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パネルディスカッション

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  • 首都機能移転の経緯とパネリストのお考え

プロローグ

齋藤 氏

NHK解説委員の齋藤宏保です。最初に今回のパネルディスカッションのねらいについてお話をさせていただきます。東京に集中している首都機能をどこに移すのか。3つの移転先の候補地が答申されてから2年余りが経ちました。この間、移転先候補地や東京以外では首都機能移転に対する感心が薄れ、まだ決まっていないといいますか論議が続いていること自体に驚かれる人もいるほどです。

しかし首都機能移転は決まっていないどころか、実は今、とても重要な時期を迎えています。首都機能移転を審議している衆議院の特別委員会は、今年の5月には移転先候補地を1カ所に絞り、東京と比較した上で移転が適当かどうかを決めることを決議していまして、候補地選びが最終段階を迎えているからです。

そもそも首都機能移転というのは国の形をどうするのか、いわば国家100年の計と言えるものです。22世紀に向けてどんな国づくりをするのか、国と地方の関係はどうあるべきなのか、どう進めるべきなのか。今を生きる私たちに突きつけられた大きな課題であるように私は思います。そこで今日は首都機能の移転が本当に必要なのかどうか、どんな国づくりを目指すべきなのか、徹底的に議論してみたいと思います。

では早速パネルディスカッションを始めたいと思います。

首都機能移転の経緯とパネリストのお考え

齋藤 氏

まず本論に入る前に、そもそも首都機能移転の論議はどんないきさつで始まり、今、どうなっているのかVTRに簡単にまとめてありますので、是非それをまずご覧いただきたいと思います。

(VTR上映)

齋藤 氏

さて、今回の首都機能移転の論議の経緯がわかったところで、パネリストの皆さんは一体この首都機能移転についてはどんなお考えなのか、自己紹介を兼ねて一人ずつお話を伺っていきたいと思います。

最初に上智大学法学部教授の猪口邦子さん。よろしくお願いいたします。

猪口 氏

ありがとうございます。私は国際政治学を教えておりますが、基本的にはこの首都機能移転につきまして反対の立場をとっております。なぜかと言いますと東京は今、世界都市で、日本の長い歴史の中で日本という国が世界都市を持ったことは本当にこの時代が初めてです。世界にはロンドン、パリ、フランクトフルト、ニューヨークといった世界都市があります。世界には180を超える国々がありますけれども、世界都市を自分の国で持っているという国は本当に数が少ない。この幸運なることをやはり大事に発展させていくべきであろうと思います。

これからこの西太平洋の地域におきましても、主要な都市が都市の間で競争していくことになると思います。例えばソウル、シンガポール、あるいはシドニー、あるいは香港、やがて上海、こういう世界都市を目指す都市、そういうほかの都市と東京がどこまできちっと競争できていくかということが私にとっては大きな心配でありまして、むしろ東京のこの西太平洋地域におけます都市間の国際競争力、これをどう高めて、東京が世界都市として、これから何十年も国際社会の中で生き延びていくことができるか、こういうところにもう少し照準を合わせて、戦略的に日本として国力をレベルアップしていく必要があろうというふうに考えます。

齋藤 氏

猪口さん、今、世界都市というお話がありましたけれども、この世界都市という定義なのですが、日本には大都市というのが大阪もありますし名古屋もありますし、日本の世界都市というと東京だけなのでしょうか。

猪口 氏

まずここで自分の国が世界の中でどういうふうに見えるかということを、ちょっと客観的にとらえる必要があると思うのです。ファーイースト、極東という表現があり、アジアから見ると非常に不当な表現ですけれども、これはヨーロッパを中心に見て遠いという意味で遠い東と、ファーイーストと彼ら呼んだのですけれども、しかし結局やはり世界から見れば日本は遠い国なのだということです。

遠い、そして比較的小さな国であったこの国が、世界都市を自分で持つまでになった。そこで、世界から見ると日本というイメージはどういうふうに収斂するかというと、やはり東京というのがあるという感じだと思います。もちろん仙台も大阪も名古屋も立派な都市でありますけれども、世界から見たときに日本と結びつけることができるイメージというのは、そんなにたくさんはなかなか持ってもらえないというこの現実をやはり理解する必要があるのだろうと思います。もちろん、私たちは国内で考えればどの町もどの都市も非常に重要であるし個性的で魅力的なのですが、世界から見たときにああ日本にはこれがあるというものとして、そんなにたくさんのものを世界の側で認識してくれないという、こういうやはり日本の世界におけます大きさということについての等身大の理解ということをここで持つ必要があります。東京というものを少なくともイメージしてもらえる、西太平洋には、東アジアには東京という中枢があると、こう思ってもらえるということ自身が大きな財産なので、ここをやはり発展させていかなければだめであり、ここのイメージを分散化してしまうということであれば、日本と言ったときに具体的などういう町のイメージも浮かばなくなり、アジアといえば、シンガポールがあり香港がありソウルがあるというような時代というのは、もうすぐそこまで来ているのだということです。

齋藤 氏

いわゆる世界に通用する都市、国際競争力のある都市として東京のレベルアップが必要だということですね。

猪口 氏

そうです。強化し国際競争力をパワーアップして、そのためにいろいろなことをしなければならないけれども、同時にまたそれは東京一極集中を推し進めるとかそういうことではなくて、むしろそれぞれの町がどういうふうに活性化できるかは別の次元から考えるべきであって、せっかく出るくいがあるのに、それをたたきつぶして他のところでということは、国際競争と、グローバリゼーションの中で直面することを考えれば得策ではない。

要するにそれは国力の増進に必ずしもつながらないことであり、その場合の日本国全体がどういう影響を受けるだろうかということを心配します。むしろ日本全体の国力がパワーアップしレベルアップし、そして東京が世界の中できちんと認識される、そういう能力のある町として発展し、その結果日本全体が底上げされていくという、こういうイメージを描きます。

齋藤 氏

はい、ありがとうございました。

次に経営コンサルタントの堀紘一さん、お願いいたします。

堀 氏

僕思うのですけれど、世界の歴史どこを読んでみても何かで成功した人というのは、実は成功パターンによって必ず後で復讐されるのです。これは勝手にネーミングして言っているのですけれど、我々の歴史を考えてみても完全に今「成功の復讐」にあっているのだと思うのです。

戦後五十数年、うまく経済発展できました。灰の中から今日までよく来れたと思います。その間の僕たちは何をやったのかというと、限られた資源ですから、それをなるべく1カ所にまとめて有効に使いたいということで、日本の中では地方を捨てて東京に一極集中したわけです。それから天下の秀才なんていうのも、霞が関だとか、そういうところに一極集中したのです。それでそこで知恵を出してくれと、僕ら民間は霞が関の言うことを聞きますからと。これ結構うまくいったわけです。でももう10年ぐらい前から、明らかにこのモデルというのは行き詰まっているということがわかった。今やもう閉塞感でいっぱいですね。学校を出たってなかなか就職できない。それから定年も昔は60歳だったのが55歳ぐらいでやめてくれと言われるから、後どうしたらいいのか、まだ若いし働けるのだけれどどうしたらいいかわからない。みんなそういう意味では先行きに不安を持っているし、閉塞感がいっぱいです。

だから何か統計を見ると貯金だとかたくさんあるように見えるけれど、お金を使うのはいやだ、将来が心配だ。こういうときどうするのか、とても簡単だと思います。世界の歴史を見て学ぶことは、過去の延長線上に明るい未来なんてあったことは一度もないよと、ちゃんと世界史に書いてあります。ですから、今みたいに行き詰まって閉塞感があるときは、新しいことにチャレンジするしか僕はないと思うのです。

仮にどこか新しいところに首都をつくったとして、絶対成功するかと言われたら、未来のことで絶対なんていうことはあり得ないわけですから、それは成功させようと思ってやるのだろうけれど、結果失敗に終わるかもしれない。いいではないですか。そんな失敗ばかり恐れたら何もできないですよ。成功もできないですよ。今の日本というのは国を挙げて、政治もそうですね、大企業もそうですね、個人もそうですね。みんな失敗ばかり恐れている。でも失敗を恐れて何もしなかったら、だんだんだんだん弱くなっていってしまうだけですね。

ですから、私は新しいことにチャレンジする。そういう意味では首都機能の移転なんていうのは、今のビデオを見ててわかったのは、もう11年前から国会で話してる。10年以上も結論を出すのに考えるというのは、非常に慎重に吟味しているという言い方もあるけれど、何も考えていないと。ただいたずらに時間を過ごしたという言い方もあるわけで、もったいないと思います。世の中が変わっていくときに自分だけが変わらないでうまくいこうという考え方は、少なくとも人類の歴史を勉強する限りそんなことどこにも書いていないわけです。

僕たちは今、変わらなくてはいけないのだと思うのです。もちろん、首都機能移転するときに猪口先生がおっしゃるようにマイナスもあるかもしれない。私はどんなことをやってもマイナスが全くないことなんてあるわけないと思っています。物事というのは、新しいことをやればいいところもあれば悪いところもある。問題はいいところと悪いところを考えてどっちの方がプラスが大きいか、マイナスが少ないか、そういうことだと思うのです。そういう意味では、今、日本は新しいことをやるべきである。

それからもう一つ、ちょっと辛口になってしまうけれど、どのみち土木建設業者が予算くれ、予算くれと言うわけです。しようがないから予算つけて、ただ道路をひっくり返して交通渋滞を起こしてまた埋められても、せっかく払っている税金、僕は実感としてプラスないです。どうせ土木建設業者にこの国の場合は四十何万社か五十万社もあるというのですから、お金を払わなくてはいけないなら、多少は役に立つことに使いたいです、この何兆円もの予算を。そういう意味では同じ道路を毎年掘り返すのではなくて、何か少しでも付加価値のつくところに使うということで言えば、新しい首都をつくるということは、とてもいいことではないかという具合に思います。

齋藤 氏

はい、ありがとうございました。

続きまして、人材総合プロデュース会社社長の奥谷禮子さん、お願いいたします。

奥谷 氏

私は以前は首都機能移転調査会の部会メンバーでドイツに行ってボンとベルリンを見まして、首都機能を移転すればどれだけ効果があるかみたいなことの視察もしましたけれども、そのときは大変首都機能移転するということは日本にとってメリットがあるかなという期待はしていたのですが、今もう時間が経ってみまして、今の時期としての緊急の課題ではないなと思います。かつての政治と経済がかなり停滞していたわけで、あまりにも停滞したために目に余って何がしかの突破口を開く必要があったと思います。その1つの方策として首都機能移転というのが起爆剤になるのではないかというのがあったと思うのですけれども、首都機能を移すために国の方向を定めるデザインが必要になってくるわけで、今の省庁の規模とか中央と地方の問題とか、今、地方分権法案とかという形で出てきていますし、国の今の借金体質の変換などなどから考えて、物理的な変化といいますか、物理的に首都機能を移転させることを優先させることよりも、制度的な変化を誘因する方が先ではないのかな。

何かといいますと小泉さんが出現したということがやはり一番大きいと思うのです。小泉さんが総理になられたということで政治主導の改革といいますか、構造改革をやるということが一番の問題で、そのために首都機能移転をすることによって構造改革ができるということは、別に物理的に移さなくても小泉さんという1人のリーダーが、これから大きな構造改革を引っ張っていく。そうなってきますと、あえて首都を移転するといいますか、ハード的な移転をする必要性という事が緊急な問題なのかなという疑問を持っていることと、それと、今の狂牛病の問題もありますけれども、各省庁の縦割りの問題とか、これから農水省とか経産省含めて省庁のいろいろな仕事も重複しているようなところ、こういったものの整理も何もつかない中で、ニュージーランド並みの行革といいますか、そういったものが本当に構造改革的に小さな規模でなされるような形になって、そして変わるというのなら別ですけれども、そういった問題も何もなく、ただ移転すれば何とかなるだろうというところにやはりちょっと疑問を持っているということと、それと今、一極集中というものが大変問題になっていましたけれども、かなり今東京に人も戻ってきています。むしろ分散したものが、東京人が戻ってきていますし、その一極集中の問題ということもそれほどの大きな問題に、今後これからの21世紀でなっていくのかなということもあります。それから防災の問題もあります。首都の防災ということもあります。これも東京都だけが防災面で一番安全であればいいということも問題で、そういったもろもろの問題を考えていきますと、今、なぜ緊急で移さなければならないのかという、緊急の課題としての説得性、国民に対する説得性がかなり乏しいのではないかという、そういう感じがいたします。

ですから、経済のこういった低迷期において、十何兆円というお金を使ってまで動かさなければならない説得性というものが、果たしてどこにあるのかなというのが、今の私の疑問なのです。

以上です。

齋藤 氏

緊急性に対する説得性が乏しい、緊急の課題ではない。最終的には必要であるというお考えなのですか。

奥谷 氏

いえ、最終的には私は構造改革を含めて、行政改革、そういったものがきちっとなされれば、首都は東京でなければならない、あるいは移さなければならないということではなくて、今まで何が問題かと言いますと、中央集権で余りにも官僚国家といいますか、官僚が主導権を握ってそこで地方に対していろいろな采配を振るっていた。これから地方分権といいますか、北川さんのような知事がどんどん出てきて、そして地方にきちっとした権限が与えられていけば、中央集権である必要性がもうなくなってくるわけですから、そうするとあえて首都が東京であるかないかなんていうことは全くもう問題にならなくなってくるのではないかなという、そういう気がするのです。

齋藤 氏

いわゆる機能を移すのではなくて、制度を変えればいい、そういうことですか。

奥谷 氏

そういうことです。制度の問題だと思います。

齋藤 氏

はい、ありがとうございました。

それでは、三重県知事の北川正恭さん、お願いします。

北川 氏

緊急の課題ではないというご意見がありましたが、首都機能移転は緊急の課題だと考えています。この5月には国会で3カ所あります候補地の絞り込みをすると国会決議で決められているわけでございますから、それに対してどう答えを出すのか、国会の責任において、もうやらざるを得ない状況にあるということが1つあると思います。

私は首都機能移転賛成の立場で今日は出席させていただいています。今までの日本のサクセスストーリーといいますか、戦後築き上げてきたキャッチアップ型、集権官治型の国家構造が見事に機能して、そして50年たった時点で行き詰まり閉塞感が満ち満ちているというのが今日の我が国の状況だと思います。

こういうようなことから考えますと、それぞれの人々がどこで悩んでいるかと言いますと、みんな脱皮しよう、みんなゼロからスタートとしようと思いつつも、現状追認型の思考に陥り、そこから脱皮できないために、閉塞感からなかなか脱却できないのだということを痛切に感ずるわけです。だから明治維新以来、あるいは特に戦後に強化された東京一極集中、集権官治システム、これが見事に機能したわけですが、その成功例がすごければすごいほど、結局そこから抜けきれていないということでございます。

言い方を変えれば、既得権益の固まりみたいな東京で、今日のこの会議もこれ東京で開かれているわけですけれども、これがごく当たり前と思うところに閉塞感が満ちているのだということを考えますときに、一番のもとの首都機能を一遍移転してみようではないかという大ロマンが私は1つ決定的にいるのだと、そんな感じがしているわけです。徳川時代に、徳川の閣僚という立派なその当時の指導者の皆さんが、1853年のペリー来航以来15年間もがき苦しんでいろいろなことを考えたのですが、結局は薩長土肥という人々の手に移らない限り維新はできなかった。今日、そういった大議論を国民の中でしていかなければいけない、そういうことこそ国会でやっていただけたらなというのが私の強い要望です。国を本当に1からゼロベースで直すためには、1つは過去の負の遺産というものをどう取り払っていくかということを考えなければなりません。リストラをやるとか様々な改革をやるというのはそうでしょう。それはそれで必要ですけれども、それだけでは縮小になっていく可能性がありますから、一方でそういったことはきちっと負の遺産として整理して、みんな夢を持ちましょうよと。アメリカのアポロ計画のごとく国民みんなに夢を与えてその夢を実現するためにみんなが努力する、そして世界の技術の粋を集める、そしてグレートアメリカができたように、我が国にも夢が必要なのです。この東京が世界都市と言われましたけれども、本当に世界に誇れる世界都市でしょうか。ひょっとすると首都機能を移転して、本当にきれいな東京をつくった方がよほど世界都市のイメージアップに僕はつながっていくと思うのです。

したがって、国を挙げて、この国の20世紀をつくり上げてきたキャッチアップ型のシステム・体制から本当に脱却して、もう一回すばらしい日本の国を、新価値を我々の手でつくっていこうと、こういう情熱が満ちあふれたときに日本の閉塞感はとれるのだと感じていますから、国会、政治のありかたも利害調整に終始するのではなく、理念達成型、目的達成型に変わらなければならないと考えています。

だから本当の意味の大戦略国家というものはいかなるものか。あるいは地方分権と中央集権の話をすれば、中央の本当の仕事というのは一体何のか。そういったことを考える際にはまず形を変えるということが重要なのです。すなわち、首都機能も、まず場所を移す、本当に移しかえるという情熱なり勇気なりが出てきて、はじめて21世紀新パラダイムができていくのだと思っておりますので、5月の3候補地絞り込みに向けて、全国民の方々が大議論するために今日の日が本当にスタートの日になってくれればなと、そう思っています。

齋藤 氏

先ほどのお話の中で集権官治とありましたが、皆さん文字ならある程度おわかりになると思うのですが、耳で聞くとなかなかわからないと思います。そこで、集権官治についてちょっと補足していただけますか。

北川 氏

中央集権で官僚が治めるという意味です。これを首都機能を移転することによって分権自治、すなわち地方分権をして自らが治めるという自立性の高い地域社会の集合体が国だということに変えていかなければなりません。官囲み型というのはキャッチアップを目標として護送船団方式で国づくりを進めてきたときには機能してきたのですけれども、50兆円の予算で500兆円のGDPをコントールすることはもう全く不可能な時代になったということを申し上げたい。東京にあって集権、すなわち権力を集めて官僚が治めるというようなことが続く限り閉塞感は全くとれないと、そう思うのです。

齋藤 氏

はい、ありがとうございましました。

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