて委託している船舶も多くなっている。さらに定期部門においては、営業機能の一部についても海外に移転する傾向にある。
 (貿易物資の安定輸送の確保)
 厳しさを増す経営環境の中で経営を維持するために、我が国外航海運の構造は大きく変貌している。しかし、貿易立国であり海運に大きく依存している我が国にとって、日本籍船及及び日本人船員の急激な減少傾向に歯止めをかけることが喫緊の課題となっている。
 そこで、同様の課題を抱える欧州等他の先進国におけるフラッキングアウト防止策を参考としつつ検討を行い、海上運送法の一部改正により、安定的な国際海上輸送の確保上重要な一定の日本籍船を国際船舶と位置づけ、税制上の優遇措置等を講ずることとした。さらに、本年3月より海運造船合理化審議会を開催し、国際船舶に関する制度の本格的な実施に向けた課題をはじめとして、最近における国際経済環境の変化を踏まえた外航海運のあり方について、幅広い議論を行っているところである。