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 海洋汚染を防止するために


これまで、「有害液体物質」は、船舶によって輸送されるものを対象としていましたが、今回の改正によって、海洋施設等において管理されるものも有害液体物質として扱われることとなります。

※ 海洋施設その他の海洋に物が流出するおそれのある場所(陸地を含む。)にある施設のことを「海洋施設等」と定義しています。

質問

海洋施設等って、山奥にあるような施設も対象になるのですか?

回答 臨海部にある施設だけでなく、河川に隣接する施設など、有害液体物質の流出事故が発生した場合に、海洋にその物質が流入する可能性のある場所にある施設も対象となります。これは、これまでの「海洋施設その他の施設」の考え方と同じです。

これまで、未査定液体物質については、輸送の届出及び環境大臣の査定を受けることのみが規定されており、輸送については特に禁止されていませんでしたが、今回の改正によって、環境大臣の査定を受けた後でなければ輸送してはならないこととなります。(平成19年1月1日施行)

これまで、海洋施設からの油及び廃棄物の排出は禁止されていましたが、今回の改正によって、有害液体物質の排出も禁止されることとなります。ただし、次の場合の有害液体物質の排出は除外されます。

○海洋施設の安全を確保し、又は人命を救助するための有害液体物質の排出
○海洋施設の損傷その他やむを得ない原因により有害液体物質が排出された場合において、引き続く有害液体物質の排出を防止するための可能な一切の措置をとったときの当該有害液体物質の排出

海洋施設であって有害液体物質の輸送の用に供される係留施設の管理者は、当該施設内に有害液体物質記録簿を備え付け、記載しなければならないこととなります。また、有害液体物質記録簿は、最後に記載した日から3年間施設の管理者の事務所に保存しなければなりません。

質問

構造上の問題により、有害液体物質記録簿を備え付けることができない海洋施設はどうすればよいですか?

回答 有害液体物質記録簿を海洋施設内に備え付けることが困難な場合は、当該施設の管理者の事務所に備え付けることができることになっています。

これまで、船舶から大量の油や有害液体物質が排出された場合又は海洋施設等から大量の油が排出された場合に最寄りの海上保安機関に通報しなければならないこととされていましたが、今回の改正によって、海洋施設等から大量の有害液体物質が排出された場合にも通報しなければならないこととなります(排出のおそれがある場合も同様)。

※大量の油:100L以上
  大量の有害液体物質  X類物質及び未査定液体物質:1L以上  Y類物質:100L以上  Z類物質:1,000L以上

これまで、重油などの蒸発しにくい油(特定油)が排出された場合に限り、船舶所有者等は防除措置を講じなければならないこととされていましたが、今回の改正によって、大量の有害液体物質又は特定油以外の油の排出があった場合においても、以下の義務が課されることとなります。
○船長又は海洋施設等の管理者は、直ちに、防除のための応急措置を講じなければならない。(応急措置義務)
○船舶所有者又は海洋施設等の設置者は、直ちに、防除のため必要な措置を講じなければならない。(防除措置義務)
○海上保安庁長官は、船舶所有者又は海洋施設等の設置者が講ずべき措置を講じてないと認めるときは、当該講ずべき措置を講ずべきことを命ずることができる。(防除措置命令(是正命令))
○排出された有害液体物質等の荷送人、荷受人及び係留施設の管理者は、船長、船舶所有者等が講ずべき措置の実施について援助し、又はこれらの者と協力して防除のため必要な措置を講ずるよう努めなければならない。(協力義務)

有害液体物質は種類もたくさんあり、それを防除するのは大変なのではないのですか?

回答 物質に応じた防除手法を執る必要もあり、結構大変です。しかし、油の場合と同様、専門の防除機関に委託して防除することも可能ですので、義務の履行は可能であると考えています。

有害液体物質や特定油以外の油が排出された場合に、迅速かつ効果的な防除を行うためには、特定油の場合と同様に、一定の資機材等の準備が不可欠です。このため、今回の改正によって、油(特定油を除く。)又は有害液体物質を輸送する船舶の船舶所有者は、一定の海域を、その船舶に貨物として油又は有害液体物質を積載して航行させるときは※1、その船舶の所在する場所へ速やかに到達することができる場所※2に、防除のために必要な資機材や要員※3を確保しておかなければならないこととなります。(平成20年4月1日施行)

※1 東京湾、伊勢湾及び瀬戸内海を航行する総トン数150トン以上のタンカー及びケミカルタンカーが対象となります。
※2 原則として2時間以内に事故船舶に駆けつけられる事故船舶以外の場所です。
※3 有害液体物質等の特性に応じ、測定装置、放水能力を有する船舶、オイルフェンス、油回収装置等の資機材を確保するとともに、4級海技士以上の海技免許を受有し、かつ、甲種危険物取扱責任者講習及び有害液体汚染防止管理者講習を修了している要員を確保しておく必要があります。

確保しなければならない資機材等はどうやって決めたのですか?

回答 法律が成立して直ぐに学識経験者や関係する事業者団体の方々で構成する委員会を設けて、そこで議論していただきました。その結果が「提言」として取りまとめられ、その内容に沿って、船の大きさや海域、資機材の種類等を決めました。
 
質問

このような資機材等を船舶所有者個人が準備するのは大変ではないですか?

回答 個人で準備すると大変ですので、「提言」の中でも所要の資機材や要員が既に確保されている第三者機関の有効活用が望ましいとされたところです。
※詳しくは、海上保安庁ホームページhttp://www.kaiho.mlit.go.jp/info/kouhou/h18/k20061120/h061120.pdfの「HNS国内体制整備検討委員会について」をご覧ください。

これまで、海上保安庁長官は、廃棄物その他の物の排出により、海洋が汚染された場合に限り、海上保安庁長官が当該汚染を防止するため必要な措置を命ずることができるとされていましたが、今回の改正によって、廃棄物その他の物の排出により海洋が汚染されるおそれがある場合のほか、船舶の沈没又は乗揚げに起因して海洋が汚染され、又は汚染されるおそれがある場合にも当該汚染を防止するため必要な措置を命ずることができることとなります。


質問

命令するかどうかは、どのように判断するのですか?

回答 個別の事案ごとに具体的な被害の状況や海洋環境に与える影響等を検討し、命令を発する必要があるかどうかについて、関係地方公共団体、漁業関係者等の関係者と意見交換をして、慎重に判断することとしています。
 
質問

どのような措置が命令されることになるのですか?

回答 例えば、容器入りの貨物などが排出された場合であれば、拾うという意味での「除去」や船舶が沈没した場合であれば、「撤去」などが想定されます。

これまで、海上保安庁長官は、油又は有害液体物質の排出があった場合に限り、一定の要件に従い防除措置を命ずることができましたが、今回の改正によって、船舶の海難が発生した場合等、排出のおそれがある場合においても、一定の要件に従い当該油等の排出を防止するため必要な措置を命ずることができることとなります。


質問

なぜ、排出のおそれがある場合に命令が必要なのですか?

回答 油や有害液体物質は、排出されると時間の経過とともに広範囲に広がり、その被害範囲も拡大します。したがって、いまだ排出されていない段階においても、被害を局限するため、油や有害液体物質の抜取りや他船への移替えが有効かつ必要な場合があります。

海洋汚染防止法に基づく油等の防除体制

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