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パネルディスカッション 首都機能移転の是非

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首都機能移転の是非

齋藤 氏

さて、かなり時間が押してきておりますので、ここでずばり首都機能移転の是非についてちょっと議論をしてみたいと思います。まず、堀さん、21世紀を見据えて、やはり今本当に首都機能移転は必要なのか。猪口さんとか奥谷さんは、その緊急性というのでしょうか、本当に必要だというニーズが今ないのではないかと。いわゆる理屈で動くべきではないというようなお話があると思うんですけれども。

堀 氏

世の中には緊急なものと重要なものがあると思うんですね。だれしも何かいろいろなことをやるときに、一番最初にやろうとするのは緊急で重要なことですよね。それが片づいたら2番目にやるのは、重要ではないかもしれないけれども緊急なことをやらなければいけないから緊急なことをやりますね。そうすると3番目にそれが片づいた後にやるのが、緊急ではないけれども重要度の高いものですね。今の順番でいくと、大概の人生とか組織というのは1番や2番をやっている間に3番をやる時間がないものですから、重要だけれども緊急ではないものはどんどん優先順位が下がって、結果、10年たっても20年たっても手がつけられないということで、これが一番僕は国家とか組織が滅んでいく図式なんだと思うんですね。

物事を緊急度だけで考えるのは僕は間違いだと思います。物事というのはやはり重要度で考えるべきであって、本当に重要度の高いものは緊急度が低くても、例えば勉強しなくてはいけないなと思ったら、明日試験ではなくても今日から少しずつ勉強するという態度がなければ、その試験というのはなかなか受からないわけですよ。前の晩になって、明日試験だからといってやればそれは多少の効果はあるかもしれないけれども、そういうのは一夜漬けといいまして、余りうまくいくことではないと思う。それで、首都移転なんていうと大変な話に聞こえますけれども、日本なんて堺屋先生が先ほど講演でおっしゃられたように、実は日本は世界でもまれに見るほど首都移転を歴史上何遍も繰り返してきた国なんですね。そういう意味では、江戸幕府からだから三百数十年はたまたま東京だけれども、そろそろもう今の行き詰まりがあるんだから移すと、これぐらいのことができないようだったら、僕は政治というのは余り意味がないのではないかなと思います。これぐらいのこともできないで政治だと言っているようでは、それは政治不信になってしまって、世論調査をしても支持政党なしと書く人ばかりになってしまうのは、ある意味では当たり前だと思います。だから、僕は与野党問わず、今の日本に何が必要なんだ。重要だけれども緊急ではないことを我々は余りにもほったらかしてきたのではないか。あるいは、我々は何々のリスクがあるとか、こういうおそれがあるということで、余りに新しいことにチャレンジしてこなかったのではないか。こういう反省を踏まえて、やるべきことはやるんだというような新しい時代をつくっていく姿勢というものを見せてもらいたいと思います。

齋藤 氏

堀さん、その首都の移転の是非を語るときに、日本というのは集積のメリット、東京、これがある意味でリーダー的な存在として日本を引っ張ってきたのではないかと。首都機能移転が、その活力をそぐのではないか、あるいは国際競争力が低下するのではないか、そういう意見がありますけれども。

堀 氏

ですから、過去20世紀までは東京に一極集中することによってメリットがあったということは僕も賛成なんですよ。ただ、僕は時代が変わったんだと、だから今展開しなくてはいけないと言っているだけで、では東京から首都機能がなくなったときに、東京にそんな魅力がなくなるかというと、それは僕は政治や行政の過大評価だと思います。政治や行政だけが国家ではありません。国家の基本をなしているのは、一人一人の労働者であり、一つ一つの中小企業だとか大企業、そういう働く人たちなんですね。そういう意味では、首都の機能がなくなったって、東京にはまだまだたくさん経済活動を営む組織や何かがあります。そういう意味では何ら心配がないと思います。むしろ、外国の要人が来るたびに首都高が一時的に閉鎖されたりして経済活動を阻害しているというようなこともありますね。これはどこかへ首都がいってくれたら、外国の要人が来られてもそちらの方に直行便で行っていただければいいわけで、東京は普段どおりの経済活動をやっていればいいということでいいと思うし、それから地方の人だって、東京に用事があるのではなくて、霞が関に陳情するためにわざわざ東京にお越しになる方もいるわけですね。その方々は、新しい首都に行っていただければいいということで、意味のない集中というものを避けられるということはとてもいいし、その程度の50数万人が東京から全部欠けるとも思いませんが、仮に50数万が東京から新首都に全部引っ越しされたとしても、そんなことで東京がへこたれるとは思いません。

齋藤 氏

ありがとうございました。賛成の立場から続いて北川さんお願いします。

北川 氏

東京の集積のメリットというのはあったんですね。だけれども、2次産業を中心として政官財が護送船団を組んですごい機能を発揮してきたというのは認めますが、今はそれが全く行き詰まってしまったということを明確に理解し、そのあたりから抜本的に変えなければいけないということを私は言いたいと思います。

もう一つは、集積のメリットというのは、実は経済的効果というのが圧倒的に多いと思うんですね。これからの成熟した社会においては、文化の占める比重が非常に高くなりますが、私はこれまでの政治行政は経済に資するためのものであり過ぎたと思っています。経済はとても大切ですから、自由に経済が動き回れるように規制緩和をすることは必要でしょう。同時に、これまで文化をつくり上げるうえで、実は東京の集積はものすごく大きなマイナスであったわけですから、こういう意味でもそのあり方を本質的に変えていかなければならない。

成熟国家にふさわしい国づくり、文化に資するための国づくりをどうしていくかと考えたときに、いわゆる護送船団、政官財の癒着といってもいいかわかりませんが、ここから政なり官なりの一部が抜けたときに、初めて今度は東京の文化に奥深さというものが生まれてくる、あるいは経済が生まれ変わる。そのときに官に頼っていて、一般の経済人の方も官が一番頼りないとか何とかいろいろ言われながら、それに頼らざるを得ないというのが現在の国民の意識ですが、ここを改革しなければ日本に明日があるんですかねということを実は申し上げたい。ですから、護送船団よさようならなんですね。そして、緊張感のあるパートナーシップといいますか、それぞれが自立してやっていこうよというようなことが生まれてこないといけないでしょう。

もう一つはリダンダンシーといいますか、地震が起きたときにどうなるかとか、あるいはテロが起こったときにどうなるか、そういった様々な議論が必要なのです。さらに新しい首都をつくるときに何兆円必要になるという計算は幾らでもあるんですけれども、実は東京に首都機能を残しておいたままで東京を改造しようと思ったらその何十倍も必要になるわけです。道路の問題一つをとりましても莫大な費用が必要になりますし、また、地下を活用するといっても、そこに生じる排気ガスの処理について住民の理解を得ることができるのでしょうか。こういうことを検討していけば、ほとんど不可能だということになりますから、文化に資するための国づくりとかまちづくりを行うためには首都機能を移転した方がよほどコストも安くて済む。ちょっと現実的な話で卑しくなりましたけれども、私はそう思っております。

東京から首都機能を移転したときに、今度どういう議論が起こってくるかというと、今、国と県と市町村という三層構造が厳然とありますよね。だけれども、本当にこれほど交通事情が発達し、情報通信が発達したら、国、県、市町村という3層の構造なんていうのは本当に要るんですかねという議論をしていかないといけない。それは県が不必要だったら県がなくなることが最もいいことでしょう。あるいは、いろいろな国の機関が地方にいっぱいありますけれども、これがどうなりますかと。市町村が余りにもだめならば、県が一緒にかわってあげましょうと、規模はどうでしょうとこういう議論が起こってきます。これまではこういった国を支える基本的なことが論じられずに、キャッチアップを目標にして明日の経済のことのみをやってきた、それが積もり積もってこの国から大構想力がなくなったり、戦略性がなくなったのです。したがって、もう1回、政治の持つ力、あるいは国民の意識の結集、国民の情熱、これらによって戦後の廃墟から立ち上がったように、今こそ国のあり方を議論することが必要だと、形から変えることもとても重要だと、こう思って一生懸命今頑張っているんです。このことをご理解いただけたらありがたいと思います。

齋藤 氏

それでは反対の立場から猪口さん、お願いします。

猪口 氏

やるべきことはやるんだ、決心したことはやはり決行しなければいけない、そうおっしゃるんですけれども、私は何か計画からおりる勇気というものには本当に重要なものがあると思うんです。本当の勇気というのは、あることをある時代の中で、ある文脈の中で最善と思って決心したけれども、時代の状況が変わった、自分の立場も例えば財政赤字の問題であるとか、バブル経済はもうないとか、そういう状況も変わったという認識がまず冷静にでき、そしてあの状況の中で決断したことではあったけれども、今の状況にはそぐわなくなったということを認める、これほど大変な決断はない、これほど勇気の要ることはないというぐらいの重いものがあると思います。

そして、その人はヒーローにはなり得ない、その人はアンチヒーローだと思います。そして、今の時代に本当に必要なのはそういうアンチヒーローのカードを引く勇気のある人なんだと思います。決めたことなんだからやりましょう、もうこれは決定したことなんだから断固として決行しましょう、かつて戦争がそうだったという感じもします。まずいのではないかと思った人がたくさんいたときに、それをとめる勇気がある人はどこにいたのでしょうか。その声をあげるアンチヒーローのカードを引いてもいいと思うだけの勇気のある人、そういう人は、今の日本にはきっといるというふうに思います。

やめることが一番いいことかどうか、それはじっくり考える必要があるけれども、決めたんだからやろう、ロマンがあるんだからやろうと、そんなふうにこのグローバリゼーションの中で考えていくと、ちょっと日本全体が誤っていく危険性があるので、今一つ計画から下りるという勇気もある意味でたたえなければならないんだという観点を皆さんの中に持ってほしいと思います。

ただ、私は最初に申し上げたように、ある状況の中で国が考え、候補地を募り、その計画に応えてくれた人々は、やはりまたそれも勇気があったと思いますね。北川知事なんかそうだと思います。立派な方々だと思います。だから、やはりそういうことは歴史に留めるべきだと思いますね。記録にきちんと留めるべきだと思うんですよ。だから、東京は首都ですけれども、第2首都、第3首都、第4首都があって全然構わないので、あるいはそういう計画をつくってもいいかと思うんですね。日本には政令指定都市という考え方があるけれども、それにかわる重点化をして、候補地の人々が発揮した分権への決意、意欲、そして知恵ですね、ここに何か報いる方法というのを国は考える責務があるというふうに思います。

ですから、そこで比較考量した結果やはり東京ではないかということに落ち着いた場合に、これで終わりということには多分ならないだろうと思います。この立候補された地域、あるいはさらにほかに地域を考えることができるかもしれないけれども、日本がどの地域も等しくそれぞれの内発的な理由と力によって発展していくということの工夫にこの国は報いなければならないんだということですね。

最後に、知識の面で堀さんがおっしゃったけれども、その知識の付加価値を求めるということであれば、首都移転をする必要は全くむしろないのであって、首都移転したからそこから新しい情報が出てくるとか知識が出てくるとかということではなくて、むしろこのデジタル化の時代にあって、どういうふうに工夫して自分たち独自の知識を日本の様々なところから発信できるかということを考えてもらえばいいわけで、ブロードバンドの導入等によって、物理的にどこに位置しているから情報がたくさん入る、あるいは知識を発信できるということではない社会をむしろつくることが非常に重要です。

そして最後にやはり私が執着したいのは理念的な必然性があるかということですね。ここの理論的な必然性があるというときにのみ人々は本当に燃え上がることができるのであって、いまひとつこの議論について国民的な燃え上がりがないということは、日本として理論的に首都としての東京を放棄する必然性がないからだと。ではどういう国に必然性があったのかということを深く歴史を理解した上で考えていただきたいということで、やはり東京の国際競争力を強化しながら、知識の発信としては全国から様々なものが、今後デジタル化を遂げる中で実現していくということを期待し、もう少しそういう意識を高めていくというプロセスとしてこの首都移転の議論が成熟して効果を持つことがよかったのかなと思いますが、なかなか議論がそういう方にいかず、どこの町になるんだろうというところだけで終わりますと、終わり方が実り多くなくなるのではないかというのが心配されるわけです。

奥谷 氏

私やはり思いますが、基本的に省庁の機構の縮小といいますか、それとあと中央と地方の問題とか、構造改革を抜本的に進めていくというのが基本にあって、それからどうするのかというのが、この経済の低迷の中でほかにやることないのかと、もっとやるべきことがほかにあるだろうというのが一般国民の本音だと思うんですね。あえてここで首都移転で十何兆円を注ぎ込んでどうするかというと、もちろんロマンはあるかもしれないけれども、もっと身近なこと、これは至近なことで、国家100年のことを考えていないということを言われるかもしれませんけれども、やはり今一番緊急課題でやらなければならないというのは経済の問題というのが一番大きい問題であって、そこを何か今どうなるかわからないような状況の中で、ロマンだロマンだといって、あっちこっち、栃木・福島地域、岐阜・愛知地域、あと三重・畿央地域も含めていろいろなところに持っていくという話というのはちょっと違うのではないのかなと。

それと猪口さんがおっしゃったみたいに、1回決めたから国会の不作為というけれども、行政において政策の見直しが始まっているわけですから、やはりもう一度考え直して、例えばもうやめたと、国会移転やろうと思ったけれどもやはりやめたと、お金もないし、時期も尚早だし、もう1回考え直そうという結論に立ってもいいのではないかと。何がなんでも決めたからこの5月に場所を決めてやるんだみたいな、そういったあせりは必要ないのではないか。むしろ国家100年の計であればなおさらそういうあせりは必要はないと思います。

齋藤 氏

そこでちょっと奥谷さんに質問したいのですが、今、東京にいろいろな機能が集中していますね。それについては制度の改革で分散すればいいと、そういうことなのでしょうか。

奥谷 氏

もちろんそうです。ですから、行政的な部分で、中央集権の部分がかなり弊害になっていると、規制緩和を含めて。これがもっともっとなくなっていけば、あえて中央官庁が力を持つ必要はないわけで、そうしますと自然に縮小してきますよね。また、省庁の再編ももっともっと要らない省庁も消えていくでしょうし、外務省も要らなくなるでしょうし、労働省も要らなくなるでしょうし、そうした要らない省庁もどんどん出てくるわけで、そうするともっと小さくなったときにあえて移す必要性というのは、もう今の霞が関の中で十分、まだ空き部屋ができるぐらいのスペースが出てくると思うんですよ。まずそれを論議してからの話であって、そこがなくてただ移転してロマンが出て、情熱が出て、国家が変わるなんていうのは、短絡過ぎるというのが私の考えです。

堀 氏

北川さんと私にはほとんどロジックがないみたいだね。情熱しかないみたいだよ、二人は。

奥谷 氏

そのとおり。

北川 氏

退く勇気とか、アンチヒーロー、とても重要なんですが、これは国会決議をして、法律を決めて、そして2年先に結論を得ると12年5月に決めたところなんですよ。まもなく14年の5月になりますが、では大議論がありましたかねということを僕は申し上げたいわけですよ。だから、国会が決議し、法律もつくって、もし国会が何もしなかったら何なのというご批判になるでしょうと。

奥谷 氏

それは国会議員たちを非難するべきですよ、国民が。

北川 氏

だから、されますよと心配もしているわけですよ。

奥谷 氏

だから、知事もどんどん非難するべきですよ、それは。

北川 氏

言っているんですよ。言っているんです。それをあなたが批判している。

私が言っているのは大いに議論をしてもらいたいということなんですよ。そして国のありかたをどうすべきかという結論を出すための議論をすべきなのに、何も議論をしないままに、例えばあのときはバブルのときだったから首都機能移転をしようということになったんだというから単なる公共事業と扱われてしまって今は経済情勢が悪いから見直そうとなるわけですね。状況が変わったという意見ですけれども、私はますます状況が悪くなっていると感じています。失業率の悪化だとか産業の空洞化の問題、中国の台頭によってどうなるかなどということを踏まえて、現在の東京一極集中、集権官治のままでいいのかどうかということが、今、ほとんど議論されていないということを考えたら、状況はますます深刻になってきていると痛切に感じます。抜本的にこの国を変えていかなければ公的負債が700兆円になんなんとするこの現状をだれが解決するんですか。本当にこの国のかたちというものを、首都機能をどうするかという議論さえないがしろにしておいて、そして経済の状況が変わりましたというので国民的議論も何も行わずに国会がこの議論を終息させるということだけはいかがなものかなということを私は本当に申し上げているわけです。東京と比較考量する前に国のかたち、あり方についての大論争が起こってきてこそ、この国を覆っている閉塞感がとれるのではないかと考えています。何かちまちましたことで利害調整やることだけが政治の目的、行政の目的ではありません。それこそパラダイムがこのまま変わらずにずっと続いたときの弊害なのです。そんなことを思って、すばらしい大議論が起こることを期待しているんですけれども。

齋藤 氏

今みたいなご議論が続けばもう少し国民的な関心も高まるのかなとは思うのですが。

奥谷さん、いわゆる小さな政府実現のために制度改革、行財政改革を進めればいいのではないかという話なんですが、ここのところの世論調査でも、また支持政党なしという方が非常に増えてきていまして、本当に政治による政治主導による改革ができるのであろうかということで、国民が結構懐疑的になっているんですが、その辺はどうなんでしょうか。

奥谷 氏

これはやはり何ていいますか、小泉さんが出現したときにある部分、組織に属さないで彼が無派閥で一人で立って、そこで改革しようといったところに国民のすごい期待が集まったと思うんですね。これで変えてくれるかもしれないという。一つの公選制みたいな形で出てきたわけですから。ですけれども、下らないというか、余りよくないパートナーがいて、それで足を引っ張られた部分ありますけれども、でもまだ50%支持があるわけですから、これから50%のこの支持に対して小泉首相が本当に正念場といいますか、構造改革を徹底的にやっていくというものをどんどん形に示していけば、私はやはり変わっていくと思うんですね。現実にやはり変わっていっています、少しずつでも、法律も変わってきていますし。だから、そこはやはり今国民の人たちが本当に構造改革を推し進めるんだという、ここでもっとバックアップを国民がやらないと、ここで後ろに下がってしまったら、また守旧派が出てきて同じことになってしまう。北川さんが一生懸命やっている地方分権なんていうことがまたあり得なくなってしまうような、そういう後ろ戻りになってしまうということで、これはやはり国民一人一人が本当に日本を変えるのかという、自分たちの責任になってくると思うんですね。

齋藤 氏

パネリストの皆さんかからいろいろな意見をいただきました。22世紀に向けてどんな国づくりが必要なのか、首都機能移転は是なのか非なのか、限られた時間ではありますが、論点は明確になったのではないのかと。議論がかみ合ったかどうかはちょっとわかりませんけれども、論点は明確になったのではないかと思います。

最後に、首都機能移転の論議で今何が必要なのか、また何が必要とされているのか、ポイントはこれだというご提言をパネリストの皆さんからいただきたいと思います。お手元の色紙にキーワードをお書きいただき、それをもとにご提言いただければと思います。

それでは上智大学法学部教授の猪口邦子さんからお願いいたします。

猪口 氏

恐れいります。ちょっと見えにくいかもしれませんが、決定を取り下げる勇気、そしてそういう勇気のある方々の地域は増都。第2、第3、第4首都として認識してよろしいのではないかと。そういうところに日本の未来はあるんだろうと。そういう勇気のある方々のところに日本の未来はあるだろうと思いますのでお願いします。

齋藤 氏

ありがとうございました。では経営コンサルタントの堀紘一さん、お願いします。

堀 氏

僕はこれは首都機能移転だけではないですけれども、未来はつくるものだと、この意識が今の日本に余りに少ないのではないかなと思うんですね。未来というのは勝手にコウノトリが運んできてくれるわけでもなければ、アメリカが持ってきてくれるものでもなくて、我々自身でつくらなくてはいけないんですね。そこだと思うんです。だから首都機能移転だけではないです。いろいろなことにチャレンジして、自分たちより後の世代の人に自分たちの世代よりはいいものを残してあげたいと。そのためには、もちろん自然の保護みたいに保護する面もありますけれども、つくらなくてはいけないこともあるわけですね。そのつくるというところのエネルギーが今の日本は悲しいほど弱っていますね。ぜひもう1回、力を出したいと思います。

齋藤 氏

ありがとうございました。続いて、人材総合プロデュース会社社長の奥谷禮子さん、お願いします。

奥谷 氏

まず今は構造改革が先で、その成果をもって国民の合意形成というものを図って、首都機能移転が推し進められるべきであるかないかというのは、これだけのことを行うにはやはり信頼される政府がなければ行われないわけで、合意形成の機運が高まっていかなければ、あえてこで作為的に国威発揚を行っても首都移転というのは失敗に終わるのではないのかなという。ですから、やはり構造改革と国民の合意形成といいますか、それをやはりさっき北川さんがおっしゃったみたいに大議論が起こるような、そういった場をどうつくっていくかというのが一番大きな問題だと思います。

齋藤 氏

ありがとうございました。それでは北川さん、お願いします。

北川 氏

この国をどうつくっていくかという大構想力が今求められていると思いますし、また、パラダイムシフトをおこさない限り私は21世紀の日本は非常に暗いと思うんです。したがって、未来は今、堀さんがおっしゃったようにつくられるものではなしに絶対つくっていくんだという強い決意がないとなかなかできないと思います。パラダイムシフト、その象徴として首都機能移転の大議論が起こってこないと、このまますっとしぼんでいったら本当に政治不信はますます深刻なものになるのではないかと、そんなことを思います。

齋藤 氏

ありがとうございました。

もう一度パネリストの皆さん、ちょっと前に出していただきたいのですが、上智大学法学部教授の猪口邦子さんが決定を取り下げる勇気、増都と。

猪口 氏

決定を取り下げるアンチヒーローになる勇気と書きました。

北川 氏

決定を進めるヒーロー。

猪口 氏

アンチヒーロー、だからそれは真のヒーローであるかもしれない。

齋藤 氏

堀紘一さんが、未来はつくるもの。奥谷禮子さんが、構造改革と国民の合意形成。そういったことについての大議論が起こる場をどうつくっていくかが大切であると。北川さんがその構想力、パラダイム、枠組みと言えばいいんでしょうか。

北川 氏

はい。それをシフトさせる。

齋藤 氏

枠組みを変えるということだそうです。どうもありがとうございます。

首都機能移転について、昭和30年代から40年にわたって延々と議論が続いてきました。移転の必要があるかどうか。その決断の時期が実は迫ってきています。パネリストの皆さんからは22世紀に向けてどんな国づくりが求められているのか、その実現のために首都機能の移転は有効な手だてなのかどうか、様々な視点からご議論いただきました。首都機能移転についてどんな決断が下されるにせよ、今、日本全体を覆っている閉塞感を打破し、夢と希望にあふれた新しい日本に再生することは、今を生きる私たち一人一人に課せられた責任でもあります。

その意味で、首都機能移転の論議は決して他人事ではないように私は思います。重要な段階を迎えた首都機能移転について、自分たちの問題として取り組むことが今まさに必要な気がいたします。

そして、首都機能移転の論議が将来の国の形を決める一つの糸口になればと思います。長時間ご清聴ありがとうございました。

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