降下火砕物は広範囲に影響を及ぼす火山現象であり、降下火砕物の降り積もった厚さと被害との間には表4のような関係がある。火砕物の厚さが1cmを超えると、交通機能などに影響が出始め、10cmでは木造建物の被害が出始め、1mにも達すると建造物などに甚大な被害が発生する。
降下火砕物の厚さ | 主な被害 |
---|---|
1cm | 車が普通に走れない。交通機関に支障をきたす。 |
2cm | 気管系などの異常を訴える人が多くなる。 |
数cm | 交通機関がマヒする。 |
10cm | 古い木造建物などに被害が出る(屋根が落ちる)。 |
20〜30cm | 多くの木造建物などに被害が出る。 |
50cm | 半数以上の木造建物が倒壊する。 |
1m | ほとんどの木造建物が倒壊する。 |
(有珠山ハザードマップに加筆)
Blong(1984)は、過去の火山災害から、建物の上に降下した降下火砕物の厚さと被害の関係を示している。これによると、約10cm以上の降下火砕物が積もると屋根に何らかの被害が生じ、30cmを超える頃から建物の崩壊も見られる。表5にその関係を示す。
建物に降下した降下火砕物の厚さ(cm) | 被害状況 | 火山名 | 噴火年代 |
---|---|---|---|
1〜1.2 | 軽微な被害 | ウラウン (パプアニューギニア) |
1967 |
7.5〜12.5 | 屋根が崩れる。 | スフリエール (西インド諸島) |
1902 |
9.5 | 屋根の崩壊 | タンボラ (インドネシア) |
1815 |
15〜20 | クラーク空軍基地の航空機格納庫が崩れる。 | ピナツボ (フィリピン) |
1991 |
15〜25 | 屋根が崩れる。 | スフリエール (西インド諸島) |
1812 |
20 | 住宅と農場の建物が潰れ、数戸は完全に破壊 | サンタマリア (グアテマラ) |
1902 |
30 (50mmの火山弾を含む) |
エポカパで20%の建物の屋根が崩れる。 | フエゴ (グアテマラ) |
1971 |
46 | 家の倒壊 | スフリエール (西インド諸島) |
1902 |
110 | 教会のタイル・屋根等が崩れる | タール (フィリピン) |
1754 |
110 (熱い火山礫を含む) |
162戸のうち82戸の住宅が破壊(+52戸が焼失) | 浅間山 | 1783 |