裁決では、船舶間の衝突の場合には適用される航法を示し、「見張り不十分」、「航法不遵守」などの複数の海難原因を摘示しています。
 その結果、海交法の航路内であっても、海交法が適用される場合や海上衝突予防法が適用される場合があります。特に海交法の避航等に関する規定は、互いに他の船舶の視野の内にある船舶についてのみ適用されるため、霧中などの視界制限状態における船舶の航法は、海上衝突予防法が適用されることになります。
 海交法の適用された事件は、203件中、81件で全体の4割を占めています。
 
(1)海交法が適用された衝突事件
 海交法の適用された衝突事件の内訳は、一般的航法である第3条(避航等)の航法が遵守されず衝突したものが50原因と最も多く、第11条〜第21条の「航路ごとの航法」不遵守で衝突したものが38原因となっています。なお、1つの事件において一般的航法と航路ごとの航法が重複して適用されている場合もあります。

 
海交法第3条の不遵守の内訳
 海交法第3条(避航等)の不遵守を分析すると、航路外から航路に入ろうとする船舶が避航せずに衝突した事件が18件と最も多く、次いで航路を横断しようとする船舶が避航せずに衝突した事件が17件となっています。
 
(2)海上衝突予防法が適用された衝突事件
 海上衝突予防法の航法が適用された事件では、「視界制限状態における船舶の航法」が37原因と最も多く、次いで「追越し船」35原因、「船員の常務」22原因、「各種船舶間の航法(動力船と漁ろうに従事している船舶)」21原因の順となっています。

 

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