(ア) 日本人船員の確保及び船員雇用対策


 外航海運については、昭和60年9月のプラザ合意後の円高を背景に、更に7年春の急激な円高等により日本人船員を配乗した日本籍船は急速に国際競争力を失いつつあり、日本籍船及び日本人船員は減少を続けている。こうした現状を打開し、日本籍船及び日本人船員の確保を図るための施策への取り組みが緊急の課題となっている。このような課題に対応するため、8年度より国際船舶に関する制度の第一歩が踏み出されだが、国際船舶に配乗される日本人船員のあり方等、なお関係者間で検討すべき課題が残されていることから、今後関係者間の一層の調整を図りつつ、総合的な施策を確立する必要がある。
 一方、内航海運においては、従来は漁船や外航船の船員が内航船員不足を補充する供給源となっていたが、最近はその転入が従来ほどは期待できない状況となってきている。一方、内航船員の高齢化の状況は依然として厳しく、若年船員を中心とした船員の確保が今後の内航海運の重要課題の一つとなっている。このため、労働条件・労働環境の改善、リクルート対策の強化等を骨子とした5年3月の「内航船員不足問題を考える懇談会」報告に沿って、フォローアップ会議を開催し、タンカー荷役の際の「船舶荷役安全確認表」の標準化、積荷の品質管理や航海毎のタンククリーニングといった特殊要因を抱えるケミカルタンカーに係る船員の労務軽減対策等の諸問題を検討する「ケミカル問題小委員会」の設置等の施策を実施しているほか、全国の地方運輸局等に設置した内航船員確保対策協議会等を活用し各地区毎に対策を講じている。
 また、内航船員の確保、経営基盤の安定・強化等にも資する観点から、新人船員の安定的採用及び教育訓練の実施体制の整備、協業化等による船員配乗の共同化、健全な(注)マンニングの育成等の諸課題について検討を進めることとしている。
 また、本州・四国連絡橋(9年度以降)及び東京湾横断道路(9年中)の供用開始に伴い発生すると予想される船員の雇用問題について、現在、関係者間において協議を行っており、職業転換を円滑にするための離職前職業訓練の実施をはじめとする諸対策について関係省庁とも十分な連絡をとりながら適切に対処することとしている。
 漁業については、国際的な漁業規制の強化及び漁業資源の減少等による減船の実施に伴い発生した漁業離職者に対し、職業転換給付金の支給等所要の措置を講じていくこととしている。また、漁業離職者の生活の安定、雇用の確保のため、これらの者の内航海運への再就職を促進するための「内航転換助成事業」を実施している。
 さらに、高齢化社会に対応するため、離職高齢船員の雇用の促進を図るための「離職高齢船員活用対策助成事業」を行っている。

 
(注)マンニング:他の内航船舶貸渡事業者の所有する船員未配乗の船舶を借り受け、これに船員を配乗し、内航運送事業者に貸し渡す内航船舶貸渡事業者。