平成13年3月9日
(1)IT化の進展が、現実空間の問題点(都市問題等)をより深刻化させたり、face to faceの空間の重要性を増大させる面もある。
(2)ITによりグローバル化した社会においては、情報を発信する側の個人や地域・国が認められるためには、むしろアイデンティティを確立させる必要がある。
(3)IT社会及び政治行政システムの長期的な変化に対して、主体的に対応するためには、目指すべき姿を実現するための具体的な戦略を提示する必要がある。
すなわち、期待されるIT国土の形成を促進するものとして、移転先となる首都機能都市とともに、移転後の東京圏の在り方を構想することを提案する。
東京圏においては、首都機能移転の跡地の活用等を通じて促進される都市のリノベーションの一環として、世界のIT関連の人材や最先端技術の技術者・研究者等にとっての高度な研究・開発・事業活動を展開できる魅力的な条件を整え、グローバルな求心力をより一層高めるための戦略を構想することを提案する。
また、首都機能都市においては、環境問題に果敢に取り組む等の先導的なワークスタイル・ライフスタイルをITを活用しながら実現し、グローバル時代における我が国の役割を充分に果たし得る国際政治活動の中心地を形成するとともに、我が国の幅広い分野における優れた能力を総合化し、さらに、水平なネットワーク構造の実現に資する次世代のための戦略を構想することを提案する。
具体的には、首都機能都市においては、新しいタイプの国政の創造、環境問題と向き合う先導的な都市や国際政治都市、文化創造の実験都市の在り方等、次世代のための事業に相応しい目標を掲げ、我が国のあらゆる分野における能力等を総合化して取り入れることを期待するが、特に、ITに関連して首都機能都市において積極的に取り入れるべきと考える施策は以下の通りである。
なお、首都機能都市の在り方が、全国各地のワークスタイル・ライフスタイル、そして地域づくりにおける既存の問題を改めて見つめ直すものでなくてはならない。
(1)徹底した情報公開(well-informed public)を前提とした民主主義の新しいシステムの実現
(2)国民参加型の首都機能都市の形成・維持システムの構築
(3)知的基盤型首都機能(knowledge-based government)の実現
(4)危機管理の観点からの情報中枢機能の分散(情報のバックアップ機能の強化)
(5)情報通信のネットワークインフラの強靱性、耐久性、安全性の確保
(6)コンテンツ発信力を支えるIT通信基盤(プラットホーム)の構築
(7)全国の情報の受発信の機会均等を実現するユニバーサルなネットワークの構築
(1)議論に際して時間軸という要素を十分に意識すること
首都機能移転は実現までに長い時間を要する一方、IT化は日進月歩の様相を呈しており、議論に際しては現下の趨勢を論じているのか、将来のあるべき姿を論じているのか、よく整理して臨む必要がある。特に、首都機能移転の意義・効果は長期的に我が国に定着する将来のIT社会の姿とともに論じるべきである。
(2)高度情報化時代における現実空間の意味をさらに論じること
IT化を前提とした首都機能都市の姿を描く場合においても、情報空間に偏重した姿ではなく、生身の感動を与える都市像や、アイデンティティを国民に印象づけるような仕掛としての首都機能都市を構想する必要がある。
(3)議論を通じて首都機能移転の基本思想をより明確にすること
首都機能移転は、国民一人ひとりに関わる問題であるとともに、我が国の幅広い能力を総合化し、内外に示す絶好の機会として捉えうるものである。首都機能移転は一過性の経済対策や単なる公共事業として捉えるべきではなく、国民各層が知恵を出し合い、キャッチアップ指向からの離脱に向けてパラダイムシフトを果たすための創造的なプロジェクトとして論じられるべきである。また、大都市重視か、地方重視かといった二者択一的な考え方ではなく、首都機能移転が国土全体の空間の質的向上の契機となるように論じられるべきである。