海事

2.外国船舶監督官の仕事とは?

外国船舶監督官の仕事は?

1 外国船舶監督官
 PSC*(Port State Control:外国船舶の監督)の仕事は、我が国では外国船舶監督官により行われています。

 PSC開始当初は、船員労務官と船舶検査官が、我が国船舶の検査と兼務してPSCの業務を実施していましたが、1997年度からは、PSCを専門に実施する外国船舶監督官の制度が創設され、現在は、全国の地方運輸局等に配属されています。

 外国船舶監督官は、運航労務監理官(船員労務官)や船舶検査官を経験した検査のベテランですが、国際条約の対象範囲が広がり複雑 化する中、より高度な専門知識が求められており、米国USCG等海外のPSCOとの交流、研修等により新たな条約に関する専門知識等の継続的な修得に努め ています。

参考 PSCに関する最近の主な条約改正
2001年10月 船舶からの有害な防汚方法の管理に関する国際条約(AFS条約)の採択
2002年 2月 STCW条約の1995年改正の完全適用
2002年 7月 国際安全管理規則(ISMコード)の全船適用
2004年 2月 バラスト水管理条約(BWM条約)の採択
2004年 7月 国際海事保安コード(ISPSコード)の発効
2005年 5月 船舶からの大気汚染防止規則(MARPOL条約附属書6))の発効
2006年 2月 2006年の海事労働条約(ILO条約)の採択
注:条約等の名称は略称です。

2 PSCの実施
 数多くの船舶が我が国に入港する中、我が国海洋の安全と環境を守るため、外国船舶監督官は、効率的且つ効果的なPSCを実施する必要があります。
 そのため、外国船舶監督官は、船の古さ(船齢)や過去の検査結果などに基づき、対象船を絞り、危険度の高い船を優先的に検査しています

ここでは、外国船舶監督官によるPSCの流れを見ていきましょう。

1)船の選定
 外国船舶監督官は、入港してくる外国船の情報を港湾管理者や船舶代理店などから入手し、老朽船か、危険物積載船か、過去の検査結果はどうか等を基準にPSCを実施する船を選定します。船が決まると、港にいる船へ向け出発です。
 通常は、船舶検査官を経験している外国船舶監督官1名と運航労務監理官(船員労務官)を経験している外国船舶監督官1名の2名でPSCを実施します。

2)基本検査
○乗船前
船に着くと、乗船前に、先ず、塗装、錆、満載喫水線の状況等の船の外観を観察します。ベテランの外国船舶監督官になると、この時点で、既に、かなり船の状態が予測できます。



○乗船
いよいよ乗船です。外国船舶監督官のID(身分証明書)を提示してアクセスコントロール(乗船者の管理)を受けます。このアクセスコントロールは、米国に おける「9・11同時多発テロ」を受けて、保安(セキュリテイ)対策として新たに条約で定められたもので、安全・環境とともにPSCでは、大事なチェック 項目です。その後、船内の様子を観察しながら、船長室へ向かいます。




○書類審査
船長に、本船に対しPSCを実施する旨伝えます(勿論英語です!)。
 PSCの実施は、事前に船へ連絡しないのが通常ですが、PSCが導入されて、10年以上経っていることもあり、最近は、PSCを承知している船がほとんどです。

 船の積荷・航海状況など聞き取った後、条約で船舶に備えておくことを義務付けられている条約証書、船員免状等の証書類を確認していきます。


 
 必要な書類は揃っているか、有効期間は大丈夫か、適切な資格を持った船員が乗り組んでいるか、救命設備や消防設備などの点検・整備の記録はあるか、船員の訓練の記録はあるか等をチェックします。
 不明な点は、船長や航海士、機関士からヒヤリングします。船によっては、船員が、充分な英語能力をもっていない船もあり、外国船舶監督官も苦労するようです。

○船内調査(船内巡視)
書類審査が終わると、操舵室、機関室、居住区、救命艇など船内をまわり、各種設備・機器類の状態を確認(基本的な検査)します。

  



3)レポート作成
 以上の基本検査の結果、書類の不備や設備の欠陥などが発見されなければ、船長に英語でレポートを手渡して船でのPSCは終了となります。ここまで、3時間以上かかるのが通常です。

  書類の不備や設備の欠陥などが発見された場合、軽微な欠陥であれば、出港まで、あるいは、次の港で補修(是正)するよう指示します。
 一方、重大な欠陥であれば、引き続き詳細な検査を行い、そのまま航行を続けると安全上、問題となる欠陥の場合には、補修命令(技術基準適合命令等)が出され、補修(是正)をし、外国船舶監督官の確認を受けて初めて出港できることになります。

4)データ入力等
 船でのPSCが終了しても、外国船舶監督官の仕事は終わっていません。事務所に帰り、PSCを実施した船舶の情報とPSCの結果を、海上保安庁等関係機関への連絡し、東京MOU*のデータベースに入力します。
 アジア・太平洋地域のPSC実施機関は、常時、このデータベースにアクセスし、PSCが必要な船舶を選定するとともに、不必要なPSCが行われて船舶の運航を妨げることがないようにしています。

このような外国船舶監督官の働きが、船舶の航行の安全、海洋環境保全の力になっているのです。
 

お問い合わせ先

国土交通省海事局総務課外国船舶監督業務調整室
電話 :03-5253-8111(内線43-176)

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