「21世紀の国土のグランドデザイン」 第2部 第3章 第1節


 (2) 良質な住宅・宅地ストックの形成
  (良質な住宅ストックの形成)

 ゆとりある生活を実現するため、住宅マスタープランや大都市地域における住宅及び住宅地の供給に関する基本方針等に基づき、居住水準の向上やバリアフリー化、省エネルギー化、高耐久化等により質の高い住宅ストックを形成する。特に、持家に比して著しく質の劣る借家の居住状況を改善するよう、良質な賃貸住宅の供給を重点的に促進する。このため、関連公共施設の整備を促進しながら、融資や税制上の優遇措置の活用による個人の良質な持家取得の促進や特定優良賃貸住宅制度等の活用による良質な賃貸住宅の供給の促進を図るとともに、定期借地権の活用により所有面よりも利用面を重視した住宅建設を促進するなど、多様な住宅供給を推進する。また、建築基準の性能規定化等の建築規制の合理化や輸入住宅、海外の建築資材・部品の導入の円滑化等により、住宅建設コストの低減を図る。さらに、長期耐用が可能で住戸等の更新が容易な住宅の技術開発を推進する。

  (ライフステージに応じた住替えの促進)

 ライフステージに応じた多様な居住ニーズに対応できるよう、質の高い住宅ストックを活用しつつ、円滑な住替えを促進する。このため、住宅の性能評価・表示システムの確立や物件情報提供システムの普及を図るとともに、消費者相談窓口の設置の促進等により、住宅流通基盤の整備を図る。また、既存の住宅ストックの有効活用を図るため、住宅の増改築・リフォームを促進する。さらに、今後急増することが予想される老朽マンションについて、防災性の向上も勘案しながら、大規模修繕、建て替えを円滑に実施できるシステムをハード、ソフト両面において検討する。

  (新たなニーズへの対応)

 高齢化に対応するため、高齢者等に配慮した仕様の標準的な設計指針の普及等により、住宅のバリアフリー化を促進するとともに、高齢者等の身体機能の状況に応じて住宅改造を行えるよう、リフォーム技術の開発や人材育成等を図る。また、高齢者福祉施設の利用を容易にする観点から、公共住宅団地において福祉施設を併設するなど福祉施策との連携を積極的に推進する。

 環境との調和を図るため、省エネルギー基準の普及、啓発により住宅の省エネルギー化を推進するとともに、環境への負荷を低減した環境共生住宅の建設促進を図る。また、地方定住を促進し、地域の活性化を図るため、住宅マスタープラン等に基づき、地域の特性や独自の発想を生かしながら、個性豊かで良好な景観を形成する住宅や住環境の整備を促進する。

 マルチハビテーション(複数地域居住)、テレワーク(情報通信を活用した遠隔勤務)等、住まい方に対する新たなニーズに対応するため、郊外型住宅等の整備、住宅の情報化等を推進する。

  (良質な宅地の供給)

 国民の居住ニーズの多様化に対応して、良質な宅地を適正な価格で計画的に供給し、ゆとりある豊かな住生活の実現を図るため、新たな宅地需要に対応して、交通等の都市・生活基盤の整備を進めながら、新市街地の計画的開発、市街化区域内農地等の宅地化を積極的に推進する。

 大都市圏においては、大都市地域における住宅及び住宅地の供給の促進に関する基本方針に基づき、広域的な観点から宅地の計画的な供給を推進する。このため、公民連携を図りつつ、鉄道整備と一体となった宅地開発の推進、緑・景観や高齢者に配慮した優良な宅地開発の促進等を図るとともに、市街化区域内農地の計画的な宅地化や定期借地権の活用を推進する。地方圏においては、定住基盤の整備を図るため、地域の個性、多様性を生かしながら地域の活性化に資する宅地開発を促進する。

 また、道路等の関連公共施設の整備を促進するとともに、宅地開発等指導要綱の行過ぎの是正を図る。

 (3) 生活環境施設の整備
  (都市公園等)

 良好な都市環境の形成、防災性の向上、住民の健康、福祉の増進等の都市公園の多様な機能を効果的に発揮させるよう、住区基幹公園、都市基幹公園等の都市公園を、都市公園以外の緑地やオープンスペースとのネットワークの形成に配慮しながら体系的に整備する。特に、都市の防災性の向上の観点から緊急に整備を要する広域防災拠点や広域避難地等となる防災公園を重点的に整備する。

 また、都市において良好な自然的環境を保全、創出するため、緑地保全地区、風致地区等の指定を積極的に行うとともに、公共公益施設の敷地、道路等の緑化、建築物の屋上、高架道路の壁面等これまでは緑化が困難であった空間の緑化、河川等における良好な水辺空間の整備や多様な生物が生息可能なビオトープの整備を推進する。民有地の緑化を積極的に推進するため、緑地協定、市民緑地制度の活用等により、住民参加による緑化活動を進める。

 さらに、広域的なレクリエーション活動や地域間交流の拠点となる国営公園、大規模公園の整備を推進する。

  (下水道)

 快適な都市・生活環境の確保を図るとともに、公共用水域の水質の保全を図るため、下水道の整備を計画的に推進する。特に、下水道の整備が遅れている中小都市に重点を置いて事業を実施するとともに、内湾等の閉鎖性水域や水道水源となっている河川、湖沼等の重要水域において、河川浄化対策等と連携して高度処理を推進する。

 また、都市において大雨による浸水防除を図るため、河川改修等との連携を図りながら、雨水の速やかな排除や貯留・浸透による流出抑制等、下水道による雨水対策を推進する。

 さらに、下水道資源のリサイクルの促進や良好な都市環境の形成を図るため、下水処理水の有効利用、下水汚泥の肥料や建設資材としての再生利用等を進めるとともに、下水道施設の有効利用を図るため、下水道管渠を光ファイバ敷設空間として利用に供する。

  (都市内道路)

 都市交通需要への対応、良好な市街地の形成、避難路、緊急輸送道路、延焼遮断帯等としての防災機能の向上、良好な歩行空間の創出等を図るため、幹線道路、区画道路、歩道、自転車歩行者道等の体系的な整備を推進する。

 また、都市内における交通渋滞を緩和するため、バイパス、環状道路や交通結節点の整備、連続立体交差事業等の推進によりボトルネック対策を強化するとともに、道路空間を活用した新交通システム、都市モノレール等の公共交通機関の整備、駐車場の整備、駐車場案内・誘導システムの整備やITS(高度道路交通システム)の推進を図る。

 さらに、都市内における交通の安全を確保するため、道路網の体系的整備と併せ、緊急に安全を確保する必要がある道路について、信号機の設置、歩道の整備、交差点改良等の交通安全施設等の整備を図るなど総合的な交通安全施策を推進する。


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