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火山災害に係る検討について

4) 磐梯山
磐梯火山は、福島県猪苗代湖の北に位置する底径7〜10km、比高約1kmの安山岩質成層火山で、大磐梯山(標高1818.6m)、櫛ヶ峰(標高1636m)、赤埴山(標高1430m)の三峰から構成されている。
磐梯火山は、休止期をはさんで新旧二つの活動時期に大きく分けられ、古期山体の活動は、約25万年前のスコリア噴火注1)を最後に終了し、これ以後約17〜18万年間の活動休止期があった。磐梯火山の新期活動は、約7〜8万年前のプリニー式噴火注2)(葉山2火砕物)で始まり、約5万年前には古期山体の北側に安山岩質の小磐梯山体が形成された。約4万年前には古期山体の崩壊とプリニー式噴火(葉山1火砕物)が同時に発生し、南麓に翁島岩屑なだれと軽石流を堆積させた。崩壊跡地の馬蹄形カルデラ内には、その後、安山岩質の大磐梯山体が形成されたが、約2.5万年前には成長を停止している。磐梯火山ではこの後にマグマ噴火は記録されておらず、水蒸気爆発だけが起きている。堆積物として記録が残った水蒸気爆発は1888年噴火や806年噴火も含めて、最近5千年間で4回発生しており、その発生間隔は1100〜1700年である。また、山体崩壊は、約2,500年前にも小磐梯山の南東側で発生している。
1888年の山体崩壊と岩屑なだれは、小磐梯火山体から発生した。その前兆地震は噴火の1週間前から始まり、7月15日7時45分に小磐梯の西山頂で噴火が起こった。さらに噴火が起こり1,300mの高さまで黒煙が立ち上った。最後の噴火は、水平方向に吹きぬけ、小磐梯の北から岩屑なだれが発生した。岩屑なだれの平均速度は時速約80kmである。この岩屑なだれは7つの村を埋め461名の犠牲者をだした。主要な噴火は1時間程度で終了した。この活動の結果小磐梯の山頂部には1.5km×1.8kmの馬蹄形カルデラが形成された。この噴火のエネルギーは約1023エルグ(およそ広島型原爆150個分)と推定されている。また,山元(1994)により、1888年の山体崩壊と同時ないし直前に火砕流が発生したことが明らかにされている。噴火終了後,岩屑なだれ堆積物分布地域の川による侵食により泥流が発生した。また、凹地の部分には水が溜り多数の湖や池ができた。噴火の数年後になってもこれらの湖の決壊によって泥流が生じた(町田・渡部,1988)。
また、1888年岩屑なだれの給源火口の後退にともなって、1954年に107m3程度の小規模な岩屑なだれが発生した(町田・渡部,1988)。

(参考文献)
山元孝広 (1996)テフラ層序からみた磐梯火山の噴火活動史.地質調査所月報,47,6,335-359.
Hasenaka, T., Ui, T.,Nakamura, Y.and Hayashi, S.
(1992)Traverse of Quaternary volcanoes in Northeast Japan 1992 29th IGC Field Trip Guide Book,4 ,29-74.
町田洋・渡部真 (1988)磐梯山大崩壊後の地形変化. 地学雑誌,97,326-332.
山元孝広 (1994)磐梯火山最近5000年間の噴火史. 地球惑星関連学会合同大会予稿集,1994年大会,382.

注1)スコリア噴火: 堆積物にはさまれたテフラ(火山噴出物のうち、固体として地表に噴出される物質の総称)を利用して、地質現象の年代や順序の決定を行うことであり、火山灰編年学とも呼ばれる。

注2)プリニー式噴火: 噴火タイプの1つである。成層圏に達する巨大な噴煙柱が立ち上がり、風下では広範囲に軽石が降下する。また火砕流の発生を伴うことが多い。規模の大きな噴火では噴出源が崩落してカルデラをつくることがある。また噴火の末期には噴出率が低下して溶岩ドームをつくることもある。最近の事例では1991年フィリピンのピナツボ火山がこの形式の噴火をした。

5) 那須岳
那須火山群は、栃木県と福島県の境に位置する第四紀の火山群で、古い順に甲子旭岳火山、三本槍火山、朝日岳火山、南月山火山、茶臼岳火山で構成され、それぞれが独立した噴出中心を持っている。このうち、茶臼岳火山だけは現在なお常時激しい噴気活動を行っており、有史以来何回かの噴火記録のある火山である。
甲子旭岳火山は約50万年前、三本槍火山は約30万年前、朝日岳火山と南月山火山は約10〜20万年前に活動した成層火山である。また、那須火山群では過去に数回の山体崩壊が起き、約20万年前以前に黒磯岩屑なだれ、約14〜17万年前に那珂川岩屑なだれ、約3〜4万年前に御富士山岩屑なだれを発生させ、その堆積物は山麓の広い範囲を覆っている。那須火山群で最も新しい茶臼岳火山は、約1.6万年前から活動を開始し、溶岩・火砕物を大部分は東山麓に、一部は西側の那珂川上流部に堆積させている。最後の溶岩の流出は1410年に起きており、この溶岩で現在の茶臼岳山頂部がつくられた。その後、1881年7月1日には水蒸気爆発が起き、岩石換算体積1.5×106m3の降下火砕物が堆積した。茶臼岳山頂西側の火口(無間火口)と北西側の火口はこの噴火で形成されたものである。1953年から1963年にはこの火口内で、微噴火が起きている。
茶臼岳火山のマグマ噴火には、これに先行する水蒸気爆発で始まり、ブルカノ式噴火注)による降下火砕物の堆積と火砕流の発生を経て、溶岩流の流出で終了するパターンが明瞭に認められる。また、総マグマ噴出量が岩石換算体積で109m3を越える大噴火は、最初期(約1.6万年前)に起きただけで、その後は時間とともに一回のマグマ噴出量が小さくなる傾向が認められる。したがって、このような活動が続く限り茶臼岳火山の将来の大噴火の可能性は、極めて低いものと判断されよう。一方、総噴出量が岩石換算体積で108〜107m3程度の中噴火は、茶臼岳火山では数千年間隔で繰り返し発生しており、今後もその発生が予測される。中噴火ではブルカノ式噴火、火砕流、溶岩流を伴う確率が極めて大きく、山麓でも直接・間接の火山災害が発生しよう。ただし、このような爆発的噴火がいきなり始まるわけではなく、マグマ噴火の数年前から前駆的な水蒸気爆発が始まるものと予想される。最後の中噴火は1408〜1410年に起きており、今のところ約700年が経過したにすぎない。マグマの噴出を伴わない小噴火(岩石換算総噴出量が106〜107m3)の最近の5千年間での発生頻度は、数100年に1回の割合である。小噴火では山頂部周辺にかなりの降灰が予測され、谷沿いに土石流が発生する可能性が大きい。最後の小噴火は1881年に起きており、今のところ約百年が経過したにすぎない。これらに対し、総噴出量が岩石換算体積で105m3以下の微噴火は、現在の茶臼岳で最も発生の確率の高い規模の噴火であろう。最後の微噴火は1963年に起きているが、噴火地点(茶臼岳山頂西側と北西側の火口内)の噴気活動は現在も衰えていない。噴火の際には、火口の周辺数百m内で火山岩塊、火山礫の落下が予測され、山頂付近の登山者が被災する可能性がある。ただし、この規模の噴火では山麓で直接・間接の火山災害が発生することはほとんどない。

(参考文献)
山元孝広・伴雅雄 (1997)那須火山地質図.地質調査所.
山元孝広 (1997)テフラ層序からみた那須岳茶臼岳火山の噴火史.地質学雑誌,103,7,676-691.

注)ブルカノ式噴火: 噴火タイプの1つである。爆発とともに火口から上空に噴煙が立ち上がり、多量の噴石や火山灰を降下させる。

6) 高原山
高原火山は栃木県北部、宇都宮市の北約40kmの東北本州弧第四紀火山フロント上に位置する成層火山である。成層火山の下位には太田原火砕流を噴出した塩原カルデラが埋設されている。高原火山はおよそ更新世中期(約35〜40万年前)にその活動を開始し、火山帯の開析の程度やテフラとの被覆関係から更新世末期には活動を終えたと推定されている。噴出物の総体積は約55km3で、主に玄武岩安山岩の溶岩、火砕岩で構成されている。
一方、高原火山の北麓には、主成層火山体とは独立に西北西―東南東方向で長さ約4kmの割れ目群が存在する。これは、約6,500年前に起きたデイサイトの割れ目噴火で形成されたもので、この噴火では岩石換算体積で約107m3規模の溶岩と降下火砕物が噴出した。噴火割れ目内の新湯では活発な噴気活動が認められる。

(参考文献)
井上道則・吉田武義・藤巻宏和・伴雅雄 (1994)、東北本州弧,高原火山群における山体形成史とマグマの成因.核理研研究報告,27,2.

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