「21世紀の国土のグランドデザイン」 第3部 11


11 豪雪・離島・半島地域



 豪雪・離島・半島地域は、国土や自然環境の保全を進める上で重要な地域であるとともに、多様で特色ある自然条件、歴史的資源や文化的資源等を生かし、国民の価値観の多様化等に対応した21世紀の新たなライフスタイルを実現する貴重な場でもある。このため、安全で美しい国土の形成等の諸課題に的確に対応しつつ、居住の選択可能性の拡大、地域産業の振興等の施策を展開し、あわせて、地域内及び他地域との交流と連携を積極的に推進することにより、望ましい国土構造の実現に資することが重要である。


 (1) 豪雪地帯

 国土の約半分を占める豪雪地帯においては、雪に強い地域づくりのための克雪対策を充実し、雪や文化を活用した産業振興と地域活性化等を図るとともに、雪国の特性を生かして海外をも含めた交流と連携を促進することが重要である。

 このため、冬期の安全で快適な移動性の確保に向け、高規格幹線道路、高速鉄道、空港等の高速交通から歩行者空間に至る交通基盤の適時適切な除排雪の充実、防雪施設や消融雪施設の整備及びその維持管理対策、スパイクタイヤの規制にともなう凍結路面対策、タイヤや車両の冬期走行性能の向上等を推進し、雪に強い交通基盤の整備を図る。また、気象、交通、イベント等の情報提供、生活の利便性の向上、産業の振興等の観点から、高度な情報通信基盤の整備を図る。さらに、雪国の豊かな自然環境や美しい景観の保全を行う一方で、雪とともに生きる新たな雪国文化を形成するため、生活環境の整備に加え、雪と親しみ、雪を楽しむ親雪活動の普及を図る。あわせて、雪国の豊かな自然や伝統的な生活様式の学習及び体験を深めるとともに、これらを生かした地域間交流や国際交流を推進する。

 また、地域が行う除排雪等への支援、高齢者等に配慮した克雪住宅の普及、冬期のスポーツ施設や健康増進施設、公園の整備等を図る。農山漁村においては、冬期滞在施設の整備を始め、高齢化の進んだ集落への支援対策等を推進する。都市においては、面的な消融雪施設の整備や電線類の地中化、克雪型の住宅団地の整備、除排雪機能の高い河川や下水道の整備、公共空間を利用した雪捨て場の確保等により、雪に強い都市づくりを進める。また、雪崩、地吹雪、融雪期の土砂災害、積雪期の大規模地震災害等の災害対策を推進する。一方、雪国の特性に対応した農林水産業等の振興を図るとともに、雪室、氷室による農産物等の貯蔵技術を活用した産業育成、地域の自然や文化を生かした個性的な雪国リゾートの創設、雪と関連した商品開発等を推進する。さらに、降積雪等の観測の強化、雪処理の機械化、雪の冷熱エネルギーの利用等の克雪技術及び利雪技術の研究開発を促進する。


 (2) 離島地域

 離島地域は、排他的経済水域を含む国土の保全・管理上の重要な拠点であり、その役割及び多様な離島ごとの諸条件を十分に勘案しつつ、安全で安心できる生活環境の整備や地域の活性化に向けた各種の基盤整備を推進するとともに、離島地域の持つ多様で特色ある資源や文化を活用した産業振興を図ることが重要である。

 このような観点から、交流圏の拡大に向け、港湾、空港、道路や架橋等交通施設の整備、離島航路の高速化や航空機のジェット化、利便性の確保、離島と離島・本土・海外とを結ぶ交通網の構築等を図る。あわせて、生活等の広範な情報の受発信に供する高度な情報通信基盤の整備を進める。また、漁港、漁場、農地、農道、林道等の基盤整備、加工・流通体制の整備、関連企業との連携等により、特色ある離島産品の生産を推進する。特に、地域の基幹産業である水産業の一層の振興を図る。さらに、海洋性気候等恵まれた自然環境を活用した保養・療養活動(アイランドテラピー)やブルー・ツーリズム等魅力ある離島観光の振興を図る。

 生活環境については、ダム等の整備、他地域からの導水、海水淡水化等の渇水対策の推進、汚水処理施設、廃棄物処理施設、公園、救急医療を含めた医療・福祉体制等の整備を図る。また、衛星通信等による教育・医療システムの導入等を推進し、教育・医療の機会の均等化を目指す。さらに、治山、治水、海岸保全等の国土保全施設の整備や、災害時の連絡体制を含めた総合的な防災対策を推進する。このほか、自然環境の保全、集落景観の保全、伝統文化の継承と発展等を図る。

 特に、外海離島である奄美群島については、沖縄との連携強化によりアジア・太平洋地域における新たな位置付けを求め、小笠原諸島については、東京圏との連携の強化に配慮しつつ、亜熱帯気候等による特有の自然環境や我が国南端に位置する地理的特性を十分に生かした振興開発を推進する。


 (3) 半島地域

 半島地域においては、周辺地域との交流と連携を図るとともに、それぞれの地域の主体的かつ一体的な取組を基本とし、国土保全・管理上の重要性にかんがみ、その潜在的なポテンシャルを生かした地域の活力の維持と増進を図ることが重要である。

 具体的には、域内相互及び域内と周辺地域との連携強化のため、地理的な特殊性に配慮し、半島循環道路を始めとして、道路、港湾等の幹線交通基盤の整備、これと一体となった地域の交通基盤及び高度な情報通信基盤の整備を図る。また、治山、治水、海岸保全のための国土保全施設の整備、ダムの整備等による水資源開発を推進する。さらに、汚水処理施設、廃棄物処理施設、公園等の地域のニーズに応じた生活環境の整備や、高齢者、児童等の福祉に適切に対処することにより、豊かな暮らしを創出する。

 一方、農林水産物の生産基盤の整備と加工・流通体制の整備、地場産業の育成、豊かな自然環境を立地要因とする企業、研究開発機関等の誘致等により、新たな産業振興を展開するとともに、自然環境や伝統文化等の観光資源を保全、活用しつつ、隣接する半島、離島を含む沿岸域等と連携することにより、魅力ある広域的な観光ルートの形成を図る。特に、半島文化を生かした個性ある地域づくりを支援し、文化を通じた国内や海外との交流と連携を通じて、新しい半島文化の創造を図る。


目次へ
「21世紀の国土のグランドデザイン」トップページへ