(イ)船舶の安全な運航の確保


 

(a) 船員の資質の向上

 5年毎の海技免状の更新の際、一定の乗船履歴又は講習の受講等を要求することにより、船舶職員の知識・技能の維持及び最新化を図るとともに、9年2月に発効するSTCW改正条約に対応した法令の整備を推進する。
 また、今後においても、時代のニーズに即した船員を確保する必要があることから、教育内容のレベルアップを図る等その教育体制の一層の整備充実を推進する。  

(b) 船舶の運航管理の適正化等

 船舶の運航管理体制に関する国際規範である「国際安全管理(ISM)コード」は、各船社の運航管埋体制を確立することにより人為的ミスに起因する船舶事故を防止しようとするものであり、10年7月から国際航海に従事する船舶に順次強化されることとなっている。現在、同コードの実施に向け、審査手続きの国内法制化等国内における実施体制の整備を進めているところである。
 また、船舶の安全な運航を確保するため、船員法に基づき、船員労務官による監査等を通じ、発航前検査、操練、航海当直等の実施の徹底について指導監督を行う。さらに、旅客船の安全を確保するため、一般旅客定期航路事業者等に対して義務づけている運航管理規程の作成等の運航管理制度の徹底を図っている。  

 

(c) 外国船舶の監督の推進

 近年、サブスタンダード船の排除が国際的な課題となり、我が国においても、PSCの充実強化に努めている。特に、最近の人的要因による海難の増加により、関係条約が改正されたため、8年6月に船員法及び海洋汚染及び海上災害の防止に関する法律の改正を行い、操作要件(船員が設備の操作に習熟しているか等)等に関するPSCを新たに実施することとし、今後は実施体制の整備を進めることとしている。
 また、6年4月から実施されている東京MOUに基づき、我が国においてもPSCの強化を図っているが、今後もIMO等における国際動向を踏まえ、PSCの充実強化を図ることとしている。  

(d) 航行安全対策

 運輸省では、SOLAS条約の改正に対応し、高速船の新基準を定める「高速船(HSC)コード」を取り入れる等、国際的な統一基準に基づく国内基準の整備を図るとともに、内航船に対しても、近海航路の貨物船の新基準を策定する等、基準の全面的な見直しを行い、その合理化を推進している。また、危険物の海上輸送については、IMO及びIAEA(国際原子力機関)の定めた国際規則を国内法令へ取り入れ、安全確保に万全を期している。
 プレジャーボート等の船型及び操縦方法の多様化、海難の増加傾向に伴い、小型船舶操縦士免許取得者、指定養成施設等の関係者に対し、安全な航行に関する啓蒙及び指導の徹底を図っている。
 海上保安庁は、海上交通関係法令に基づく規制に加え、船舶の種類毎に所要の安全指導を行っている。また、例年9月に実施していた全国海難防止強調運動を海洋レジャー活動の盛んな夏期(7月16日〜7月31日)に展開し、海難防止講習会等を通じ、海難防止思想の普及・高揚を図った。
 さらに、船舶交通に影響を与えるおそれのある大規模プロジェクトについては、その関係者に対し、安全確保のための指導を行うほか、航行を制限する海域の設定等の措置を講じている。