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火山災害に係る検討について

c 堆積した火砕物が降雨により流下することにより発生する場合
降雨と融雪による水量を比較するために、上記aの融雪水量が仮に降雨によりもたらされたと考えると、ごく短時間に数100mmの降雨があったことになる。融雪に要する時間はよくわかっていないが、ネバド・デル・ルイス火山の融雪泥流の事例では主たる融解時間は15分程度であったこと(高橋、1989)、十勝岳泥流の際は爆発から下流が泥流に見舞われるまで40分しかかかっていないことなどから、数分から数十分程度と考えられる。一方、日本の1時間雨量の記録をみると、最も大きかったのが1982年の長崎水害の際の187mmである。したがって、火砕物による融雪水量はこれまでの記録的な大雨をはるかに上回る短時間降雨量に相当することになり、降雨により発生する場合の影響は、融雪により発生する場合の影響に比べ小さいものと考えられる。

d 多量の火砕物が河川をせき止めて自然ダムをつくりそれが決壊することで発生する場合
噴火火山の山体以外に流域をもつ河川が流下の途中で多量の火砕物の堆積によってせき止められ、泥流を引き起こす可能性がある場所としては、調査対象地域内では、松川トンネル付近(吾妻山)、深山湖下流(那須岳)、塩原ダム上流(高原山)が考えられる。これらの場所は、勾配が緩く狭い谷からなり、上流に大きな流域をもっている。
これらの地点で堰き止めが生じた場合にできる自然ダムの水量を次の方法で概算した。
堰き止め地点の土砂の厚さは、御嶽山の事例(大滝川で40mの厚さで堆積)を参考に、20、40、60mの3段階とした。それぞれの堆積厚さに応じた堰き止め土砂の頂部の谷幅、平均勾配は地形図より読みとった。谷断面は楕円形状をしているものとみなして計算し、平均勾配を考慮して天然ダム水量を概算した。
表13に示すように、天然ダムの水量は105〜106m3オーダーと推定される。ちなみに御嶽山の事例では1.3×106m3の貯水量であった。

表13 天然ダム水量
火山 堰き止め点想定位置 堰き止め土砂厚(m) 堰き止め土砂の頂部の谷幅(m) 堰き止め点での谷断面(m2 平均勾配 天然ダム水量(m2
吾妻山 板谷〜松川トンネル 20 100 1.6×103 0.025 4.2×105
40 150 4.7×103 0.025 2.5×106
60 200 9.4×103 0.025 7.5×106
那須岳 深山湖〜板室 20 100 1.6×103 0.027 3.9×105
40 150 4.7×103 0.027 2.3×106
60 200 9.4×103 0.027 7.0×106
高原山 下塩原〜塩原ダム 20 100 1.6×103 0.022 4.8×105
40 150 4.7×103 0.022 2.9×106
60 200 9.4×103 0.022 8.6×106

この天然ダム水量は同流域で求めた融雪水量よりも小さい。

以上の検討から、火山泥流・土石流をもたらす現象としては4タイプがあるが、そのうち融雪に起因する現象が最も多量の水を供給することとなると考えられる。

2) 到達範囲の検討
到達範囲の概略的な検討として、地形分類図から火山山麓で火山泥流・土石流の到達の可能性が高いと考えられる地形を抽出した。
地形分類図としては、全国で整備されている1/20万土地条件図を用い、危険度の高い地形として扇状地性低地を抽出した。扇状地性低地には、沖積低地(過去1万年間で形成された地形)のうち、扇状地と砂礫質の氾濫原が含まれており、これは過去に火山泥流・土石流の被害を受けた実績のある地形と考えられることから、火山泥流・土石流の到達の可能性が高い地形と判断されるためである。ちなみに、その他の三角州等の沖積地形は火山山麓には分布していない。
抽出にあたっては、対象火山の山腹または(3)の火砕流の影響範囲の検討で大規模火砕流が生じた場合の影響範囲に流域をもつ河川沿いの扇状地性低地を選んだ。
また、H/L=0.25(数千年に1回程度)による火砕流による融雪の範囲を起源とする泥流について想定した。
なお、火山泥流・土石流の到達範囲については、その発生状況、流下状況によって、氾濫の状況も変わってくるため、上記の沖積地形に常におさまるというわけではない。その詳細な検討のためには、流域の地形情報に基づいたシミュレーションを行う必要がある。

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