2 鉄道事業の経営状況について


(1) JR

 JR東日本、JR西日本及びJR東海については、最近の景気動向等を反映し旅客需要の低迷による営業収入の減少、固定資産税等に係る承継特例廃止等によるコスト増があったが、支払利息の減少、修繕費等に係る経費削減等により、9年度経常損益は対前年度に比べて減少しているものの、JR東日本が872億円、JR東海が614億円、西日本が483億円の経常利益を計上し、概ね順調な経営を続けている。
 JR北海道、JR四国及びJR九州については、同様に旅客需要の低迷により、営業収入が減少したものの、要員合理化等による厳しい合理化施策を推進し、9年度営業損益は横ばい又は若干の改善となっている。しかしながら運用金利の低下による経営安定基金の運用益の減少等により、同年度経常損益では、JR北海道が36億円の赤字となり、JR四国、JR九州は黒字幅が減少しそれぞれ1億円、10億円という黒字となっている。
 JR貨物については、物流市場の低迷に伴う輸送需要の減少により9年度営業収入が引き続き減少傾向にあるのの、要員合理化等厳しい合理化施策の推進により営業損益はやや改善、経常損益も87億円の赤字であるが対前年度と比べるとやや改善傾向がみられる。

(2) 民間鉄道事業者

 大手民鉄(注1)に関しては、近年の景気動向等を反映しており9年度経常損益が対前年度12.7%減の1,290億円となっているものの、15社全体の経営状況としては黒字を続けている。一方、中小民鉄については、過疎化による運賃収入の伸び悩み等の理由から大部分の事業者が赤字経営になっており、9年度経常損益については116社全体(注2)で323億円の赤字となっている。なお、自立的な経営をめざして鉄軌道整備の近代化等を推進しようとするものについては、国においても設備整備費の一部を補助(鉄道軌道近代化設備整備費補助金)してきており、今後とも、自立的な鉄道経営をめざす鉄道事業者については地方公共団体とともに適切に支援していくこととしている。

(3) 地下鉄事業者

 地下鉄は、その建設費が巨額であり採算性の確保が困難な事業であるため、国においても従来より地方公共団体とともに地下鉄補助制度による補助を行っているが、帝都高速度交通営団の9年度経常損益は122億円と良好な経営状態であるものの、公営9事業者全体の9年度経常損益は1,667億円の赤字と厳しい経営状況にある。このため、今後とも地下鉄事業者においても経営の効率化等を推進する必要がある。


(注1)大手民鉄15社:東武鉄道、西武鉄道、京成電鉄、京王電鉄、小田急電鉄、東京急行電鉄、京浜急行電鉄、相模鉄道、名古屋鉄道、近畿日本鉄道、南海電気鉄道、京阪電気鉄道、阪急電鉄、阪神電気鉄道、西日本鉄道
(注2)中小一般64社+転換鉄道37社+貨物鉄道15社=116社


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