(1) 地球温暖化問題への対応


 近年、石油等の化石燃料の消費増大に伴い、二酸化炭素等の温室効果ガスの大気中濃度が増加する地球温暖化問題がクローズアップされている。世界中の科学者で構成される「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」によると、21世紀の末には、地球全体の平均気温が2℃上昇し、海面が約50cm上昇するおそれがあるなどの指摘がなされている。
 6年3月に発効した「気候変動に関する国際連合枠組条約」(8年7月1日現在、締約国は159カ国。)は、当面の目標として、先進締約国が温室効果ガスの排出量を1990年代の終わりまでに従前のレベルに戻すことを掲げている。
 我が国においては、地球温暖化防止行動計画(1990年10月の地球環境保全に関する関係閣僚会議で決定)に基づき、@一人当たりの二酸化炭素排出量について2000年以降概ね1990年レベルでの安定化を図ること、A革新的な技術開発等により二酸化炭素排出総量の1990年レベルでの安定化に努めること、を目標として設定している。同計画では、運輸部門の対策として、自動車等のエネルギー効率の向上、低公害車の導入・普及、モーダルシフトの推進、トラック輸送効率の向上、公共輸送機関の利用促進、観測・監視、研究の推進を定めており、これに沿って施策を推進しているところである。
 しかし、我が国の二酸化炭素排出量は増加傾向にあり、このままでは1990年代の終わりまでに従前のレベルに戻すとする現在の目標の達成は困難な状況である。運輸部門における二酸化炭素排出量は我が国全体の約20%を占め、そのうち約70%が自家用自動車からの排出である。運輸部門においても、1994年度は二酸化炭素排出量が大幅に増加しており、二酸化炭素排出量の大部分を占める最終エネルギー消費においても、1994年度の消費量が大幅に増加している。このまま放置すれば、2000年には1994年6月に総合エネルギー対策推進閣僚会議で了承された「長期エネルギー需給見通し」で推計された2000年度の消費見込量を大幅に超過する状況にある。
 このような状況の中で、9年12月に気候変動枠組条約の第3回締約国会議が京都で開催されることとなり、同会議において2000年以降の新たな二酸化炭素等の排出削減の目標及び政策・措置が採択される予定である。
 地球温暖化問題をめぐるこのような状況に鑑み、運輸省では、運輸政策審議会総合部会に地球環境問題小委員会を新たに設置し、地球温暖化問題に対応した環境にやさしくエネルギー効率のよい交通のあり方について、審議を行っているところである。
 このような国内的取り組みと合わせ、第1回締約国会議において推進していくことが決定された各国が協力して二酸化炭素等温室効果ガスの排出抑制削減対策を行う「共同実施活動」についても、積極的に取り組んでいくこととしている。